
≪1≫NEDOが、ニューメキシコ州プロジェクトへの事前調査企業31社を決定!
■ 最初に、NEDO(ネド。独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)とは、どのような研究機関なのか簡単に説明いただけますか。
諸住 「NEDO」は、現在、いろいろな意味で話題になっているエネルギー問題やスマートグリッド分野などに関係する独立行政法人で、日本語で「新エネルギー・産業技術総合開発機構」という名称です。NEDOは、英語でNew Energy and Industrial Technology Development Organizationの略称で、所轄官庁は経済産業省です。
独立行政法人として設立したのは2003年10月1日ですが、もともとの前身は特殊法人として1980年10月1日に、新エネルギー総合開発機構という名前でスタートしたというのが経緯でございます。

諸住 哲氏
(NEDO主任研究員)
図1に、NEDOの組織図を示しますが、右側の色をハッチングしているところが、実際に技術開発とか導入促進を扱っている部署です。ここには産業技術本部とエネルギー・環境技術本部という2つの大きな柱があります。
私たちが今、所属しているのは新エネルギー技術開発部でございまして、新エネルギーそのものの技術開発と、それから新エネルギーの系統連系(電力システム)や電力システム周りのいろいろな対策技術の検討をする部署です。
■ これまでの取り組みの具体的な例をあげて、説明していただけますか。
諸住 例えば、通常、電力システムは電気をつくる「発電設備」、電気を送る「送電設備」、電気を各家庭に配る「配電設備」などが連携したシステムなっていますので、系統連系技術とも言われます。NEDOにおきまして、この系統連系技術関係は、2002年ごろから活発な活動をしていまして、例えば有名なプロジェクトですと、群馬県太田市の「PalTown城西の杜」(パルタウンじょうさいのもり)と言う町で、550軒の住宅に太陽光発電を集中的に設置する「集中連携型太陽光発電システム実証研究」(2002年度から2007年度まで)というプロジェクトを実施しています(写真1、図2)。
■ その太陽光発電システムでは、具体的にどのような実験をされたのですか。

諸住 哲氏
(NEDO主任研究員)
諸住 このプロジェクト自体は、太陽光による環境への貢献を測定する目的ではなくて、550軒もの家庭に集中的に太陽光発電が設置された場合の、電力系統上の問題を検証するという目的の実証実験です。その実験では、1エリアに集中的に大量の住宅に太陽光発電を設置した場合の電圧の変動に対する対策や、停電時の保安対策に関する技術開発を行い、今後予想される新しいエネルギー環境がトラブルなく実現できるような対策を行っています。
そのほかに、大規模太陽光発電や風力発電所と蓄電技術を組み合わせたいろいろな実証研究なども行っています。さらに、マイクログリッド(小電力網)と言われている、大規模太陽光とか風力発電所などの分散型の新エネルギーを組み合わせて、その地域の電力事情に応じて需給バランスをとるというようなシステム的な実験も2002年から現在に至るまで進めてきています。
■ かなり先進的な取り組みですね。これらは、国際的に見てどのようなレベルの実用化実験だったんですか。
諸住 そうですね、先ほど写真1でお見せした太田市での実証研究は、多分、世界でも最初の大がかりな実証研究ですので、海外からもかなりたくさんの見学者も来ています。
≪2≫NEDOのニューメキシコ州プロジェクトの総予算は30億円
■ ところで、NEDO予算規模は、2009年度が2,347億となっていますが、2010年におけるスマートグリッド関係の予算は、どの程度なのでしょうか。
諸住 NEDOは独立行政法人の2010年度の全体の予算は昨年度並み程度ですが、新エネルギー技術開発部の事業予算規模というのは200億円前後です。スマートグリッド関係の取り組みで現在はっきりしているのは、米国のニューメキシコ州で行われるプロジェクトです。
このプロジェクトの実証期間は2010年度から2013年度末までの4年間ですが、初年度の2010年度の予算は約18億円、4年間の総予算は約30億円となっています。
ご存じの通り、すでにNEDOは2010年1月28日に、米国ニューメキシコ州政府において
来年度(2010年度)開始するスマートグリッド実証事業のための「事前調査」を行う企業として31社を決め発表しました(表1)。2010年4月の事業化評価において、実際に実証事業を行う企業を絞り込むことになっています。
この共同プロジェクトは、NEDOが米国のニューメキシコ州政府および米連邦政府エネルギー省(DOE:Department of Energy)傘下の国立研究所などと協力して行う、スマートグリッド関係の初のプロジェクトです。
このような動きと同期させてNEDOは、このたび、世界規模で市場が見込まれるスマートグリッドを核としたスマートコミュニティ関連市場に、日本企業が積極的に参画できるよう、また、官民連携によるスマートコミュニティの実現に向けた、共通の課題に取り組むための実務母体として、2010年3月に「スマートコミュニティ・アライアンス」を設立する予定です。
〔http://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/press/AT1/nedopress.2010-02-12.3152072896/〕
(1)2~5MW程度の配電線において、太陽光発電(PV)2MW程度(日本側1MW程度設置)、蓄電池1MW程度を集中的に導入し、配電線の系統構成を切換えることによりPV導入比率を変えることの可能な配電線にて、PV出力の変動吸収を可能とするEMSと情報通信技術を構築・実証する。 (2)スマート配電機器(情報通信機能を持った配電機器等)を導入し、高い信頼性を有する配電系統を構築・実証する。 |
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(株)東芝 | ■サイト取りまとめ ■系統EMS(エネルギー管理システム)、需要・PV発電予測、リアルタイムプライシング(卸売電力市場の時間別価格変動を反映する料金)、通信 |
(株)日立製作所 | ※再委託先:(株)日立産機システム、(株)日立エンジニアリング・アンド・サービス、(株)日立制御情報ソリューションズ、新神戸電機(株) ■系統機器設置取りまとめ ■鉛蓄電池、PCS(Power Conditioning Subsystem、パワー・コンディショナー。太陽光モジュールからの出力を目的の電力に変換する装置)、その他変電機器 |
京セラ(株) | ■PV設置取りまとめ ■大規模PVシステム(PV:Photo Voltaic、太陽光発電システム) |
日本ガイシ(株) | ■NAS電池〔ナトリウム・硫黄電池。負極にナトリウム(Na)、正極に硫黄(S)を使用する2次電池〕 |
※伊藤忠テクノソリューションズ(株) | ■PV発電予測 |
※(株)NTTファシリティーズ | ■追尾型PV |
※JFEエンジニアリング(株) | ■需要・PV発電予測 |
※日本電気(株) | ■PLC通信(電力線通信:系統側~住宅) |
※富士通(株) | ■スマートメータのセキュリティー対策 |
※三菱電機(株) | ■防汚コーティングPVパネル ■薄膜PV対応PCS |
なお、※の企業については、同社を実証事業の実施者として採択するか否かを含めて判断。
・PV(3kW程度)と蓄電池(20kWh程度)、蓄熱機器、IT家電といった需要家機器、スマートメータ技術とリアルタイムプライシングを組み合わせたEMS、宅内・宅外通信システムを有するスマートグリッドハウスを構築。一般住宅と比較し、効果を実証する。 | |
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京セラ(株) | ■サイト取りまとめ ■HEMS(宅内エネルギー管理システム)、PV、PCS(パワー・コンディショナー)、蓄電池、蓄熱、宅内通信 |
シャープ(株) | ■HEMS、家電 |
※伊藤忠テクノソリューションズ(株) | ■PV発電予測 |
※(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ | ■HEMS、通信 |
※JFEエンジニアリング(株) | ■需要・PV発電予測 |
※日本電気(株) | ■需給安定化装置 |
※パナソニック(株) | ■HEMS |
(1)電力系統から切り離されても自立運転可能なビル(600kW程度)需要地システムを、蓄電池、ガスエンジンコージェネ、燃料電池、蓄熱槽、PV(100kW程度)等により構築し、高い信頼性を有する供給体制を実証する。 (2)配電系統内に設置されたPVの変動を、ビル側EMSと系統側EMSを連系することにより吸収できることを実証する。 |
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清水建設(株) シャープ(株) (株)明電舎 |
■サイト取りまとめ ■系統EMS(エネルギー管理システム)、BEMS(ビル内エネルギー管理システム)、PV、蓄電池、蓄熱、通信 |
富士電機システムズ(株) 東京瓦斯(株) 三菱重工業(株) |
■燃料電池、コジェネ、ガスエンジン |
古河電気工業(株) 古河電池(株) |
■鉛蓄電池 |
※伊藤忠テクノソリューションズ(株) | ■PV発電予測 |
※JFEエンジニアリング(株) | ■需要・PV発電予測 ■蓄熱 |
※住友電気工業(株) ※日新電機(株) |
■ビル内PLC通信(電力線通信) ■PCS(パワー・コンディショナー) |
以下のような項目を含む全体総括研究をニューメキシコ州側の総括研究と連携して実施。 伊藤忠商事(株)、アクセンチュア(株) ■全体総括研究取りまとめ、■データマネージメント、■実証サイト運営支援 |
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(1)スマートグリッド全体とりまとめ研究 | □ニューメキシコ州の5つのサイトで実施されるスマートグリッドの効果を分析し、上位系統への影響を評価。 (株)東芝:■取りまとめ ※伊藤忠テクノソリューションズ(株)、※(株)日立製作所 |
(2)PV等分散電源の評価 | □10種類程度(合計1MW程度)導入予定のPVモジュールおよびNM州側PVモジュールを対象に性能評価を行い、これまでに得られた日本におけるPV性能評価結果との比較検証。 □高地(1,500m級)におけるガスエンジン、燃料電池などの性能を評価。 京セラ(株):■取りまとめ 富士電機システムズ(株)、東京瓦斯(株) 三菱重工業(株)、※(株)NTTファシリティーズ、 ※東京工業大学 |
(3)単独運転検出装置など分散電源保安技術に関する検討 | □商業ビルの自立運転などでの単独運転検出のあり方や、日米研究施設を活用した分散電源の保安技術の相互検討などを実施。 (株)関電工:■取りまとめ (財)電気安全環境研究所 |
(4)サイバーセキュリティ及び情報通信技術の研究 | □商用IPネットワークベースでの、系統/需要地の計測/管理システムの構築、実証。 □日米共同でのサイバーセキュリティ試験方法の検討と、スマートグリッドに必要な情報通信技術のあり方などの研究。 (財)電力中央研究所:■取りまとめ (株)サイバーディフェンス研究所、※(株)インフォセック ※京セラコミュニケーションシステム(株)、※(株)東芝、 ※富士通(株) |
(5)モデル・シミュレーション開発 | □スマートグリッドの効果解析など、上記(1)~(4)の研究項目に必要な新たなモデル・シミュレーション技法の開発。 (株)東芝:■取りまとめ ※伊藤忠テクノソリューションズ(株)※日本電気(株)、 ※パナソニック(株)、※富士通(株) |
(つづく)
プロフィール

諸住 哲(もろずみさとし)氏
現職:
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
新エネルギー技術開発部 系統連係技術グループ
主任研究員 工学博士
【略歴】
1985年3月 北海道大学大学院工学研究科博士課程修了
(電力貯蔵システムの最適運用と最適配置の研究で博士号取得)
1986年4月 (株)三菱総合研究所 入社
(電力需給問題、供給信頼度分析、DSM、電力市場、新エネルギー
系統連系問題、電力貯蔵技術、マイクログリッドなどの調査、開発の従事)
2006年4月より NEDO技術開発機構出向〔太陽光集中連系、大規模太陽光発電、風力安定化、新エネルギー集中実証(マイクログリッド)、新電力ネットワーク実証等の実証研究を管轄〕