発電出力予測コンペの概要
同コンペでは、日射量予測と風力予測の2種類が募集された。コンペの概要について、予測項目と対象となる予測期間/時間帯を表2に、参加者に提供されたデータを表3に示す。
表2 コンペの予測項目と対象となる予測期間、時間帯
〔出所:電気学会再生可能エネルギー出力予測とその利用技術調査専門委員会資料をもとに編集部作成〕
表3 コンペにおける提供データ
〔出所:電気学会再生可能エネルギー出力予測とその利用技術調査専門委員会資料をもとに編集部作成〕
次に、コンペ結果についてまとめる。ここでは、誌面の関係上、日射量予測の結果のみについて説明する。
表4 日射量予測の参加者と予測手法、入力データ
〔出所:電気学会再生可能エネルギー出力予測とその利用技術調査専門委員会資料をもとに編集部作成〕
〔1〕日射量予測の結果
日射量予測についての参加者の概要、予測手法と入力データは表4のようになっている。
今回は、各手法の詳細については公開されなかったが、大学4件、企業・研究所8件の合計12件の応募があった。
2012年5月1日~8日の日射予測値の時間変化予測について、手法ごとに比較し、大きく誤差がある手法を除外した結果が写真1である。太い赤線が実際の日射量となり、そのほかの折れ線が各手法の予測結果を表している。各手法とも、概ね実際の値に近い値を予測している。
写真1 中部地域、北陸地域の2012年5月1~8日の日射予測値の時間変化
〔出所:編集部撮影〕
中部地域の5月の日射予測の誤差をまとめると、上位5手法については、RMSE注5は、110W/m2(5月の平均日射強度比25%程度)以下であり、予測値同士の差は8W/m2(5月の平均日射強度比2%程度)の範囲におさまっている。
しかし、頻度は少ないものの、予想結果が現実と大きく離れてしまうことが発生する。 例えば、中部地域の場合、5月6日については、実際の日射量が急激に下落している時間帯があるが、この現象は、どの手法も予測できなかった。6日は、上空の寒気と下層の暖かく湿った空気によって関東・東北は激しい雷雨となっていた。このような急激な気象の乱れを、前日の段階で気象予報モデルによって予測することは、現在のところ困難といえる。
再生可能エネルギーの発電出力予測技術の今後
前述のような課題を解決するため、衛星画像などを用いた数時間先の予測手法なども開発されつつある。今後、さまざまな手法を併用し、予測精度を高めていくことが期待される。
一方、系統運用の観点からは、このような、突発的な気象の変化による予想のズレに対して、どの程度許容し、電力の安定運用を実現するかについて、議論が必要である。
再生可能エネルギーの利用が進んでいるドイツでは、すでに系統運用において、電力事業者が、気象予測技術を提供している企業から購入して利用している。利用する際は、複数の企業のデータを利用して総合的に判断することで、予測の精度を高めている。
このように、気象予測については、各基本データの精度を高めるとともに、多様な手法の比較が必要である。今回の予測技術コンペでは、各予測手法の詳細については公開されなかったため、これらの比較や議論は行えなかったが、今後、今回のコンペの結果に対しても検証を進めていくとのことである。第2回の開催も予定されているため、引き続き期待したい。
▼ 注5
RMSE:Root Mean Square Error、2乗平均平方根誤差。個々の観測値と予測値の差分のばらつきの程度を表すために用いられる。