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M2M技術を活用し、住宅・店舗・公共施設のエネルギーマネジメントを実証

2015/03/20
(金)
SmartGridニューズレター編集部

2015年3月20日、富士通株式会社(以下:富士通本社、東京都港区、代表取締役社長:山本 正已)、沖電気工業株式会社(以下:沖電気、東京都港区、代表取締役社長:川崎 秀一、以下)、日本大学理工学部理工学研究所(以下:日本大学、東京都千代田区、研究所長:高野 良紀)、北陸先端科学技術大学院大学(以下:JAIST、石川県能美市、学長:浅野 哲夫)は、M2M技術を活用することで、ネットワークに接続した複数のデバイスにより総合的に施設内のエネルギーマネジメントを実現する実証実験を実施したことを発表した。

同実験では、2013年7月から2015年1月まで、関東から関西、北陸までの広域にわたる住宅(戸建、集合住宅)、小規模店舗、学校の計27施設に対して28種類800個以上のデバイスを接続し、スマートコミュニティにおけるエネルギーマネジメントを実証した。

同実験は、総務省の平成24(2012)年度予算において「先端的ICT国際標準化推進事業『スマートコミュニティにおけるエネルギーマネジメント通信技術』」として委託され、2012年より各社、各大学で実証実験に向けた研究開発を行ってきた。最終的な実験結果は2015年3月末までに総務省へ報告される予定となっている。

また、富士通、沖電気、JAISTは、ここで実証した技術をもとに国際標準化を進めており、2015年中にはITU-T※1を含む国際標準化機関で標準化を完了する予定で、研究成果を広く普及できるように取り組んでいく。

実証実験の詳しい内容は下記のとおり。

実証実験の概要

  1. 期間:2013年7月~2015年1月
     
  2. 場所:実験住宅iHouse(石川県能美市)、一般住宅15戸(関東、中部、関西、北陸)、小規模店舗3店舗(栃木、東京、愛知のガソリンスタンド)、学校8校(東京都内の小・中・高等学校7校、日本大学)の計27施設
     
  3. 目的: 地域(コミュニティ)単位でのエネルギー利用の効率化と安定供給・防災性を高めるエネルギーマネジメント技術と必要な通信技術の研究開発
     
  4. 実証実験のイメージ :スマートコミュニティに実在するさまざまな建物を想定し、実験住宅、一般住宅、小規模店舗、学校を広域から選択し、インターネット経由でデータセンター(名古屋)に設置されているサーバに接続し検証
     
  5. 役割分担:サービスプラットフォーム技術(富士通)、デバイス通信インターフェース共通化技術(沖電気)、コミュニティにおけるエネルギー需給モデル化技術(日本大学)、コミュニティ・シミュレーション技術(JAIST)

      図1:実証実験の構成イメージ

実証実験詳細
消費エネルギーを低減するときに重要視する観点は、各建物で異なり、住宅では快適性、店舗では業務に支障が出ない範囲でコストを抑えることなどが求められる。また、学校では教育環境としての温度や照度のような基準に適合していることが必要となる。これらを踏まえ、実証実験では以下の検証を実施した。

  • 住宅:18種類のセンサーや機器をネットワークに接続し、自然条件に合わせて電力消費を低減する室温の制御。夏季の間、住宅内に涼風を取り入れられる場合はエアコンを停止して、窓を開ける制御や、カーテンの遮光による直射日光を起因とした温度上昇の防止、冬季には採光により室内の上昇を制御。
     
  • 店舗(ガソリンスタンド):住宅用機器と同様に制御が可能なアダプタ接続で、デバイスの入出力インターフェースの仮想化を実現。さらに照明の自動制御による、無駄な消費電力の削減。特に、秋から冬は給油ラッシュと重なる日没の点灯直後に蓄電池から放電しピーク電力を低減。
     
  • 学校:学習環境に適した温度、湿度、照度、CO2濃度などの基準に対する環境情報の見える化。CO2濃度上昇による集中力低下の防止や、インフルエンザ予防のため湿度を監視。
     

◆各社の研究テーマと役割分担

社名   研究テーマ             役割
富士通 サービスプラットフォーム技術 建物内に設置される機器をデータモデルに基づいて共通フォーマット化し、統一されたWebインターフェースを通じてアプリケーションを動作させることが可能なサービスプラットフォームを開発し、そのアーキテクチャをITU-Tで国際標準化した。建物内の機器やネットワーク情報を遠隔から正確に把握し、保守を容易にする遠隔保守技術を開発した。
沖電気 デバイス通信インターフェース共通化技術 HEMSなどの標準規格であるECHONET Liteに対する920MHz無線通信方式を策定した。また、無線方式間で異なる6LoWPAN2の共通化された通信インターフェース仕様をITU-Tで2015年中に標準化する。今後、920MHz無線を利用したHEMSなどが普及した場合でも、安定通信を維持しつつ周辺ノイズ量に応じて送信出力を制御することで、近隣システムへの電波干渉の影響を低減する技術を開発した。
日本大学 コミュニティにおけるエネルギー需給モデル化技術 学校を中核とした地域コミュニティモデルの検討と、コミュニティ内の電力エネルギー最適化検討が実行可能な「電力配電網モデル」を作成した。都内の日本大学キャンパスおよび周辺の小中高等学校の電力量および室内環境の「見える化」により、学校施設を中心とした災害時防災に強い地域コミュニティを実現した。
JAIST コミュニティ・シミュレーション技術 機器やネットワークにおいて、実物と同様のプロトコルやプログラムが稼働するエミュレーションベースのシミュレーターを実現した。想定するコミュニティにおける居住者の行動を想定し、その行動により家電や設備が制御されるため、実際のコミュニティにおける実験で得られる想定の結果と近い評価が得られた。

図2:実証実験の各社役割詳細イメージ


※1:ITU-T
電気通信に関する国際連合の専門機関であるITUの電気通信標準化部門

※2:6LoWPAN:IPv6 over Low power Wireless Personal Area Networkの略称。省電力近距離無線規格IEEE 802.15.4においてIPv6のデータパケットを通信するプロトコル

■リンク
富士通
沖電気
日本大学
JAIST

 

 

 

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