低圧向け一般需要家向けの再エネ事業の方向性
太陽光発電装置の卒FIT以降、同システムを導入している需要家(家庭)では、どのような選択を迫られているのだろうか。多くの需要家は、次のような選択をすることになる。
- 電気の売電単価が年々下がるが、そのまま売電収入を得る。
- 新電力(小売電気事業者もしくは特定規模電気事業者)が提供する売電単価の高い電力サービスに変更する。
- 定置型蓄電池システムなどを導入して自家消費利用をする。
上記3つの中で、(3)については、すでに、VPP実証や電気自動車(EV)のダイナミックプライシング実証など、平成28(2016)年度に国主導による補助金事業が行われており、今後の需要家宅への新たな再エネ機器の活用の事業化が示されている。
今年度(2021年度)も「令和3年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業」で、事業化へ向けた実証が行われている。
再エネを利用する際に必要な機器構成
「令和3年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業」において、需要家宅へ設置する機器構成は図1のようになる。それぞれの構成機器について、見ていこう。
図1 需要家宅へ設置する機器構成例
出所 各種資料より編集部で作成
- リソースアグリゲーターと接続する通信装置
一般的には、需要家宅で稼働中のインターネット回線を利用するケースが多い。 - HEMSゲートウェイ
HEMSゲートウェイは、次の3つの役割をもつ。
①リソースアグリゲーターと接続し、HEMSゲートウェイと接続している再エネ機器の状態通知を行う。また、HEMSゲートウェイと接続している定置型蓄電池の運転モードの制御指示をリソースアグリゲーターから受ける。
②HEMSゲートウェイと再エネ機器の接続をECHONET Liteで行う
③スマートメーターとBルート注2で接続してデータ取得を行う - 再エネ機器
再エネ機器には、次のようなものがある。
①定置型蓄電池システム
②EV充放電装置
③住宅用太陽光発電装置
④燃料電池(エネファーム)
⑤ヒートポンプ給湯器(エコキュート)
HEMSゲートウェイを導入する際の課題
需要家宅に設置されるHEMSゲートウェイは、リソースアグリゲーターと連携することでシステムとして成立する。このシステム構成には、いくつかのパターンがあるが、需要家宅に設置するHEMSゲートウェイとリソースアグリゲーターがインターネットを介して確実に接続することが最低条件になる(図2)。実は、この点が導入・設置する場合の一番の課題となる。
図2 需要家宅にインターネット回線がある場合の接続構成
出所 各種資料より編集部で作成
多くの場合、需要家宅にはすでにインターネット回線が導入されている。この場合、HEMSゲートウェイと(インターネット回線を利用する際に必要な)ブロードバンドルータを接続する。しかし、このブロードバンドルータとHEMSゲートウェイは設置場所が異なる場合があり、この間を無線LANで接続することが圧倒的に多い(図2)。この無線LANによる接続は、需要家宅の建物の構造などによるが、安定稼働を確保するために苦慮するケースが多い。
一方、需要家宅にインターネット回線が設置されていない場合には、モバイル通信装置(LTEアダプタ)をあらかじめ用意しておき、HEMSゲートウェイとブロードバンドルータを接続する(図3)。
図3 需要家宅にインターネット回線がない場合の接続構成
出所 各種資料より編集部で作成
今後、需要家が、定置型蓄電池システムなどを導入する際には、HEMSゲートウェイの設置および稼働を考えると、需要家宅にインターネット回線がある場合でも、モバイル通信装置(LTEアダプタ)を含めて導入を行うほうが良い。
▼ 注1
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2021/06/25_01.html
株式会社ACCESS
IoTプラットフォームをベースにした組込み機器向けの、AI、データサイエンティフィックサービスを提供している。
株式会社NTTドコモ
▼ 注2
Bルート:30分ごとの電気使用量や電流値をHEMSゲートウェイへ送信する経路。HEMSゲートウェイとスマートメーターの通信は、Wi-SUNプロトコルで行われる。