2015年9月25日、株式会社 竹中工務店(以下:竹中工務店、大阪市中央区、取締役社長 COO:宮下正裕)は、電力システム改革後に想定されている多様な料金メニューに対応して電力デマンドを最適に制御することができる新しいエネルギーマネージメントシステム「I.SEM」※1を開発し、関連会社である株式会社TAKイーヴァック(以下:TAKイーヴァック、東京都江東区、取締役社長:嵯城正敏)の新砂本社ビル(以下:TAK新砂ビル、東京都江東区)に初導入したことを発表した。
「I.SEM」とは、建物の負荷予測を行い、熱源や空調機器などの運転を最適に計画し、計画通りの電力デマンドを達成する、最先端のスマートなエネルギーマネージメントシステムである。マネージメント機能を、同社が開発したクラウド活用の情報プラットフォーム上に構築することで高速処理が可能になったことや、パーソナル対応のデマンドレスポンスを負荷予測に加味したことで、リアルタイム制御を実現している。
これにより、予測から運転までを一貫して高精度・高効率で行うことができ、計画通りの電力デマンドを達成することで多様な料金メニューに対応する。
従来でも、個別の予測システムや制御システムは存在したが、各種の個別システムをクラウド上に構築してトータルに制御するマネージメントシステムの実用化は同社初となる。
図 「I.SEM」システム概要
今後、「I.SEM」を初導入したTAK新砂ビルでの実証データの蓄積を行い、さらにシステムの充実を図るとともに、オフィスビルをはじめ、集合住宅や学校、大型ショッピングセンター、駅ビルなどのエネルギーマネージメントとBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)ニーズの高い建物への提案を予定する。
◆「I.SEM」導入のメリット
- 電力単価の高い時間の購入抑制、割安な電力メニューへの対応、事前に想定した買電計画どおりのデマンド調整などを実現し、電力自由化後に想定される多様な料金体系への対応を可能とする。これにより、電力コストの低減に貢献する。
- 停電時には、太陽光発電や発電機の電力を建物に供給することが可能で、BCP・LCP(Life Continuity Planning、生活継続計画)としても有用である。
◆竹中工務店が提案する「I.SEM」の特長
- パーソナル対応デマンドレスポンスを加味した「負荷予測システム」:
電力負荷と熱負荷を±5%で予測するエンジンに、居住者の意向を反映させるパーソナル対応デマンドレスポンスを加味してシステム化したことで、居住者に不満のない環境での高精度な負荷予測を実現する。
- 複雑な熱源やEVを考慮して電力調達を計画する「最適運転計画システム」:
電気熱源やガス熱源、蓄熱などの複雑な熱源機器とEV充電のスケジュールを、コストや省CO2などの目的に合わせて最適化し、電力調達の計画値を決定する。必要な分析機能を、同社が開発した情報プラットフォーム「ビルコミ」※2に構築することにより、高速かつセキュアなシステムを提供している。30分単位の計画値に対して電力デマンドを±3%に制御しているが、更に短い周期でのデマンド対応力へのポテンシャルを有している。
- 太陽光発電や発電機など多様な電源を最適にコントロールして空調や照明と統合して電力デマンドを制御する「リアルタイム制御システム」:
リアルタイム制御の中核をなすのが、新たに開発したMSEG(multi-source energy gateway)である。MSEGは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による助成を受け開発した※3、パワーコンディショナ機能(PCS)とバッテリー機能を一体化したコンポーネントを制御するシステムとなる。太陽光発電、発電機、電気自動車など最近のビルに採用されているさまざまな分散型電源を統合して、効率よくビルの電力デマンドをリアルタイムに調整する。
- 停電時には多様な電源を活用して自立運転を行う「MSEG」:
MSEGは分散型電源を活用して停電時の自立運転が可能。MSEGは、これらの機能をパッケージ化したことでイニシャルコストを低減し、施工性を向上させるなど提案時の商品性を高めた。
※1 「I.SEM」(アイセム):I.Smart Energy Managementの略称。「I」は、Interconnection、Interoperability、Interface、Interactionなどの意味を示し、クラウドシステムがさまざまなハードウェア、ソフトウェアを繋いで連携するコンセプトを表現している。
※2 ビルコミ:建物内の空調や照明、各種センシングなどの設備システムをネットワークでつなげ、そこで交わされる情報をクラウドで統合するプラットフォーム。クラウド化することで拡張性が高く、高速処理が可能になる。今後はビッグデータ活用にいち早く対応し、サービスレベルの向上を図る。
※3 平成26~27年度、戦略的省エネルギー技術革新プログラム、共同実施者:株式会社アイケイエス
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