燃料電池自動車「MIRAI」の構造とコア技術
〔1〕「MIRAI」の6つのコア技術「TFCS」
次に、4人乗りで最高時速175㎞の「MIRAI」の構造と、そのコア技術を見てみよう。表3に、その主な仕様を示す。
表3 「MIRAI」の主な仕様
〔出所 各種資料より編集部作成〕
MIRAIの心臓部は、図5に示すように自社開発した「TFCS」(TOYOTA Fuel Cell System、トヨタ燃料電池システム)と呼ばれる次の6つのコア技術で構成されている。
図5 6つのコア技術で構成されるMIRAIのTFCS
- 高圧水素タンク(約700気圧の水素タンク2本)
- FCスタック(発電装置部。発電出力114kW)
- パワーコントロールユニット(DC/AC変換やDC/DC変換を行う注5 )
- 駆動用バッテリー〔ニッケル水素 (NiH2)バッテリー。減速時に回収した電気を貯蔵し加速時などに使用。蓄電容量は6.5Ah〕
- FC昇圧コンバーター〔従来(2008年型)DC250Vの発電電圧をFC昇圧コンバーターでDC650Vに昇圧〕
- モーター(最高出力:113kW)
これらTFCSの各機器・装置は、MIRAIの車体の床下部に配置されているため、全体として車体の重心が低く安定感があり、操作性がよいのも特徴のひとつになっている。
また、図6の左図に示すように、駆動用バッテリーとパワーコントロールユニット、モーターの3カ所については、現行のカムリなどのハイブリッド車に使用されているユニットを流用し、信頼性の向上と大幅なコストダウンが行われている。
図6 MIRAIでFCV専用に開発されたFCスタックとFC昇圧コンバーター
〔出所 トヨタ自動車「FC昇圧コンバーター」より、 http://www.tcmit.org/information/docs/20141118_01_FCV_Panel.pdf〕
〔2〕MIRAIの動作原理
また、これらの6つのコア技術を搭載したMIRAIは、図7に示すように、高圧水素タンクに水素を充填したあと、図中の【STEP 1】〜【STEP 6】に示すような動作原理となっている。これらの動作をまとめたものを表4に示す。
図7 MIRAIの動作原理
〔出所 トヨタ自動車「MIRAI主要コンポーネント」より、 http://www.tcmit.org/information/docs/20141118_01_FCV_Panel.pdf〕
表4 図7のSTEP1〜STEP6の説明
〔出所 各種資料より編集部作成〕
▼ 注5
DC:Direct Current、直流。AC:Alternating Current、交流。DC/AC変換は直流を交流へ変換する装置で、DC/DC変換は直流をさらに高い直流に変換(あるいはさらに低い直流に変換)する装置。