スタートしたIndustry 4.1J実証実験システム
〔1〕Industry 4.1J 実証実験システムの具体的な構成
ドイツのIndustrie 4.0は、産官学による製造業の高度化に向けたアクションプランであり、「CPSプラットフォーム」(CPS:Cyber Physical Systems)をベースにネットワーク化された「考える工場」(スマートファクトリー)を実現するプロジェクトである。この第4次産業革命「Industrie 4.0」のコンセプトをベースに、よりセキュアなシステムを目指すのが日本版「Industry 4.1J」である。
図1は、前編で紹介したIndustry4.1J 実証実験システムを、より具体的に示したシステム構成図である。ここでは大きく、①プライベートクラウド(Bizホスティング Enterprise Cloud;後述)、②模擬プラント(NTTコミュニケーションズビル内)、③遠隔監視デモシステムなどで構成され、ここで使用される各社の監視・制御ソフトなどを含むアプリケーションソフトウェア製品の例は、表1の通りである。
表1 Industry4.1Jの実証実験システムで使用される各社の製品
〔出所 VEC、NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐIndustry4.1J実証実験、中間報告」、2015年6月を元に作成〕
図1 Industry4.1Jの実証実験システムの具体的な構成
〔出所 VEC、NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐIndustry4.1J実証実験、中間報告」、2015年6月〕
〔2〕生産システムへのサイバー攻撃
2015年6月、日本年金機構において複数の職員の端末がサイバー攻撃を受け、過去最大規模となった約125万件の年金情報(加入者の氏名と基礎年金番号等の個人情報)が外部に流出したと発表された。一方、米国では、2,150万の個人情報が流出した可能性があると発表される(2015年7月)など、日米政府の情報システムが大規模なサイバー攻撃を受けたことは記憶に新しい。
このようなサイバー攻撃に対して、日本では2016年4月からの電力小売全面自由化を控え、経済産業省が、家庭などに対して電力が安定的に供給できるよう(サイバー攻撃などによって停電などが発生しないよう)、スマートメーター(次世代電力計)へのサイバー攻撃に対する具体的な枠組みを取りまとめた注2。
現在、サイバー攻撃およびその懸念は国際的にも拡大しているが、今後、さらに攻撃の領域が広がり、「情報システム」に続いて「生産システム」へのサイバー攻撃が多くなることも予想されている。
「生産システム」へのサイバー攻撃に対して、「Industry 4.1J」はどのようにセキュリティ対策を実現しようしているのだろうか。セキュリティに関する国内外の動きを見ながら、解説していく。
▼ 注1
Industrie 4.0:ドイツが中心となって推進しているため「Industrie 4.0」とドイツ語で表現(Industrie)しているが、日本版の「Industry 4.1Jプロジェクト」では英文表記(Industry)になっていることに注意。以降、このように使い分けて表現している。
▼ 注2
http://www.meti.go.jp/press/2015/07/20150710001/20150710001.html