クラウドと重要インフラの遠隔監視
写真1 SCF 2015におけるVECによるIndustry 4.1Jの展示ブース
Industry 4.1J実証実験は、ドイツが推進するIndustrie 4.0における製造現場とクラウドの関係をよりセキュアに接続することや、さらに、制御システムの見える化、サイバー攻撃に対応するセキュリティのモニタリング(監視)などを目指して、VECの製造業BAクラウド研究分科会(参加企業約20社で構成)を中心に推進されている。
特に、続々登場しているIoTシステムにおいて、現場の生産システムの構築やアプリケーションソフト部分は、開発コストがかかることから、安価に開発することが求められている。このため、最近では、次のようなクラウド(データセンター)の活用が注目されている。
- クラウドによって各種の関連モジュールを共通化し、システム構築や運用コストが安価にできる。
- クラウドによってシステムを一元管理できるため、(管理抜けや管理漏れなどの)セキュリティリスクが軽減できる。
- クラウドに集積されたデータを利活用して経営の改善をはじめ、それらのビッグデータを人工知能(AI)で解析することによって、今までにないビジネス上の付加価値を得られる。
これによって、製造業における企業の経営陣は、各製造装置の稼働状況やERP(Enterprise Resource Planning、統合基幹業務システム)を日常的に使っているデスクトップ端末あるいはスマートフォンから、自社の製品開発状況からアフターサービスに至るまで、ビジネスの流れをウォッチできるようになる。
このような背景から、今回のIndustry 4.1J実証実験では、クラウドを利用して、電気・ガス・水道やビル・工場・プラントなどの重要インフラの安全・安心、防災をどのように実現するかという点を重視した実証が行われている。
特に、このような重要インフラを遠隔地からでも監視できるようにすることは、表1に示す①設備の老朽化の進展、②ビジネスのグローバル化、③サイバー攻撃の激化、④熟練者の大幅な退職、⑤急速な気候変動への対応なども含めた5つの要因から、重要なものになってきている。
表1 重要インフラの遠隔監視が必要な5つの理由
出所 各種資料より編集部作成
▼ 注1
VEC:ブイ・イー・シー。Virtual Engineering Community。ユーザーニーズ、業界リーダーのシーズ、メーカーの要素技術、エンジニアリング会社やSI (システム・インテグレーター)の応用技術などを融合し、それらの最新の複合情報を共有化することによって、それぞれのニーズに対した最適なソリューション構築を実現するためのパートナーシップ集団。会員数:158(2015年11月9日現在)
https://www.vec-community.com/ja/about/
▼ 注2
Industry 4.1J : ‘J’は日本発の意味。ドイツが推進する第4次産業革命と言われるIndustrie 4.0をベースに、サイバー攻撃に強いセキュアなプライベートクラウド(IP-VPN)でシステム構築を目指しているところから、Industrie 4.0の進化版とも言われている。
▼ 注3
SCF 2015(システムコントロールフェア2015):2015年12月2〜4日、東京ビッグサイトにて開催。主催は日本電機工業会(JEMA)/日本電気制御機器工業会(NECA)、参加者数は4万9,261名、出展者数173社。