スマートグリッド向けIEEE標準規格
IEEE 1888プロトコルとは、米国電気電子学会(IEEE)によって策定された、IP上で動作するスマートグリッド向けのアプリケーションプロトコルのことで、通称「IEEE 1888プロトコル」と呼ばれている。これは、次世代の監視制御のための通信規格であり、コミュニティ単位の電力管理や設備管理のほか、ITシステムなどとの連携を得意とする。具体的には図1のようなシステムが構築され、オフィスビルやスーパー、コンビニ、百貨店、学校、旅館、工場などのエネルギー監視制御や設備管理を、IEEE 1888プロトコルによって各種ITシステムと連携させて運用する。
図1 一般的なエネルギー管理事業の中でのIEEE 1888プロトコルの利用シーン
それぞれのビルや施設内には、フィールドバスと呼ばれる物理ネットワークが想定されている。その現場の特性に応じて、BACnet、Lonworks、Modbus、ZigBee、特定小電力無線などの各種通信方式がフィールドバスとして使用される。IEEE 1888は、これらの通信方式の違いをゲートウェイ(GW)によって吸収し、広域インターネット上のサービスと統一的な方式で接続できるようにするものである。
インターネット上のIEEE 1888サービスは、データセンターのようなセキュリティなどが堅固なコンピュータ基盤によって提供される。各施設がこのサービスと接続されることによって、「店舗の集合体」や「特定の地域」などのコミュニティ全体を、ITによって管理できるようになる。その管理画面としてはタブレット端末やスマートフォンが主流になり、設備や電力の利用状況の把握、警報時のメールによる通知、設備稼働スケジュールの設定、目標値設定がスマート端末からクラウドを介して行える。
オープン性を強く意識した通信プロトコル
IEEE 1888は、オープン性を強く意識した通信プロトコルである。従来までは、メーカーから提供されて運営されるBEMSは、メーカーの事業戦略(囲い込み戦略)上、そのメーカーが独自に設計した仕様によって開発されていることが多かった。そのため、システムの持続性注3や、システム全体の開発費、人材の確保などに対して大きな課題があり、大手企業が重い腰を上げてようやくサービスが提供されるという状況であった。その結果、提供されるサービスは高価にならざるを得ず、特に、最終的な顧客となる中小ビルへの導入は遅れてしまうという状況にあった。
しかし、このプロトコルの登場によって、従来ベンダごとに構築されていたビル設備システムを、マルチベンダ環境で構築し運用することが可能となった。例えばA社の空調系やB社の電力メーター系に、インターネット上のC社エネルギー管理サービスを接続させて、ビルの設備管理を行えるようになったのである。
また、何らかの原因で特定の装置が故障した場合に、その装置がディスコン(製造中止)となっていたとしても、他社から互換品を迅速に入手することができるので、システム全体を持続的に健全に保つことができるようになる。
このようにIEEE 1888は、導入する機器やソフトの選択肢を広め、顧客の望むサービスを提供しやすくするのである。
▼ 注1
BEMS(ベムス):Building Energy Management System、ビルエネルギー管理システム。ビルなどの建物内で使用する電力使用量等を計測し蓄積し、導入拠点や遠隔において「見える化」を図り、空調・照明設備等の接続機器の制御や、電力のデマンドピークを抑制・制御する機能等をもつエネルギー管理システムのこと。
BEMSアグリゲータはSII(環境共創イニシアティブ)の認可が必要(http://sii.or.jp/bems/first.html)。
▼ 注2
「RemoteOne」は、NTTデータカスタマサービス(株)の登録商標。
▼ 注3
サービスの継続性や長期にわたる部品調達など。