[再生可能エネルギーと電力システム技術]

再生可能エネルギーと電力システム技術

─第3回 再生可能エネルギーの出力変動をどう解決するか─
2013/05/01
(水)

スマートグリッド技術が切り拓く共存の道

〔1〕より効率的な電力の需要と供給の管理

より効率的な需要調整を行うための方策として、需要家の協力を得ることも考えられる。例えば、家庭の太陽光発電と電力会社の電力システムを接続(系統連系)させるために使用されるパワーコンディショナー注9に、電力システム側の周波数が大きく上昇した場合に、電力システムから太陽光発電を切り離す(「解列する」という)機能をもたせるようにする。こうすることによって、電力システム側の周波数上昇時には、太陽光発電出力が減少して需給バランスが適正化されるため、根本的な解決が期待できる。

〔2〕需要家間における不公平の課題

しかしこの場合、解列(切り離し)のタイミングが各メーカーから提供されている「PCSの感度」に依存してしまうため問題を起こすケースがある。例えば、このPCSの感度の差によって、Aさんの太陽光発電は売電できるが、Bさんの太陽光発電は解列されてしまい売電できないという現象が起こる。

このように、需要家間において不公平なことが生じてしまうため、PCSの解列機能に依存することは問題となる可能性もある。また、いったん解列した太陽光発電を、再び電力システムと接続する場合の「再連系のタイミング」にも、同様の公平性の課題がある。さらに、大量の太陽光発電が一斉に再連系する場合は、これにより急激に周波数が上昇する可能性があるため、電力の需給バランスに大きな影響を与えないように緩やかに再連系する工夫も必要である。この解列や再連系のタイミングが適切に協調できなければ、電力システム全体の挙動(動作)が不安定になるおそれがある。

〔3〕PCSの効率よい協調的動作の実現

このように、今後、太陽光発電の普及とともに設置されていく膨大な量のPCSが、効率よく協調的な動作を実現するためには、

  1. PCSと電力システムとの接続点で得られる情報だけでなく、
  2. 電力システムの運用者注10と需要家との間で相互通信を行うことによって協調的な動作を実現する仕組み

が必要である。このような役割を果たすものとしても、スマートメーターが期待されている。

スマートメーターを適切に活用して太陽光発電の出力、さらには電力需要を制御することで、これまでに述べてきたような短時間の周期(数十分以内)における電力の需給バランスの変動に対しても、

  1. 調整速度を速くできる面
  2. より大きな調整量を確保する面

の両面から貢献できる可能性がある。ただし、安易に需要側において制御を行うのではなく、あくまでも電力システム側で発電機の制御を行うことを主とすることが基本である。それでも、従来の発電機の制御だけでは追従ができない、あるいは対策のためのコスト増が深刻となる場合に限って、需要側の制御(スマートメーターの制御)が機能するような在り方が望ましいのである。その場合、需要家側の整備に必要とするコストは、このような電力システム側と適切に配分しあうことが肝要であろう。

図3 需給調整の価値(在来電源側の出力調整)

図3  需給調整の価値(在来電源側の出力調整)

海外と日本の再生可能エネルギーの導入に対する考え方

海外では、再生可能エネルギーの導入や利用を最優先事項と考えているため、エネルギーのベストミックスの観点から再生可能エネルギーの導入目標を定め、これによって生じた電力システムに関する運用上の問題は、別途対策を立てる傾向がある。

これに対して、逆に日本では、電力システムの運用上、電力の安定供給に支障を生じない範囲で、最大の再生可能エネルギーの導入量を「連系可能容量」と表現する傾向があると感じられる。

このような比較だけを議論すると、日本は再生可能エネルギーの受け入れに消極的であると受け取られてしまう可能性もある。しかし、別の視点からみると、電力システムの運用上で生じる発電効率の変化や、出力変動の対策コストなども踏まえて、総合的な観点から、再生可能エネルギーの導入効果を検討しているとも理解できる。

再生可能エネルギーの導入量増加に向けたFIT注11を先駆的に導入したドイツでも、その導入効果は必ずしも思惑通りではないという現状がある。スマートグリッド技術にかける期待や担うべき役割の在り方に関しては、先に述べた通り、連系線の利用や需要家との協調の可能性などを俯瞰的に勘案しながら、多角的な議論を進める必要がある。

(第4回につづく)

Profile

辻 隆男(つじ たかお)

辻 隆男(つじ たかお)

横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 准教授

1977年11月22日生まれ
2006年3月 横浜国立大学 大学院工学府物理情報工学専攻 博士課程後期修了
同年4月     九州大学 大学院システム情報科学研究院 電気電子システム工学部門 
                寄附講座(九州電力)教員
2007年4月 横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 助教に着任
2011年4月 同准教授、現在に至る
                博士(工学)
                主として、電力システムの運用・制御・解析に関する研究に従事

▼ 注9
パワーコンディショナー:Power Conditioning System(PCS)、太陽光発電の発生電力は直流であるため、電力系統(電力システム)に接続して利用するためには交流に変換する必要がある。このような役割を果たすインバータ〔直流(DC)から交流(AC)への変換〕や、発生電力の最大化を実現するためのコンバータ(直流の電圧レベルを調整する)、またこれらの制御器などを含む一連の電力システムと連系させるためのシステムのこと。

▼ 注10
ここでは、マイクログリッドなどの自営のネットワークの可能性も含めて、あえて電力会社とは記載しないこととする。

▼ 注11
FIT:Feed in Tariff、固定価格買取制度。

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