[オラクルのスマートグリッド戦略]

オラクルのスマートグリッド戦略─前編─

― 統合ITベンダによる新しい電力システム改革 ―
2013/08/01
(木)

オラクルが提供するスマートグリッド基盤

〔1〕スマートグリッド(ユーティリティ)戦略を視野に入れた3社の買収

Madoka Tatusmi

ここで、オラクルが提供するスマートグリッド基盤、特にスマートメーターのアーキテクチャについて見ていこう。

オラクルは、どちらかというとデータベースをはじめとしたIT基盤をビジネスするというイメージが強いが、2006年11月に、いわゆる電力会社もしくはガス会社、公益会社向けの料金系のシステムを中心としたアプリケーションを販売していた米国SPL(SPL WorldGroup)社をまず買収し、インダストリーに特化したソリューションを手に入れた。

続いて2007年4月に、今話題になっているスマートメータリング、あるいは日本でいうと、配電自動化システム、停電管理システムなどの領域のアプリケーションを得意とする、米国Lodestar社を買収した。

この2社の買収によって、スマートグリッドも視野に入れた領域に深くかかわるオラクル社になったのである。すなわち、これら2社の買収によって、オラクルは特にスマートメータリングやスマートグリッドに非常に密接となったため、海外では実証実験に参画して知見を蓄積し、買収した製品をより進化させていくとともに、求められる必要な機能は製品開発に投資して新しい製品を加え、ユーザーに提供するということを、グローバルに展開している。

もともとSPL社もLodestar社も、グローバルマーケットでは非常に認知されている企業だったので、第三者機関の評価においても、オラクルはスマートメータリングやスマートグリッドとして有効なベンダであると評価されている。

さらに2012年12月には、DataRaker社を買収している。

DataRaker社は、メーターで集めた情報(データ)を、クラウド上で分析する仕組みをもっていて、これらを電力会社向けに提供している。

オラクルの領域であるところの、MDM(Meter Data Management)あるいはCIS(Customer Information System)のアプリケーションにおいて、とても多くのデータがたまってくるので、それらのたまったデータをクラウド上で分析してその結果を返す、というサービスとして提供するものだ。

例えばこれらを、前出の図6のソリューション概要で見ると、「設備保全管理スマートメーター」「停電」「配電」「マイクログリッド」「メーターデータ管理」「設備フィールド」サービスなどのソリューションが該当している。

製品名としては、「Oracle Utilities Work Asset Management」「Oracle Utilities Operational Device Management」(Asset)など。とくに現在、国内で積極的に提案するソリューションは、「Oracle Utilities Meter Data Management」(MDM)や「Oracle Utilities Smart Grid Gateway」(MDM)といった製品が該当してくる。

〔2〕オラクルのスマートメーターソリューション

図7は、スマートメーターからコンセントレータ、ヘッドエンド、メーターデータマネージメント(MDM)、そして料金システム(CIS)との連携を示している。オラクルが要している領域は、右の2つの領域、つまりサーバ側の「メーターデータ管理」(MDM)、「料金システム」(CIS)のアプリケーションとなっている。

図7 オラクルのスマートメーター・アーキテクチャ

図7 オラクルのスマートメーター・アーキテクチャ

ちなみに、「ヘッドエンド」「コンセントレータ」「スマートメーター」などは、どちらかというと、日本では富士通や日立製作所、NEC、東芝などが提供する領域で、海外の有名なベンダでは、Landis+GyrやSilver Spring NetworksなどのいわゆるAMIベンダの領域である。

一方、オラクルは、どちらかというとそれらAMIベンダがどこであってもスムーズにつながるようなインタフェースをもって対応するような、「メーターデータ管理」(MDM)、「料金システム」(CIS)のアプリケーションを準備している。

MDMSの機能についてはいろいろある。

1つはヘッドエンドで集めてきたデータを正しく業務用のデータとして取り込むということ。正しくというのは、データが欠損していないか、異常値を極端におかしなデータを取り込んでいないか、などをチェックしながら取り込むということであり、正しく保存するということである。

計測時間間隔が30分値であっても15分値であっても、最終的には膨大なデータを見たり、各システムに渡したりということをしなければならないので、タイムスタンプ(時刻印)に沿って正しくデータを保存し、それを素早く引き出すという機能が必要となる。

もう1つは、これはユーザー側の選択になるが、使用量に換算できるようなデータとして再計算して料金システムに渡すといった機能である。あとは「監視」という形で、どこのメーターが生き死にしているかなど、あるいは「制御」というような視点の機能もある。(後編に続く)

◎Profile

田積 まどか(たつみ まどか)

田積 まどか(たつみ まどか)

日本オラクル株式会社 電力システム改革推進室 室長

鉄鋼メーカー系不動産デベロッパー業務にて経理、経営企画部門にて従事した後、2001年11月、日本オラクル株式会社入社。プリセールスコンサルタントとして、電力、鉄道、通信、公共業界向けにソリューション開発、ERPパッケージ導入提案及び、初期フェーズ導入支援を担当。
その後、コンサルタントファームにて電力業界を中心にビジネス開発および経営管理・会計業務領域のコンサルティング業務を3年半経験し、2010年6月より日本オラクルに復帰。電力・ガス・業界向けソリューション開発を担当した後、2013年4月より電力システム改革推進室長。

芝好 勇治(しばよし ゆうじ)

芝好 勇治(しばよし ゆうじ)

日本オラクル株式会社 公益グローバル・ビジネス・ユニット
日本・アジア太平洋地区 セールス シニアマネージャー

大手電機メーカー、公益企業をはじめとする大手企業様の営業担当をした後、1997年12月に日本オラクル株式会社の営業として入社。 電力会社、ガス会社をはじめとした企業向けのERP・CRMパッケージの提案を行う。
2011年年6月より、公益グローバルビジネス・ユニットに異動し、日本の公益企業向けにスマートメーターや顧客料金システムなどの提案を行っている。/p>

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