オラクルのスマートグリッドの基本戦略
─オラクルのスマートグリッドの基本戦略についてお聞かせ下さい。
ビル:私はオラクルのスマートグリッドユーティリティ分野の戦略担当バイスプレジデントを務めています。
具体的には、この分野についてグローバルな業界の動向をウォッチし追いついていくことに努力しながら、次に、どのようなソリューションが必要かを見ています。そのために、オラクルのユーティリティとして独自に開発したソリューションもあります。また、前編(2013年8月号)でも紹介した、
- エスピーエル(SPL)社(料金システムのアプリケーションの販売関連企業、2006年買収)
- ロードスター(Lodestar)社(スマートメータリング、配電自動化、停電管理関連企業、2007年買収)
- データレイカー(DataRaker)社(収集したメーター情報をクラウド上で分析する仕組み、MDM、CIS関連企業、2012年買収)
などを買収し、それらの企業がもっていた技術をオラクルのソリューションに取り入れ、統合スイートとして、ユーティリティ業界に提供しているものもあります。
例えばオラクルが独自に開発したソリューションとしては、スマートグリッド・ゲートウェイ(SSG:Oracle Smart Grid Gateway)があります。
AMIシステム(スマートメーター〜ヘッドエンド)の構成とスマートグリッド・ゲートウェイ(SSG)の関係を、図1に示します。
図1 AMIシステムにおけるスマートグリッド・ゲートウェイ(SGG)の位置づけ
このSGGは、各社特有のヘッドエンド注1で使用されているAMIベンダ各社のデータフォーマットを、次にデータを渡すMDM(Meter Data Management)サーバのデータフォーマットに変換するアダプタを提供するアプリケーションです。
AMIシステムにおけるスマートグリッド・ゲートウェイ(SGG)は、図1のように位置づけられ、顧客のデータ(電力消費量のデータなど)を収集しています。
しかし、そのようなデータを収集したとしても、これまではそれらのデータを活用して、ユーティリティ業界や顧客向けにメリットを提供することはありませんでした。このようなことを解決するために、データレイカー(DataRaker)社を買収したのです。
スマートグリッド・ゲートウェイ(SGG)で異種システムを統合
─御社で開発されたスマートグリッド・ゲートウェイ(SGG)とはどのようなものでしょうか。
ビル:図1に示したように、スマートグリッド・ゲートウェイ(SGG)は、特異な仕様をもつ多彩なAMIベンダ(Itronやシルバースプリングネットワークスなど)の各AMIシステムをMDMと通信ができるように、アダプタを開発して対応しています。
また、新しく開発され市場に投入されるAMIシステムでも、MDMと通信ができるように、「アダプタ開発キット」を提供しています。これによって、顧客(例:電力会社)が独自にアダプタの開発ができるようになりました。
このようにSGGによって、スマートグリッド環境で、電力料金を支払っていない顧客がいた場合にも、電力会社はスマートメーターを遠隔から操作して、サービスの停止(オフ)を行うことができるようになりました。
これは、いろいろなAMIベンダから提供されるシステムが異種システム環境であっても、SSGにこのアダプタを導入することで、通信できるようにしているためです。