[クローズアップ]

NTTが自動デマンドレスポンス用プラットフォームを開発

― 国際標準規格OpenADR 2.0 Profile Aの認定を取得し実証実験にて展開 ―
2013/10/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

スマートコミュニティ・プラットフォームによるADRサービスのイメージ

〔1〕国際標準規格OpenADR 2.0を搭載

スマートコミュニティPFによるADRサービスのイメージは、図3と図4のとおりである。

図3 スマートコミュニティ・プラットフォーム(Ver.1.6)によるADRサービスのイメージ

図3 スマートコミュニティ・プラットフォーム(Ver.1.6)によるADRサービスのイメージ

図4 ADRのシーケンス例

図4 ADRのシーケンス例

アグリゲーションエンジンとDRエンジンはNTTコミュニケーションズのクラウド「BHEC」上注2に搭載し、早稲田大学 新宿EMS実証センターにおける日本版ADRの標準化手法の実証実験で検証が始まっている。

同プラットフォームの場合、電力会社からアグリゲータへの節電依頼などの通知は、国際標準規格であるOpenADR 2.0が使われ、さらにアグリゲータから需要家のHEMS(xEMS)までも、このOpenADR 2.0を採用している注3

スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会のデマンドレスポンスタスクフォース(経済産業省)において、表1のような7種類のユースケースが集約されているが、2013年5月15日に採択された「デマンドレスポンス・インタフェース仕様1.0版」注4では、このうちのUC-1(UC:Use Case)とUC-4のみが対象とされている。

表1 デマンドレスポンスタスクフォース(経済産業省)が集約した7つのユースケース(UC:Use Case)

表1 デマンドレスポンスタスクフォース(経済産業省)が集約した7つのユースケース(UC:Use Case)

今回のNTTのOpenADR Profile A(2.0a)の認定は、日本版ADRの実証実験用に取得したものであるが、2.0aの拡張版であるOpenADR Profile B(2.0b)についても、引き続き早期の認定を取得するとしている。注5

さらに、HEMSから家庭内の制御には国内標準プロトコルのECHONET Liteが使われている(OSGi注6上にECHONET Liteをバンドル)。ECHONET Lite対応の家電機器およびセンサー情報を収集でき、現在では、温度・湿度、エアコン、照明、テレビ、蓄電池、太陽電池などが対応できるようになっている。

ここで、DRエンジンで実際にDRイベントを生成して送り、家庭内の家電制御を行うという様子を紹介する。

DRイベントの情報がDRサーバからHEMSに送られ、家庭では、これらDRイベントの詳細を確認し、受諾するかどうかを検討(画面1)。受諾するとDRイベントが実行され、DR開始時間の10秒前に警告が出される。DRが実行された後に家庭内機器の状態や使用電力の削減状況を一覧できる(画面2)。

画面1 各家庭において、これらDRイベントの詳細を確認し、受諾するかどうかを検討。

画面1 各家庭において、これらDRイベントの詳細を確認し、受諾するかどうかを検討。

画面2 DRが実行された後の家庭内機器の一覧。

画面2 DRが実行された後の家庭内機器の一覧。

現在、一般的なDRシステムは、アグリゲータが前日に通知し、当日の朝に実施通知して昼頃に実行するというタイムスパンであるが、このシステムでは、だいたい1分単位でDRのイベント情報を送ることができる性能となっている。そのため、緊急の対応にも利用できるのが特徴だ。

今後のビジネス展開は?

NTTのDRに関しての研究開発は2011年9月から着手され、スマートコミュニティの研究開発が始まった。

現在、電力の需給調整などをはじめとするスマートグリッド周辺のビジネスは、BEMSやMEMSアグリゲータから市場が立ちあがりつつある。今後、2016年には電力の小売りも自由化され、その時期になると、各電力会社は一般家庭向けにさまざまな料金メニューやDRサービスを展開するようになると想定される。同社では、その時期をターゲットにして、研究開発を行っている。

現時点では、国内でのDR市場の規模は小さい。今後乗り越えなければいけないビジネスの課題があるとすれば、次のような2つがあると見ているようだ。

(1)電力会社から見た電源リソースとしてのネガワットの定量化

米国ではネガワットを電力取引市場で売買する仕組みができているが、国内では、国内でのDR市場の規模は小さいため、まだ追いついていない。今後、使える電源リソースとしてのネガワットをきちんと評価していく仕組みが必要となる。

(2)一般家庭に投入していく場合の設備投資

一般家庭(マスレベル)に、DRを投入していく際のインフラの整備がサービスを普及させるうえで必要となってくる。これらをどのように行っていくか仕組みづくりが必要。

* * *

先にも述べたが、早稲田大学 先進グリッド技術研究所では、新宿EMS実証センターに設備を新設し、今夏から、東京電力とアグリゲータ間で、日本版ADR標準化手法について試験的な検証を行っている注7

この検証は、横浜市、豊田市、けいはんな、北九州市の4地域実証とも連携し、順次同標準化手法の検証を行っていく計画となっている。

NTTが開発したスマートコミュニティPFはクラウドサービスの形でこの実証実験に提供され、他参加企業と協力して検証が行われる。また、EMS新宿実証センター内では複数社のDRAS間での相互接続性検証も行われる予定である。

今後の電力の自由化とともに、電力会社などの電力供給側の新サービスの登場が期待されるなか、一般家庭へのDRサービスの拡大に向けて第一歩が始まったばかりである。


▼ 注2
BHEC:NTTコミュニケーションズのクラウドサービス「Biz Hosting Enterprise Cloud」の略称。

▼ 注3
経済産業省では、国内において、電力会社とアグリゲータとの間はOpenADR、宅内においてはECHONET Liteの採用が決定されているが、アグリゲータとxEMSの間のプロトコルは、現状では各社の独自対応となっている。

▼ 注4
http://www.meti.go.jp/press/2013/05/20130515004/20130515004-7.pdf

▼ 注5
OpenADR Profile A(2.0a)は、サーモスタットなどを対象とした電力節減レベルの伝達など、比較的単純なイベントを規定したもの。一方のOpenADR Profile B(2.0b)は、ADR(自動デマンドレスポンス)サービス全般を実現するための規格である。

▼ 注6
OSGi:Open Service Gateway Initiative

▼ 注7
2013年9月9日の週に、東京電力とアグリゲータ各社の間で最初のDR通信実験が行われた。

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...