[クローズアップ]

「インセンティブ型デマンドレスポンス」が実証へ

欧米企業も参加しOpenADR2.0bが走る
2014/01/01
(水)
SmartGridニューズレター編集部

スマートグリッドのキーテクノロジーとも言われる「インセンティブ(報酬)型デマンドレスポンス」の実証がいよいよスタートする。ここでは、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業(平成25年度予算)」の第三次公募の結果、採択された6つの提案をもとに行われる実証内容を紹介する。この実証には、すでに電力の自由化が行われている欧米企業も参加し、さらにOpenADR2.0bという先進的なプロトコルが採用されるなど、スマートグリッドの新しいビジネスモデルに、大きな期待を集めている。

採択された6件の提案

東京電力をはじめ電力各社は、スマートグリッドの導入あるいは実証試験を間近に控え、どのようなサービスを提供していくか、具体的な検討が開始されている。本誌でもレポートしてきたように、例えば東京電力は、2014年4月からスマートメーターの導入を開始し、MDMSシステム(スマートメーター用運用管理システム)が完成する2015年7月から本格的にサービスを開始する。

このような背景を踏まえ、経済産業省は、このほどスマートグリッドの中核的なアプリケーションである電力の需要制御を行うデマンドレスポンス(DR)の実証について、「次世代エネルギー・社会システム実証事業注2(2013年度予算)」の第三次公募(2013年9月〜10月)を行い、表1に示す6件の提案を採択した。この執行団体はNEPC注3

表1では、6件とも東京電力が関係しているが、これは他の電力会社からの提案がなかったということ。実証の内容については他の電力会社にも共有可能となっている。また、すでに電力の自由化などが行われている欧州のEnergy Pool(仏)や、米国のEnerNOC(世界最大のアグリゲータ)なども参加しており、国際的な知見を結集した実証(2014年4月から)が見込まれている。

表1 今回採択された6つのインセンティブ型デマンドレスポンス(DR)の概要

表1 今回採択された6つのインセンティブ型デマンドレスポンス(DR)の概要

〔出所 http://www.tepco.co.jp/cc/press/2013/1232345_5117.html

求められる効率的な電力システムの構築

日本では、東日本大震災時に発生した福島第一原子力発電所の事故を契機に、原子力発電の見直し(原子力の稼働停止)などが行われている。このため、電力の供給不足が急浮上し、電力のピーク時間帯の需給ひっ迫が顕在化してきており、電力供給の在り方についての再検討が行われている。

従来は、省エネ対策を行いながら、エネルギー供給をどのように行うべきかという視点からの施策が中心であったが、今後はエネルギーの供給状況に応じてスマートに電力の消費パターンを変化させ、効率的な電力システムの構築が求められるようになった。

OpenADR2.0bを使ったインセンティブ型DR実証

まず、DRアグリゲータ注4と電力会社が、電力の需要抑制に関して契約を締結する。インセンティブ型DRの仕組みは図1の通り。

図1 インセンティブ型デマンドレスポンスのイメージ

図1 インセンティブ型デマンドレスポンスのイメージ

〔出所 http://www.meti.go.jp/press/2013/11/20131122001/20131122001.html

  1. 電力会社は、契約しているアグリゲータに対して、電力ひっ迫時に「○○kWの需要の抑制」を要請する。
  2. 要請を受けて、アグリゲータは自分の契約先の需要家(家庭や工場など)に対して△△kWの需要の抑制の要請(すなわち節電の要請)を行う。
  3. 節電に協力してくれた個々の需要家に対して、アグリゲータはインセンティブ(報酬)を支払う。
  4. 電力会社は、アグリゲータのトータルな節電分(ネガワット分)に対して契約に基づくインセンティブを支払う。
  5. このとき、電力会社からアグリゲータに対してOpenADR2.0bプロトコルに基づいた信号が送信され使用される注5

インセンティブについては、本来は電力会社が支払うが、今回は実証実験のため国の補助金から支払われる。このとき、電力会社がどれくらいのインセンティブを支払えばアグリゲータはビジネスになるか、などの検証も行われる。国の事業費全体の予算は約20億円で、そのうち補助金は10億円程度である。

今回の実証では、その有効性に関して、経済性を含めて調査・分析を行うことになった。表2に、電気料金型DRとインセンティブ型DRの違いを示す。

表2 デマンドレスポンス(DR)のタイプと特徴

表2 デマンドレスポンス(DR)のタイプと特徴

TOU:Time of Use CPP:Critical Peak Pricing

このようなDRによって、ピークの電力需要が平準化でき、電力会社は予備率(電力需要に対する発電設備の余裕度)を改善できるなど設備投資を削減できることになる。

2013年度は実証実験に必要なシステム開発や構築等を行い、2014年度から本格的に実証を行う予。この実証を通じて、DRの価値を適切に評価する土台が整備されていくことが期待されている。


▼ 注1
OpenADR2.0b:ADR(自動デマンドレスポンス)サービス全般を実現するための規格。OpenADR2.0aがサーモスタットなどを対象とした電力節減レベルの伝達など、比較的単純なイベントを規定したものに対して、高度な仕様を実装したシステムへのイベント通信が可能。

▼ 注2
第1次公募:スマートコミュニティ4地域社会実証(横浜市、豊田市、けいはんな学園都市、北九州市):電気料金型DRの実証実験(表2参照)
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000128666.pdff
第2次公募:DRビジネスの環境整備に向けた社会システム実証の調査・評価(東京大学)

▼ 注3
NEPC:New Energy Promotion Council、新エネルギー導入促進協議会。
http://www.nepc.or.jp/

▼ 注4
DR(デマンドレスポンス)アグリゲータ:複数の需要家(家庭や工場、事業所など)を束ねて、デマンドレスポンス(報酬の支払いなどによって、電力の消費パターンを変化させること)による需要抑制量を電力会社と取引する事業者のこと。

▼ 注5
このOpenADR2.0b信号は、早稲田大学内に設置されDRなどの実証実験を行っている「EMS新宿実証センター」から擬似的に送られる。それをアグリゲータが受けて、需要家に指令(要請)を流す仕組み(EMS:Energy Management System)。

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