[クローズアップ]

PG&Eの自動デマンドレスポンス・インセンティブプログラムが間もなくスタート!

2013/09/01
(日)

去る7月30日、「Automated Demand Response (ADR) Vendor Update」と題するワークショップが、サンフランシスコのPG&E Energy Service Center において開催された。これは、カリフォルニア州の3大私営電力会社の1つであるPG&Eで来年度新たに開始される、OpenADR 2.0ベースの自動デマンドレスポンス(ADR)のインセンティブプログラム(参加奨励制度)のベンダ向け説明会であった。ここでは、今回ワークショップで説明されたPG&EのADRインセンティブプログラムの紹介とともに、このプログラムへの参加者向けにPG&Eが提供するDRプログラムの概要を説明し、さらに、PG&EがADRを実運用するにあたって非常に重要な役割を果たすDCT(DRAS Client Technician)について紹介する。

写真1 ワークショップが開催された建物

写真1 ワークショップが開催された建物

ADRインセンティブプログラムとは何か?

自動デマンドレスポンス(ADR)を実施するためには、DR(デマンドレスポンス)サーバとDRクライアントで共通のプロトコルを用いる必要がある。

PG&Eでは以前からADRを実施しており、それにはOpenADR 1.0が使われてきた。今回PG&Eは、OpenADR 2.0対応とすることを決定したので、DR資源提供者側もOpenADR 2.0対応でなければ、ADRが実施できないことになる。このADRクライアントの候補としては、OpenADR 2.0対応のBEMS注2であったり、スマートサーモスタットであったりするが、それらの新製品を購入し、PG&Eとの間でADRを新たに実施しようという参加者に、参加奨励費(インセンティブ)として一定の資金援助を行おうというのが、今回PG&Eが開始するADRインセンティブプログラムである(表1参照)。

表1 ADRプログラムインセンティブの種類

表1 ADRプログラムインセンティブの種類

ところで、PG&EのDRプログラム参加者の多くは、今でもDRイベントの通知に対して手動で負荷削減を行う「手動型DR」が大半を占めている。また、メール等でのDRイベント通知を受け、あらかじめ設定しておいた手順でBEMSなどが関連機器の負荷削減を行う半自動型DRのユーザーもいる。

参加資格と参加時期

今回の説明会では、PG&Eとしては、従来のOpenADR 1.0プロトコルを利用したユーザーにOpenADR 2.0への移行を強制するものではなく、新たにPG&EのDRプログラムに参加するユーザーの中で、ADRが可能な設備機器をもっている場合にADR参加奨励費を出すということである。

少なくとも過去1年間でPG&EのDRプログラムに参加していなかった、新たにADRに興味をもつユーザーのみに、これらのADRインセンティブプログラムへの参加資格が与えられている。

基本的には、ADRクライアントとしてOpenADR 2.0の認証を受けていることがインセンティブプログラム参加の必須条件であるが、半自動型DRの場合は、省エネ機器を使うことが条件とされており、参加希望者は2014年1月末までに申し込む必要がある。

このインセンティブプログラムは、2014年夏のADR新規参加者を対象としたもので、参加申し込みを行い、接続テストに合格した段階で、前出の表1に基づく参加奨励金の60%が支払われ、残りの40%に関しては、2014年10月末時点で実際にどれほどADRが貢献できたかに基づいて、適切な額が支払われる。

表1中、先進技術(原文では、Emerging & Advanced Technology)の意味するものは、CA ETCC(California Emerging Tech-nologies Coordination Council)で高く評価されたもの、あるいはそれに相当する技術、最新無線技術、ゾーンごとに制御可能なスマートサーモスタットなどである。

なお、ADRインセンティブプログラム参加者は、後ほど紹介する、PG&Eが提供する4つのDRのいずれかに参加することという条件になっている。「最初の1年は、登録したDRプログラムを変更することができず、2年目以降別のDRプログラムに変更することも可能だが、最低3年間DRプログラムに参加すること」が義務付けられている。

ADRインセンティブプログラム
参加者向けのPG&EのDRプログラム

ここで、今回PG&Eが開始するADRインセンティブプログラムへの参加者が利用可能な、4種類のDRプログラムについて、以下に簡単に説明する。

〔1〕CBP:Capacity Bidding Program(容量入札プログラム)

祝日を除く夏季(5月1日〜10月30日)のウィークデーの11時〜19時に供給力不足が予測された場合、負荷削減に応じることのできる商工業および農業の大口需要家向けのDRプログラム。

月末に翌月分の入札が行われ、落札者には、実際、当該月に電力調達が行われるかどうかにかかわらず、負荷削減可能量(kW)と負荷削減継続時間に応じた額が支払われる。支払われるkW単価は、当該イベント通知が、前日か、当日2時間前あるいは当日45分前かによって異なる。

当該DRイベント発生時に、入札時に指定した容量の負荷削減ができない場合は、ペナルティが課せられる。

〔2〕DBP:Demand Bidding Program〔(削減可能な)負荷入札プログラム〕

年間を通して、PG&Eが必要としたときに連続2時間10kW以上の負荷削減が可能な需要家向けのDay-Ahead型注3DRプログラム。

DRイベント発生時に、入札時に指定した負荷削減量を守れなくてもペナルティは課せられない。入札時の負荷削減可能量に対して50〜150%の間の負荷削減量を達成したら、kW単価に応じた報酬が支払われるが、50%より以下、あるいは150%より以上の負荷削減量に関しては、対価が支払われない。

〔3〕PDP:Peak Day Pricing(ピーク日料金)

このDRプログラムに参加する需要家には、祝日を除く夏季(5月1日〜10月30日)のウィークデーの14時〜18時で、年間9〜15回、特に供給力不足が予測される日(Peak Day Pricing Event Day)には、通常のOn-Peak料金よりさらに高い電気料金(Peak Day Pricing)が適用される。

現時点では商工業および農業の大口需要家向けのDRプログラムとなっているが、2014年11月以降、一般家庭や低圧顧客にも範囲が広げられる。

このDRプログラムに参加した需要家には、どれだけ負荷削減できるか(kW)に応じてSummer On-Peak demand credit($/kW)が支払われる。

〔4〕AMP:Aggregator Managed Portfolio(アグリゲータ管理プログラム)

DRアグリゲータが顧客の需要を束ねて、PG&EにはないDRプログラムを提供するもので、アグリゲータによって内容が異なる。PG&E管内のDRアグリゲータとしては、次の5社がある。

  1. Alternative Energy Resources, Inc. (Comvergeの子会社)
  2. Constellation Energy
  3. Energy Connect
  4. Energy Curtailment Specialist, Inc.
  5. EnerNOC, Inc.

▼ 注1
PG&E:Pacific Gas & Electric Company

▼ 注2
BEMS:Building Energy Management System、ビル用エネルギー管理システム。

▼ 注3
Day-Ahead型:DRイベント開催通知を1日前に行うタイプ。

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