日本オラクルの電力業界向けシステムの新しい取り組み
〔1〕国内の電力システム改革を推進
日本オラクル(表1)が、日本の電力業界システムへ向けて新たな展開を開始した。
表1 日本オラクルのプロフィール
日本政府が推進する「電力システム改革」では、「安定供給の確保」「電気料金の最大限の抑制」「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」を目的として、次の3本柱からなる改革を行うこととしている。注2
- 広域系統運用の拡大(2015年を目途)
- 電気の小売業への参入の全面自由化(2016年を目途)
- 法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保、電気の小売料金の全面自由化(2018〜2020年を目途)
日本オラクルは、政府が掲げた3本柱のうち、特に「小売および発電の全面自由化」と「発送電分離」の分野に焦点をあてて、国内における「電力システム改革」を推進する(図1)。
図1 電力システム改革の三本柱と改革のためにITが重要な領域
これはオラクルが、北米・欧州・アジア地域における電力自由化やそれにともなう発送電分離のほか、スマートグリッド・プロジェクトなどで培ったノウハウと実績を生かして、電力・エネルギー会社、新電力参会社、官公庁、自治体などへの情報システムの提案力を強化するというものだ。
〔2〕オラクルのITソリューションで電力システムのイノベーションを加速
現在、国内の電力業界はパラダイムシフトの真っただ中であり、
- 「公平で自由な電力プラットフォームの確立」
- 「小売・発電の全面自由化」
- 「再生可能エネルギーや非化石エネルギーへのシフト」
というような大きな流れがこれから始まろうとしている。そのようななかで、電力供給システムのイノベーションが起こり、特に「小売および発電の全面自由化」あるいは「発送電分離」の分野においては、電力業界はこれまでと違って大きく変わっていくことが予想されている(図2)。このイノベーションを加速させるためにはITはもはや不可欠である。
図2 日本の電力事業のパラダイムシフトとイノベーション
具体的には、「小売および発電の全面自由化」では、スマートメーターの導入や、多彩な料金メニューの作成などをしていかなければならない。
さらに、今後、日本全体で8000万世帯もの需要家情報がスマートメーターを通して収集されることになるが、これらの管理をどう行っていくのか。またはスマートメーターデータは一体誰のものなのか、配電側(電力会社等)のものなのか、小売事業者側(サービス会社等)のものなのか、はたまた需要家(一般家庭等)のものなのか、といったようなデータ管理の議論(知的財産権の問題)もおこっている。
とくに、これまでの電力会社の料金系システムは、莫大な投資をし、かつ大きなシステムである。オラクルは、そのような料金システムをどのように変えていくのかという点において、ITが重要な役割をすると考えている。当然スマートメーターに関しても、収集した料金データを処理するために、ITなしではその処理は成り立たない。
また、「発送電分離」において重要となるのは、業務の効率化によるコストダウンである。電力の自由化時代を迎えると、各電力会社で激しい競争が行われることになるが、競争するためにはコストを下げていく必要があり、さまざまな効率化やコストダウンのためにもITは必要である。これらを実現するためには、オラクルの製品あるいはソリューションを活用することによって、かなりの部分がITを利用して実現することができ、人を介在しないシステムを実現できるという多くのノウハウがある。
海外におけるオラクルの電力の自由化や発送電分離の経験や学び、あるいは事例およびソフトウェア、ハードウェアベンダとしてのオラクルのITソリューションによって、日本の電力システムのイノベーションを加速させていきたい、という点が、今回のオラクルの発表の原点となっている。
▼ 注1
2013年4月25日に発表したニュースリリース:http://japanmediacentre.oracle.com/content/detail.aspx?ReleaseID=2898&NewsAreaId=2
▼ 注2
電力システムに関する改革方針(経済産業省 資源エネルギー庁 平成25年4月2日発表資料):http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130402001/20130402001-2.pdf