蓄熱槽を含む多彩なエネルギーリソースを活用したVPPの構築
〔1〕需要家側のエネルギーリソースを統合的に制御
前出の表1に示す、アズビル、東京電力EP、三菱地所設計、明治安田生命保険相互会社、日本工営の5社は、高度なエネルギーマネージメント技術によって、需要家側のエネルギーリソースを統合的に制御することで、VPPの構築を図る。
表1 日本で推進されているVPP構築事業の一覧
出所 http://www.iae.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/08/vpp_a_20160729.pdf
具体的には、地域冷暖房や業務用ビルの蓄熱槽注5を活用し、PV(太陽光発電)による系統への影響を抑制する技術の実証を行う。また、複数の建物による需要電力の平準化を実現する技術に関して、高度なエネルギーマネージメント技術の適用を実証する。
これらの実証を通じて、業務用ビル全般にわたって、多彩なエネルギー・リソース・アグリゲーションによるネガワットの創出技術の開発とエネルギーリソースを供給力、調整力等として活用するビジネスモデルを構築する。
〔2〕実施体制と役割分担
蓄熱槽DR(デマンドレスポンス)の知見および実証サイトを、東京電力EP、三菱地所設計が提供し、最適な蓄熱槽の運転方法などをまとめる。複数建物による需要電力の平準化技術などを明治安田生命が実証し、料金制度などについて、各社が検討を行う。日本工営はPV、蓄電池を提供し最適制御を検討する。
さらに、東京電力EPとアズビルは、リソースアグリゲータとしての役割を担うとともに、蓄熱槽運用方法や市場での調整力としての評価などを実施する。すべてのエネルギーリソースのアグリゲーションインフラをアズビルが提供し、各社の知見を踏まえシステムの実運用化を図る(図2)。
図2 IoTにより需要家側のエネルギーリソースを統合的に制御してVPPを構築
出所 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/004_02_03.pdf
IoTとビッグデータを活用したVPP実証事業
〔1〕VPPサービススキームの検証
エネルギー情報業注6を営んでいるエナリスを幹事企業とする6社(表2)は、コンソーシアムを結成し、IoTとビッグデータを活用して、アグリゲータを中心としたVPPサービススキーム(サービス計画やその仕組み)の検証を行う。図3に6者の役割を示す。
表2 実施体制と各社の役割
図3 VPP実証事業における6者の役割分担
DR:Demand Response:デマンドレスポンス、電力の需給管理
出所 http://www.eneres.co.jp/pr/20160729.html
また、今後普及拡大が見込まれる太陽光発電と蓄電池の創蓄連携システムのアグリゲーションの共通規格化、電気自動車をエネルギーリソースとして活用するためのシステム開発なども開始している。なお、実証事業の実施場所は、高圧需要家は東京、中部、関西の地域で、低圧需要家は東京、中部、九州地域で行われている。
〔2〕今後の展開:2020年までに50MW以上のVPPを
この事業は、経済合理性に合わないピーク用電源への投資の抑制や、風力発電も含めた再エネの拡大にも貢献できる。また、IoTを活用する本事業の取り組みは、IoTや人工知能(AI)、ビッグデータなど、最新技術の先進的な活用例として、今後、新産業の創出を促すものと期待されている。
2020年までに、50MW以上のVPPの構築を目標に取り組まれている。
▼ 注5
蓄熱槽:蓄熱のための熱媒体を貯める設備のことで、例えば、暖房用温水、冷房用冷水を一時貯えるための水槽のこと。
▼ 注6
エネルギー情報業:電力が流通するプロセスにおいて偏在するエネルギー情報を管理、提供することで、これまでエネルギーを自由に取引できなかった電力の需要家が、最適な電源や電力会社の選択を可能にする事業。