IBMのSmarter Planetとスマーター・シティー
1911年に創立されたIBM(International Business Machines Corporation)は、総売上高が2013年で998億ドル、その主な事業の内訳は、(1)開発コンサルテーション、保守と呼ばれる人員サービス、(2)ハードウェア、(3)ソフトウェア、(4)その他金融、ファイナンス関係、などとなっている。
日本アイ・ビー・エムは今年(2014年)で76年目を迎え、2012年度の総売上高は8,499億円、米国よりもサービス分野の割合が高くなっており、ハードウェア、ソフトウェアの割合よりも、システム開発あるいはコンサルテーション、アウトソーシング領域の割合が多くなっている(図1)。
図1 IBMのプロフィール
このようなグローバル企業であるIBMは、スマートグリッドやその他の社会インフラ分野で、どのような取り組みをしているのだろうか?
ここではまず、同社の掲げる「Smarter Planet」ビジョンについて見ていく。
Smarter Planetとは?
「Smarter Planet」とは、IBMが2008年から提唱しているビジョンで、世界の在り方や、すべての人々、企業、組織、政府、環境および人間が作り出した仕組みなどが相互にかかわっていくことにより、今までにない“Smart”さ(賢さ)をもたらすことを表している。これまで、コンピュータをベースにして企業向けのビジネスを展開していたのを、社会システムを取り扱い、社会インフラの中でコンピュータを生かしていこうということである。
図2は「Smarter Planet」を表したものである。「機能化」(INSTRU-MENTED)、「相互接続」(INTERCONNEC-TED)、「インテリジェント化」(INTELLI-GENT)があり、この3つがSmarter Planetを構成するコンポーネントである。
図2 IBMが提唱するSmarter Planet
「機能化」とは、さまざまなハードウェアが高機能なセンサーになり、情報を発信することである。例えばスマートグリッドの世界でいえば、EV(電気自動車)や太陽光のパネル、スマートメーター、HEMSなどから、データを収集して取得することである。
Smarter Planetはスマートグリッドに限らず、交通(の流れ)や人(の流れ)を見たり、ヘルスケアやソーシャルネットワークを対象にしている。現在ではスマートフォンやタブレット端末などの急速な普及によって、大量なデータが(ネットワーク上で)往来しているので、それらのデータを捕捉して(機能化)、ばらばらに垂直統合させるのではなく相互接続をして、そこから新しい知見を出していく(インテリジェント化)というところを目指している。
インテリジェント化を行っていく場合には、例えばIBM Watson注1のような形で、人間がモデルをつくるのでは間に合わなくなってきているため、機械が、流れてくる大量なデータをそのまま処理して、次のアクションをとっていくということを実施しているようなところがある。
▼ 注1
IBM Watson:IBMのコンピュータ。1997年にチェスの世界チャンピオンとコンピュータ(Deep Blue)が対戦して破るという話題があったがこれに次ぐコンピュータ。2011年には、実際のクイズ番組に、音声応答も含めて人口知能として参加し、クイズ王2人とともに、司会者が出すクイズ問題をその場で解いて答え、クイズ王に勝利した。これは言語認識や機械学習技術によって実現できたもので、このような技術を、クラウドを含めて開示していくことによって、人間ができるようなことが代替可能になる。