[特集]

IBMの新電力ビジネス戦略!規制緩和後の新しい展開と課題 ≪後編≫ ─ 新事業者登場のタイミングと新サービスの登場 ─

2014/04/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

【インプレスSmartGridニューズレター 2014年4月号掲載記事】すでにスマートグリッドをはじめとする社会インフラ分野のビジネスを展開しているIBMの豊富な経験から、電力規制緩和後の新電力ビジネスの可能性と課題について見ていく。後編では、電力の規制緩和後に誕生が想定される新電力ビジネス分野を挙げ、海外事例を参考に成功するための課題、IBMが日本で提供しているソリューションを見ていく。さらに、新しいビジネスである「再生可能エネルギーの予測技術」の取り組みについても紹介する。なお、本記事は、日本アイ・ビー・エム株式会社 スマーター・シティー事業 スマートエネルギーソリューション部長 川井 秀之氏への取材をもとにまとめたものである。

規制緩和と新電力ビジネス

〔1〕通信/金融ビッグバンからエネルギービッグバンへ

現在、電気事業法の改正が進んでおり、2015年(広域的運営推進機関の設置)、2016年(電力小売参入の自由化)、2018〜2020年(送配電部門の法的分離)の3段階で規制緩和が実施される予定である。

これまで、日本国内で起きている規制緩和で大きなものは「通信」と「金融」などがある。90年代後半に、電気通信関連三法案による通信ビッグバンによってNTTの分離分割、また金融システム改革法による金融ビッグバンによって、銀行・保険・証券の参入促進が進められ、通信業界や金融業界においては、

  1. 異業種の参入や競争の激化(淘汰)
  2. 商品の多様化
  3. 消費者視点において選択できるサービスの誕生

といった事象が発生している。

そして、2016年の電力小売の全面自由化、2018年以降の発送電分離などという電力規制緩和によっても、新たなビジネスの登場が考えられる。いわば、エネルギービッグバンとも言える新しい局面を迎え、

  1. 新たに発電事業を実施したり、電力小売事業を実施する新規ビジネス
  2. 電力供給だけではなく、電力に関連した新規ビジネス

など、今まで想像もつかないビジネスの誕生が予想されている。

現在の延長のビジネスモデルで進んでいくのか、もしくは前編(2014年3月号)で説明したような「参加型ネットワーク」注1をベースにした新しいサービスや商品が登場するのかは、今後の規制緩和内容の決定が大きく影響する。「規制緩和を予定どおり実施した」ということも重要ではあるが、例えば、電力小売の全面自由化により2018年には消費者が選択できるエネルギー商品が現在よりも20%増加する、といった数値目標や達成時期を明記することも重要ではないかと考えられる。

〔2〕電力システム改革スケジュール

図1は、平成25年2月15日経済産業省の電力システム改革専門委員会報告書の工程表である。

図1から第1段階の広域系統運用機関の設立(2015年)とともに、2016年の電力小売全面自由化に向けて卸電力市場活性化や、1時間前市場の整備が進められていく。そして、2016年には電力小売自由化が実施される。

すでに規制緩和が行われている海外では、さまざまなビジネスが誕生しており、既存の電力会社がビジネスを実施するだけでなく、異業種の企業が参入している例もある。

図1 電力改革システムの工程表図1 電力改革システムの工程表
〔出所 経済産業省、「電力システム改革専門委員会(2月8日)資料」、http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/report_002_01.pdf

図2は、海外事例から見た新エネルギービジネスの誕生の想定図である。海外ではすでにさまざまなビジネスを実施するプレイヤーが存在している。ここには、規制緩和後に日本で起こるであろうエネルギーの利用シーン(ユースケース)を想定し、その利用シーンを実現するプレイヤー案を記載している。図2の右側は、日本ですでにビジネスを進めているプレイヤーや、日本ではまだ実施されていないが海外ではすでにビジネスを進めているプレイヤーを、8項目に分類して取りまとめている。

図2 海外事例から新エネルギービジネスの誕生を想定図2 海外事例から新エネルギービジネスの誕生を想定

例えば、3番目にあるようなアンシラリーサービス注2事業者や、4番目の電力の市場予測ビジネス、あるいは電力ブローカーなどが登場してくると、発電装置をもたなくても電力供給ができるような社会が登場してくることもあるのではないだろうか? さらに、7番目にあるようなスマートメーターを管理するだけの企業や、スマートメーターからの電力使用量(指示値)を管理しながら、それを債券として販売していくような「メーター to キャッシュ」事業など、さまざまなプレイヤーが考えられ、日本においても規制緩和後に新しいビジネスが登場してくると考えられる。

〔3〕新規事業者の登場のタイミングと開始準備は?

2016年の自由化までには残り2年となっており、その準備のためにフィールドテストを1年間行うとするとフィールドテストの開始時期は2015年となる。それまでに事業計画や営業戦略、組織体制、料金やデマンドレスポンスなどのシステム開発が必要である。今年(2014年)どこまで実施できるかが、キーポイントになってくる。

新しいビジネスが今後登場してくることが想定されることは述べたが、ビジネスによってはすでに異業種の参入が実施されていたり、自由化に向けた新電力の設立を検討したりしている企業が出てきている。すでに検討を開始している企業は、基本計画策定などに取り掛かっているが、IBMでは海外において実際に利用されているソリューションを提供し、企業(顧客)の成功を支援している。


▼ 注1
参加型ネットワーク:IBMが予想するエネルギー業界におけるモデルの1つ。新たな技術がエネルギー会社と消費者双方に提供され、消費者との連携による新たなサービスや商品が開発されるというモデル。

▼ 注2
アンシラリーサービス:電力事業の主たるサービスである電力の安定供給のためのサービスであるが、近年、ネガワットやデマンドレスポンスなどのサービスも含めた事業を言う。アンシラリー市場の検討を実施する国もある。

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