[特集]

「最新バージョン1.0.2」に基づくLoRaWANのプロトコル構成とケーススタディ

― いよいよ日本でもLPWA「LoRaWANサービス」が開始へ ―
2017/01/06
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

LoRaWANのネットワーク構成と通信の仕組み

 次に、LoRaWANのネットワーク・トポロジー(網構成)と、このネットワークに接続されているデバイス(例:センサー)とサーバ間の通信の仕組みを見てみよう。

 LoRaWANネットワークは基本的にスター・スター(Star- of -Star)構成である(拡張スター型トポロジーとも言われる)注9

 図5に、LoRaWANネットワークにおけるセンサー(デバイス)とネットワークサーバの通信の仕組みを示す。

図5 LoRaWANにおけるセンサーとネットワークサーバの通信の仕組み

図5 LoRaWANにおけるセンサーとネットワークサーバの通信の仕組み

HAL:Hardware Abstraction Layer、ハードウェア抽象層。ハードウェアの機種に依存せずにアプリケーションを実行できるようにする層
SPI:Serial Peripheral Interface 、物理層(PHY)のトランシーバチップと通信を行うインタフェース
IPスタック:LANをインターネットに接続するために必要なプロトコルセット(組み合わせ)のこと
出所 https://www.lora-alliance.org/What-Is-LoRa/Technology

 図5に示すように、LoRaWANネットワークに接続されたセンサーとサーバ(ネットワークサーバ)間の通信は、

(1)センサーとサーバが直接通信(暗号化通信)を行うケース

(2)センサーが、パケット転送を行うゲートウェイを経由して、セキュアなバックホール回線(中継回線:例えばIPネットワーク)に接続されているサーバと通信(暗号化通信)を行うケース

という2通りが可能となっている。

LoRaWANにおける暗号化とセキュリティ

 図5に示した、LoRaWAN環境における通信の暗号化とセキュリティについては、例えば、次のようなことが規定されている。

〔1〕ネットワークセッションキー(NwkSKey)

 エンドデバイス(例:センサー)固有のネットワークセッションキー(ネットワークを識別するためのキー情報)としてNwkSKeyが規定されている。

 データの整合性を保証するには、すべてのデータメッセージのMIC(Message Integrity Code、メッセージ完全性コード注10)を計算して検証する必要があるため、ネットワークサーバとエンドデバイスの両方で使用される。さらに、MAC専用のデータメッセージのペイロード(送受信するデータ)を暗号化および復号するためにも使用される。

〔2〕アプリケーションセッションキー(AppSKey)

 エンドデバイス固有のアプリケーションセッションキー(アプリケーションを識別するためのキー情報)としてAppSKeyが規定されている。

 これは、アプリケーション固有のデータメッセージのペイロード(送受信するデータ)を暗号化および復号するために、アプリケーションサーバとエンドデバイスの両方で使用される。

 なお、暗号化にはAES-128注11が使用されている。

LPWA:LoRaWANの導入事例

〔1〕ソフトバンクの導入イメージ

 LoRaWANの導入例については、本誌2016年11月号でフランス・ブイグテレコムの事例を紹介したが、ここでは、今後日本で提供されるソフトバンクのLoRaWANサービスのイメージについて紹介する。

 ソフトバンクは、2016年9月12日、LPWAネットワークを活用したIoTソリューションの第1弾として、デバイスからアプリケーション、コンサルティングに至るまでエンド・ツー・エンドでのIoTソリューションを2016年度中に提供することを発表した。

 同社は通信事業者として、図6に示すように、既存の3G/LTEやWi-Fi、固定通信など総合的なネットワークサービスに加えて、これらと連携したIoT分野に最適な「LoRaWAN」およびそれを活用したIoTソリューションを提供する。さらに、商業施設、ビル、倉庫などの設備監視・制御やトラッキング、ガスや水道メーターの自動検針、高齢者や子どもの見守り、道路、トンネル、線路などのインフラ監視、車、トラック、バスなどによる物流とその運行管理など、低コスト・低消費電力のネットワーク構築が求められる分野において、IoT環境を実現していく。

図6 ソフトバンクが提供するIoTネットワーク「LoRaWAN」(LPWA)の位置づけ

図6 ソフトバンクが提供するIoTネットワーク「LoRaWAN」(LPWA)の位置づけ

出所 http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20160912_01/

 今回の発表は、通信事業者であるソフトバンクが、本格的なIoT時代の到来に向けて、3GPP標準のLPWAであるCat-M1、NB-IoTへと続く一連のLPWAネットワーク環境に対応できるよう、LoRaWANを先行的に提供開始する。


▼ 注9
LoRa Alliance Technology:https://www.lora-alliance.org/what-is-lora/technology、LoRaWANでは、スター・スター構成であり、基本的にメッシュネットワークは作らない。

▼ 注10
メッセージ完全性コード:メッセージの内容が改ざんされていないことを保証する仕組み

▼ 注11
AES:Advanced Encryption Standard、DES(Data Encryption Standard、データ暗号化の標準)に代わる新暗号化標準。DESの後継として米国国立標準技術研究所(NIST)によって、2002年にその改訂版として制定された新しい暗号化規格(共通鍵暗号方式)。鍵長は128ビット、192ビット、256ビットの3種類(AES-128、192、256)あるが、「AES-128」が最もよく利用されている。

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