[特集]

公開された丸紅/エナノック・ジャパンによるディマンドリスポンス(DR)の実証事業

― 九州電力管内ではVPPの商用サービスを開始へ ―
2017/06/14
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

日本でも2017年4月1日から、ネガワット取引が始まり、DR(注1)事業への関心が高まっている。同時に、このネガワット(節電電力)をベースにしたVPP(仮想発電所)の商用運用サービスが九州電力管内で、エナノック・ジャパンによって開始され、注目されている。
ここでは、2013〜2016年度の4年間、継続して政府のバーチャルパワープラント(VPP)構築事業費補助金によるDR実証事業を実施してきた、丸紅/エナノック・ジャパンの実証内容(2017年4月公開)をレポートする。なお本原稿は、エナノック・ジャパン(株)取締役 最高執行責任者 内田 明生(うちだ あきお)氏への取材をベースにまとめたものである。

VPPサービスを開始したエナノック・ジャパン

 世界最大規模のDR事業を展開するEnerNOC, Inc.(表1)の日本法人であるエナノック・ジャパンは、九州電力が2016年秋に公募した電源I’厳気象対応調整力注2において落札し、2017年4月1日から九州電力管内でネガワット取引を開始した。

表1 エナノック(EnerNOC)のプロフィール(敬称略)

表1 エナノック(EnerNOC)のプロフィール(敬称略)

出所 各種資料より編集部作成

 その仕組みを図1に示すが、エナノック・ジャパンは、DRアグリゲータとして一般送配電事業者(図1左。この場合:九州電力)とネガワット契約を締結する一方、個別にネガワット契約を結んでいる商工業需要家(図1右)からのネガワット(節電電力)を仲介して、一般送配電事業者にネガワットを提供する。

図1 ディマンドリスポンスの契約スキーム(調整力公募の場合)

図1 ディマンドリスポンスの契約スキーム(調整力公募の場合)

出所 エナノック・ジャパン資料、2017年5月26日

 このようなネガワット取引は、本年4月1日から運用が開始され、今後の市場拡大が見込まれている。政府は2030年度までには、先行的にネガワット取引が普及している米国と同水準(最大需要の6%)のネガワット活用を目指している。

EnerNOCのDRに関するプラットフォーム

 EnerNOCは、図2に示すEnerNOCのプラットフォーム(①ESS、②EIS、③NOCという「3つのDR事業ツール」で構成)によって、持続的で信頼できるDRの履行、リアルタイムのパフォーマンス計測や評価を可能にしている。

図2 エナノックのプラットフォーム(3つのDR事業ツール)

図2 エナノックのプラットフォーム(3つのDR事業ツール)

出所 エナノック・ジャパン資料、2017年5月26日

〔1〕ツール①:ESS(ゲートウェイデバイス)

 図2(1)に示すESS(EnerNOC Site Server)は、EnerNOCのネットワークと各需要家(ビルや工場など)を、PowerTalk(XMPPを用いた通信プロトコルの一種注3)を通じて通信可能とするためのゲートウェイデバイスである。

 このクラウドベースのESSは、需要家に、ほぼリアルタイムに電力使用状況を可視化して伝えることが可能で、NOCを通じて、遠隔操作によって電力の需要削減(ネガワット)をすることが可能となっている。

 また、BEMS(ビルエネルギー管理システム)や工業制御装置、FEMS(工場エネルギー管理システム)と連携することも可能となっている。

〔2〕ツール②:EISソフトウェア

 図2(2)に示すEIS(Energy Intelligence Software)は、専用クラウドによるエネルギー管理プラットフォーム(日本語化対応済み)であり、エネルギーの使用状況をモニタリング(監視)し、エンドユーザーに需要コントロールを可能とさせるソフトウェアである。

 EISは、電力会社とエンドユーザーにモニタリング(および電力の削減指示)のためのWebページ(ポータル)を提供するが、これはスマートフォン用のOSである、iOSやAndroid上でも稼働可能となっている。さらに、電力会社のコントロール室とSCADA/RTU注4を、Webサービスを通じて統合することも可能となっている。

〔3〕ツール③:NOC(ネットワーク運用管理センター)

 EnerNOCのNOC(Network Operation Center)は、米国のボストンおよびサンフランシスコ、オーストラリアのメルボルン、ドイツのミュンヘン、韓国のソウルの5カ所で、24時間365日体制で稼働中である。このNOCおよび前述したESSの通信プロトコルは、国際標準のOpenADRプロトコルに対応している。

 また、冗長性(バックアップ体制)をもつデータセンターが、国をまたいで複数稼働しているのも大きな特徴である。


▼ 注1
DR(Demand Response):需要と供給のバランスを取るために、電力会社からの指令に基づき、事前の契約に基づいて一時的に需要削減を行うこと。

▼ 注2
電源I’厳気象対応調整力:厳気象(猛暑/厳寒)時の最大電力需要に対して不足する恐れがある電力の供給力を、一般送配電事業者が調整力(電源Ⅰ’)として確保する電力のこと。

▼ 注3
XMPP:eXtensible Messaging and Presence Protocol、IM(インスタントメッセージ)ソフトなどに使われるXMLベースのオープンソース・プロトコル。IETFのRFC 6121標準などになっている

▼ 注4
SCADA:Supervisory Control And Data Acquisition、産業用監視制御システム。コンピュータによるシステム監視やプロセス(製造工程)制御を行うシステム。
RTU:Remote Terminal Unit、遠隔監視制御装置

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