DR実証事業の内容
〔1〕高速DRを実証
この実証事業では東京電力、中部電力、関西電力管内で、クラウドベースのDRアプリケーション「DemandSMART」(EnerNOCの実績のあるDRエネルギー管理システ
ム注5)によって、商業および工業需要家を対象とした高速DRを実証した。
高速DR(Fast DR)とは、電力系統の信頼度を維持するために、一般送配電事業者(東京電力、中部電力、関西電力など)から需要家、あるいはDRアグリゲータへの通告時間が短く、自動的にかつ迅速に(ほぼ10分未満で)応答する必要がある場合に使用されるDRのことである。
〔2〕月間最大23ユーザーにDR指令を発令
本実証では、前述したように、DR通知時間が10分前、1時間前、4時間前のプログラムに取り組み、月間最大23ユーザー(月毎の最大ネガワット:約39.3MW)にDR指令を発令した(表3)。
表3 東京電力、中部電力、関西電力管内におけるDRプログラム実証内容
2016年度におけるDR実証事業全体の成果と課題
今回公開された報告書では、DR実証事業の課題とその解決方法、解決のための具体策などについて、表4のようにレポートされた。
表4 2016年度におけるDR実証事業全体の成果と課題
※同等日採用法:DR発動時間を除く時間帯の過去30日間の需要データのうち、発動日との差が最も小さい非発動日3日間(=同等日)の平均による算出法
出所 https://www.iae.or.jp/download/b-1-9vpp/?wpdmdl=9006
今後の展開:本格的なVPP時代の到来
2013年度から4年間にわたって実証事業が行われてきた「高度制御型ディマンドリスポンス実証事業」を背景に、新しいビジネスが展開され始め、日本のエネルギー市場は大きなパラダイムシフトの時代を迎えている。
経済産業省の“エネルギー革新戦略”に記載されているように、政府は2030年度までには、最大需要の6%のネガワット活用を目指している。
地球温暖化防止だけでなく、日本のエネルギーの自給率を高める側面からも、このような新しい動きに注目したい。
▼ 注5
EnerNOCは、同システムによって、世界11カ国において合計約7,000MWの商業ベースのDR容量を管理中である。