ソニーのLPWAのシステム構成
〔1〕プライベートとバブリックの両方に対応可能
図4は、ソニーのLPWAシステムの全体的な基本構成(イメージ図)である。このLPWAシステムは、2017年8月末からPoCキット(価格は未定)として提供される予定である
図4 ソニーのLPWAシステムの全体構成(LPWA PoCキットとして提供される)
出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月
図4からわかるように、ソニーのLPWAは、キャリア型のパブリック網(公衆網)をベースにするSIGFOX型のLPWAと、プライベート網(企業網)をベースとするLoRaWAN型のLPWAの両方に対応できるLPWAとなっている。図4の下段に示す送信端末(トラッカー、トラッカープラス)を備えた人や自動車、自転車、船舶などから送信されるデータは、受信基地局で受信されクラウドで収集・分析処理される。
図5に、送信端末(2種類:トラッカーとトラッカープラス)の仕様を、写真1に、トラッカーの外観(蓋を外したところ)を示す。また、写真2に、プライベート受信基地局の外観を、図6に、プライベート受信基地局(2パターンの設置方法)を示す。
図5 送信端末(2種類:トラッカーとトラッカープラス)の説明
※Arduino(アルデュイーノ):初心者でも簡単に扱えるマイコンボードのこと(オープンソースハードウェア)。
出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月
写真2 プライベート受信基地局 屋外一体型の設置写真
出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月
図6 プライベート受信基地局(2パターンの設置方法)
出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月
ソニーのLPWAの主な仕様
ここまで一部解説した内容も含めて、表3にソニーのLPWAの主な仕様を示す。
表3 ソニーのLPWAの主な仕様
BPSK:Binary Phase Shift Keying、2値位相変調方式
出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月
(1)ソニーのLPWA端末の空中線電力(送信出力)は、920MHzのARIB標準注6(1mW、20mW、250mW)のうち、送信出力20mWを採用している。通信のチャネル(通信路)は、920.6〜928MHzの送信周波数に38チャネル(1チャネル:200kHz幅)が設定され通信が行われる。
(2)変調方式は、基本的に「π/2Shift BPSK」(BPSK:Binary Phase Shift Keying、2値位相変調方式)を使用し、これに加えてさらに多くの端末を使用して通信できるようにするために、副変調方式として線形チャープ変調を使用している。
(3)送信方式は、0.4秒以下のパケットを4秒間隔で繰り返し送信し、128ビットのペイロード(送信データ)を実質80bpsで送信する方式である。この128ビットの中にセンサーの位置情報(経度、緯度)や温度・湿度のデータが組み込まれる。
(4)送信データの誤り訂正符号には、デジタル放送などに使用されている強力なLDPC(Low Density Parity Check符号、低密度パリティ検査符号)をベースに、LPWA向けに専用に調整したLDPCを開発した。セキュリティについては、強力な国際標準AES注7-128ビット相当の128ビット暗号化方式を開発して搭載し、サイバーセキュリティに備えている。
▼ 注6
ARIB標準:ARIB STD-T108
ARIB:Association of Radio Industries and Businesses、一般社団法人 電波産業会
▼ 注7
AES:Advanced Encryption Standard、データ暗号化方式の1つ。AESは、強度に応じて128/192/256ビットの3種類の鍵を使って、暗号化する。