[新動向]

大手町でLoRaWANとGPSを活用して位置情報を把握する実証実験

― 三菱地所の「第91回 三菱地所総合防災訓練」と合わせて実施へ ―
2017/09/20
(水)
威能 契 インプレスSmartGridニューズレター編集部

三菱地所(東京都千代田区、http://www.mec.co.jp/)は、LoRaWAN(注1)とGPS(Global Positioning System)を利用して、離れた場所にいる人間の位置情報を把握する実証実験を行う。実験の日時は2017年9月1日で、三菱地所が実施する「第91回 三菱地所総合防災訓練」と合わせて、三菱地所株式会社と株式会社ハタプロ(東京都港区、http://hatapro.co.jp)が共同で、災害時にも独立した無線通信網を構築することを目的として実施する。

災害時に公共通信網に依存しない独自のLoRaWAN無線ネットワークを構築

 今回の実験は大規模災害で携帯電話通信網などの通信基盤が停止して、使えなくなった状況を想定している。

 三菱地所が入居する大手町ビルヂングを災害対策本部と想定してLoRaWANの基地局を設け、独自電源により周辺エリアにLoRaWANの通信網を構築し、GPS内蔵の通信機をもった三菱地所の社員を大手町エリアに配置して、それぞれの社員の位置情報を把握することを目指す(図)。

図 実証実験で使用するシステム概要

図 実証実験で使用するシステム概要

出所 三菱地所

実証実験のシステム概要

 三菱地所とハタプロの39Meister注2チームが共同で行う実験では、LoRaWANのゲートウェイとなる「親機」を大手町ビルの複数のフロアに配置するほか、周辺のビルにも設置する。親機は合計で4台使用し、それぞれの設置場所を管理者が使うパソコンに登録しておく。GPSの電波が届きにくい状況でも、どの親機で受信したかがわかれば、大体の位置を把握できるということだ。

 GPS内蔵の通信機(子機)は10台使用する。災害時にほかの社員の避難を先導する「リーダー」役も想定している。親機にはパソコンを直結して、パソコンの画面に通信機の位置を地図に重ねて表示する。公衆通信網が使えない状況を想定しているため、すべて自前の通信網を使う。

ビル密集エリアで実際の利用を見据える

 今回の実験には、巨大なビルが建ち並ぶ大手町で、LoRaWANが通信性能をどこまで発揮できるかを確かめるという目的もある。見通しでは数kmの通信が可能だというLoRaWANであるが、建物が電波を反射すればその距離は短くなる。日本有数のオフィス街である大手町で使えるめどが立てば、ほかのオフィス街での応用も考えられる。


▼ 注1
LoRaWAN:LPWA(Low Power Wide Area、低消費電力型無線広域網)規格の1つ。LoRa Allianceにて仕様策定がグローバルに進められている。日本においては免許不要な920MHz帯域において使用されるオープンな規格。

▼ 注2
39Meister:株式会社NTTドコモと株式会社ハタプロによるジョイントベンチャー(共同)事業。大手企業やベンチャー企業におけるIoTプロダクトの企画から量産までの事業化を支援している。独自に開発した「リーン型プロダクト開発手法」を導入し、最適な仕様策定、高速なプロトタイピング、知的財産や事業計画のアドバイス、最終製品の適量生産を実現している。LoRa Alliance加盟メンバー。
https://39meister.jp/

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