5つのフェーズに分けて分析
ハイプ・サイクルは、図1、表2に示すように、テクノロジーのライフサイクルを、①黎明期、②「過度な期待」のピーク期、③幻滅期、④啓蒙活動期、⑤生産性の安定期の5つのフェーズに分けて、分析している。
表2 ハイプ・サイクルの特徴
出所 https://www.gartner.co.jp/research/methodologies/research_hype.php
3つのメガトレンドと各要検討のテクノロジー
また、今回のハイプ・サイクルでは、前述した3つのメガトレンドと、それぞれの企業が実際にビジネスとして開発する際に、検討する必要があるテクノロジーを、次のように紹介している。
〔1〕メガトレンド1:どこでもAIとなる世界
これから10年にわたって、AI(人工知能)は最も破壊的な技術領域になる。その背景にあるのが、急成長するコンピューティング・パワー(CPUパワー)、ほぼ無限に増えるデータ(ビッグデータ)、かつてない進歩を遂げるディープ・ニューラル・ネットワーク注2である。これらの要因によって、AIテクノロジーを導入している企業は、データを活用して新たな状況に適応し、さまざまな未知の問題を解消することが可能になる。このテーマに注力したい企業は、次のテクノロジーを検討する必要がある。
ディープ・ラーニング、深層強化学習、汎用人工知能、自律走行車、コグニティブ・コンピューティング、商用無人航空機(ドローン)、会話型ユーザー・インタフェース、エンタプライズ・タクソノミ/オントロジ管理、機械学習、スマート・ダスト、スマート・ロボット、スマート・ワークスペース
〔2〕メガトレンド2:透過的なイマーシブ・エクスペリエンス
透過的なイマーシブ・エクスペリエンス(Transparently Immersive Experiences)とは、没入型(イマーシブ)の体験(どっぷりつかった体験)、すなわち、人、ビジネス、モノがより密接に絡んでくる状態が生まれてくることを指している。
言い換えると、テクノロジーは、今後もますます人間中心型となり、人、ビジネス、モノが透過的に関係するレベル(意識しなくてもよい状態)に達する。テクノロジーがより適応的、コンテキスト依存的(状況に応じて対応する)、流動的に進化するにつれて、人、ビジネス、モノの関係は、職場や自宅において、また企業や他者とのやり取りにおいて、さらに密接に絡み合うようになる。ここで検討すべき重要なテクノロジーは、次のとおりである。
4Dプリンティング、拡張現実(AR)、ブレイン・コンピュータ・インタフェース、コネクテッド・ホーム、ヒューマン・オーグメンテーション(人間拡張:人間と一体化して、人間の能力を拡張させるテクノロジ)、ナノチューブ・エレクトロニクス、仮想現実(VR)、立体ホログラフィック・ディスプレイ
〔3〕メガトレンド3:デジタル・プラットフォーム
先進テクノロジーは、必要なデータ量、高度なコンピューティング・パワー、遍在性(ユビキタス)に対応したエコシステム(複数の企業が協調的に開発するシステム)を提供する実現基盤の革新を求めるようになる。
コンパートメント(区分)化された技術インフラから、エコシステムに対応したプラットフォームへのシフトによって、人と技術をつなぐ、まったく新しいビジネスモデルの基盤が形成され始めていく。企業が注視すべき、プラットフォームを実現する主要なテクノロジーは、次のとおりである。
5G、デジタル・ツイン、エッジ・コンピューティング、ブロックチェーン、IoTプラットフォーム、ニューロモルフィック(神経を模倣する)・ハードウェア、量子コンピューティング、サーバレスPaaS、ソフトウェア・デファインド・セキュリティ
ハイプ・サイクルのメリット
このようなハイプ・サイクルの分析によって、各企業の担当者は、
- ハイプ(Hype、誇大な宣伝)に惑わされることなく、テクノロジーが真に備えているビジネス上の可能性を明確にできる。
- テクノロジーへの投資判断に伴うリスクを軽減できる。
- テクノロジーがビジネスにもたらす価値について、顧客が理解している内容を、経験豊富なITアナリストの客観的な分析結果と比較できる。
などのメリットを受けることができる。
▼ 注2
ニューラル・ネットワーク:パターン認識をできるよう設計された人間の脳を模倣したアルゴリズム(処理手順)の1つ。ディープ・ニューラル・ネットワークは、ニューラル・ネットワークをより強化したアルゴリズム。