ブロックチェーンの種類と代表的なサービス例
ここからは、自社でもブロックチェーンを活用して何か新しいビジネスに挑戦したいと考える企業に参考となる知識を紹介していきたい。まず、ブロックチェーンの種類について見ていこう。
ブロックチェーンは、図2のように、大きく「パブリック」と「プライベート」の2タイプに分かれる。この違いは、ノード(ブロックチェーンに参加する端末。ここではブロックチェーン自体を含む)に参加するのに、「許可がいるか、いらないか」だ。このため最近は、パブリック型とプライベート型という区別のほか、「パーミッション型」と「パーミッションレス型」という区別もある。さらにプライベートの範疇を、複数の企業か単独かによって「コンソーシアム」と「プライベート」に分ける見方もあるが、実質の部分ではそれほど大きな違いはない。
図2 ブロックチェーンの種類
出所 森 一弥氏(インフォテリア株式会社)提供資料より、2017年8月29日
パブリック/パーミッションレス型の代表的なサービスがビットコインである。ビットコインは、自分が参加したいと思えば誰でもビットコイン用のソフトウェアをダウンロードして、いつでも取引やマイニングに加わることができる。
一方、プライベート/パーミッション型では、必要に応じたルールを個々に設定できる。また企業内で使うサービスであれば、外部の不特定多数の人と取引する必要はないので、ビットコインのブロック承認報酬のような仕組みを設ける必要もない。
参考までに、現在すでに世の中にあるブロックチェーンのサービスから、いくつか有名なものを簡単に紹介しておく(表1)。興味のある方はインターネットで検索してみると、ブロックチェーンの実際の活用分野や動向を知ることができる。
表1 代表的なブロックチェーンサービスの例
出所 森 一弥氏(インフォテリア株式会社)提供資料をもとに編集部作成
ポイントシステムや契約管理などビジネスの応用への可能性は無限大
次にブロックチェーンの具体的な用途だが、商店や飲食店などで「独自のポイントシステム」を構築するというのは、発想自体はストレートだが、いろいろな使い途が考えられる。
取引履歴がすべて記録され、改ざんやデータ消失の危険がないという点では、「契約管理」などにも向いているといえよう。それも、単純に紙の契約書データを保存する「ドキュメント管理」ではない。例えば「何月何日に、この条件がそろったら送金する」といった取引ルールをプログラム化し、システマティックな取引のワークフローまでを構築できることが、ブロックチェーンによる契約管理の最大のメリットだ。
その他には、トレーサビリティの管理などにも有効だ。薬局が扱っている医薬品や流通過程の状況を精細に把握して余剰在庫を防いだり、近隣の店舗へ融通することなども考えられる。食品流通会社ならば商品の野菜や肉、魚などの産地偽装を防止するシステムを構築するといった用途なども考えられる。
なお、実際のビジネスで使える業務システムを構築する際には、ブロックチェーンだけではなく、図3のように既存のデータベースやアプリケーションサーバなども必要だ。これは従来の、いわゆるエンタープライズシステムとまったく変わらない。連載第1回目でブロックチェーンの特長を「落ちない」「改ざんできない」「でも安い!」と紹介したが、ブロックチェーンだけではシステムは作れない。この点は勘違いする人も少なくないので、改めて念を押しておきたい。
図3 ブロックチェーンを使ったシステムの代表的な構成例
ブロックチェーンはトランザクション情報を扱うものであるため、アプリケーションのためのサーバやマスター情報を扱うデータベースは別途必要となる。 出所 森 一弥氏(インフォテリア株式会社)提供資料より、2017年8月29日
次回は、ブロックチェーンのこれからの展開や可能性、課題などを、実証実験などの例を挙げながら紹介していく。(第3回に続く)