「次世代電力ネットワーク小委員会」の論点
このような状況のもと、新設された、「次世代電力ネットワーク小委員会」では、図6に示すように、世界の潮流を分析しながら、日本の課題を整理し、2030年に向けた取り組みを明確にしていくとしている。
図6 再エネ大量導入・次世代電力ネットワークの課題と検討の方向性
出所 資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題と次世代電力ネットワークの在り方」2017年12月18日
具体的には、
- 論点1:発電コスト力の強化
- 論点2:系統制約:系統への円滑な受入れ〜系統制約の克服/調整力確保〜(日本版コネクト&マネージ注4)
- 論点3:事業環境整備〜FITからの自立とバランスの取れた導入促進
などの論点を中心に検討されていく予定である。詳細については、URLを参照していただきたい注5。
ダイナミックな展開を示すVPPの実証事業
一方、再エネ大量導入と密接な関係にある、次世代の電力ネットワーク「VPP(仮想発電所)」の実現を目指して、VPP構築実証事業が、2016年から29.5億円の予算でスタートした(第1年度)。このVPP構築実証事業は、平成28(2016)〜平成32(2020)年度の5年間の事業を通じて、50MW以上の仮想発電所の制御技術の確立などを目指して、再エネの導入拡大や、更なる省エネルギー・電力の負荷平準化などを推進している注6。
現在、2年目(予算:40億円)を迎えている2017年度は、親アグリゲータ(6社、共同申請17社注7とリソースアグリゲータ(35社注8)によってVPP構築実証事業が展開されている注9。
図7に、VPP構築実証事業の来年度(2018年度)までの予算の推移と、VPPに関する制御技術の高度化、制御時間の短縮、遠隔制御の対象となるエネルギーリソースの拡充の内容を示す。
図7 VPP構築実証事業の実証プロセスと予算の推移
出所 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/006_04_01.pdf
図7を見ると、遠隔制御の対象が蓄電池・自家発・空調(2016年度)から、EV/PHV、エコキュート、ショーケースへ、さらに照明、HEMSなどへと拡大している。
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以上、スタートしたばかりの「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」の2030年に向けた取り組みや、2年目を迎えたVPP実証事業の展開を見てきた。
現在、日本のエネルギー自給率はわずか6%であり、これはOECD加盟34カ国中33位と、低すぎる水準である。制御技術と蓄電技術を駆使して、太陽光や風力などのクリーンで無料なエネルギーを大量に導入できれば、自給率の問題はすぐにでも解決できる。
これらを実現するために、IoTやAI、ブロックチェーン、LPWAなどを利用したVPPの実証も進んでいる。IoTとAIは、エネルギー安全保障をも解決する可能性をもつ、キーテクノロジーになってきたのである。
▼ 注5
資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題と次世代電力ネットワークの在り方」2017年12月18日
▼ 注6
VPP構築実証事業第1年度の成果と課題については、本誌2017年6月号を参照ください。
▼ 注7
親アグリゲータ:送配電事業者や電力市場等に対して電力取引を行う事業者(小売電気事業者系アグリゲータなどを想定)
▼ 注8
リソースアグリゲータ:需要家とVPPサービス契約を直接締結し、リソース制御を行う事業者(機器メーカー系アグリゲータ、エネマネ事業者等を想定)
▼ 注9
資源エネルギー庁「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金の進捗報告」、平成29年9月29日