2020年をめざす6チームによるVPP構築実証事業
VPPについては、政府からバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業費補助金を受けて、2020年に50MW以上のVPPの実現を目指し、2016〜2020年度の5カ年計画で実証事業が推進されている。
2017年度(第2年度)の需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業については、
- 経済産業省資源エネルギー庁(2018年3月23日付注1)と、
- 一般財団法人エネルギー総合工学研究所(2018年4月20日付注2)
のサイトに、その実施内容が報告されている。
詳しくは同サイトに譲るとして、2017年度は、
- ①アズビル・チーム
- ②SBエナジー・チーム
- ③エナリス・チーム
- ④関西電力チーム
- ⑤グローバルエンジニアリング・チーム
- ⑥ローソン・チーム
の全6チームが、親アグリゲータ23社、リソースアグリゲータ35社注3の参加のもとに活発な実証事業を展開し、今後の電力システム改革に向けて、一定の成果と課題が見えてきたところである(表1)。
表1 平成29(2018)年度VPP構築実証事業の概要(6チームの実証項目ならびに規模、特徴)
電源Ⅰ-b:需給バランス調整対応の調整力のため、周波数調整機能の具備は必須としない電源のこと
出所:資源エネルギー庁「H29年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金実施状況報告」平成30(2018)年3月23日
東北電力がVPPのエネルギーリソースを集約
〔1〕VPPプロジェクトの開始
これらの動きと(2年遅れではあるが)同期して、東北電力は、IoTやAIなどの新たな情報技術を活用して「バーチャルパワープラント(VPP)実証プロジェクト」(図1)を開始した(2018年3月29日)。
図1 東北電力が開始したVPP実証プロジェクトのイメージ
これによって、顧客サービスのさらなる向上や、将来の事業領域の拡大につながる新たなビジネスモデルの構築に向けて積極的に取り組んでいく。
周知のように、VPPとは、自治体や企業、一般の家庭などの顧客が保有している太陽光発電をはじめとする発電設備や蓄電池、電気自動車(EV)など、地域に分散して存在するエネルギーリソースを、IoTなどの新たな情報技術を用いて遠隔制御し集約することによって、あたかも1つの発電所のように機能させる技術である。
〔2〕電気自動車と電力系統をつないでV2Gを検証
このVPPプロジェクトでは、太陽光などの再生可能エネルギー(再エネ)や蓄電池などの分散型電源を、東北電力がVPPのエネルギーリソースとして集約し、電力の需給バランスの調整機能としての活用に向けた検証を行う。
また、自治体などの公共施設などに設置されている太陽光発電設備や蓄電池を有効活用することによって、地域の防災力強化につなげるとともに、電気自動車(EV)の蓄電池を電力系統につないで、充放電する技術(V2G:Vehicle to Grid)の検証にも取り組んでいく。さらに、顧客の設備や機器などを有効活用することによって、省エネルギーや省コスト化などにつながるサービスの開発にも取り組む予定だ。
〔3〕企業・大学・自治体とも連携
同プロジェクトは、今後、企業・大学・自治体などのさまざまなビジネスパートナーと連携(現在連携先を検討中)しながら、2018〜2020年度までの3カ年を対象に行うこととしており、実証で得られた知見やノウハウについては、新たなサービスの提供につなげていく。
次に、プロジェクトの具体的な取り組みを見てみよう。
▼ 注1
資源エネルギー庁「H29年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金実施状況報告
▼ 注2
平成29年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金(バーチャルパワープラント構築実証事業)の成果報告(概要版)について
▼ 注3
・親アグリゲーター :送配電事業者や電力市場等に対して電力取引を行う事業者(小売電気事業者系アグリゲーター等を想定)
・リソースアグリゲーター:需要家とVPPサービス契約を直接締結し、リソース制御を行う事業者(機器メーカー系アグリゲーター、エネマネ事業者等を想定)