ソラコム基盤とKDDI基盤の本格的な統合
〔1〕名称は「SORACOM Air for セルラー plan-K」で統一
2017年8月にKDDIグループに参画しその一員となったソラコムは、KDDIと戦略的な協議を重ねてきた。
両社は、KDDIのもつ国際市場やソラコムのクラウドネイティブなソフトウェア技術などをベースに、今後、国際的にダイナミックな展開が始まる第5世代(5G)も含めた新しい次世代のネットワーク分野を開拓し、さらに新しいスタートアップ企業の発掘なども行っていくことを決定した。その実行を加速するため、それらを含めた新しい予算として「KDDI Open Innovation Fund 3号」(200億円)も開設された。
さらに、新しい取り組みの1つとして、
(1)これまで「SORACOM Air forセルラー」と「KDDI IoTコネクトAir」というように別々に呼ばれていた両社の類似のプラットフォームを統合、
(2)新たに、「SORACOM Air for セルラー plan-K」と命名
されて、KDDIとソラコムの両方から販売すると発表された。同時に、KDDI回線が利用できる「plan-K」用のデータ通信SIMカードが提供された注3(写真2)。これは、ユーザーのWebコンソール画面から購入することが可能となっている。
写真2 KDDI回線が利用できる「plan-K」用のデータ通信SIMカード(2018年5月9日)
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
これによって、今後、両社のシナジー効果の創出を目指すビジネスが展開されることになった。
「plan-K」のKはKDDIの回線、後述する「plan-D」のDはDOCOMO(NTTドコモ)の回線を意味し、plan-DではNTTドコモ回線が利用できる Air SIMが提供され、plan-KではKDDI回線が利用できるAir SIMが提供されるサービスとなっている。
すなわち、図3に示すように、従来、NTTドコモとMVNO(仮想移動体通信事業者)の契約〔L2(レイヤ2)卸契約〕を締結し、NTTドコモの基地局を利用してサービスを提供してきたソラコムは、KDDIの競合相手でもあるNTTドコモの回線(「plan-D」)とKDDIの回線「plan-K」の両方を利用して、サービスを展開できることになったのだ。
図3 ソラコムへKDDI回線の提供:「SORACOM Air for セルラー」でKDDI回線の利用も可能に
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
次に、その新しいプラットフォームである「SORACOM Air for セルラー plan-K」を紹介しよう。
「SORACOM Air for セルラー plan-K」のプロフィール
〔1〕KDDI回線も利用可能へ
KDDI回線が利用できるデータ通信「SORACOM Air for セルラー plan-K」(以下、plan-K)は、図2に示したSORACOMプラットフォームを構成する、アプリケーションレイヤ、ネットワークレイヤ、データ通信レイヤの11種類注4のサービスがすべて利用可能となっている。
また「plan-K」は、図4左側に示す「セルラー」(従来はNTTドコモ回線とグローバル回線を利用可能)に、KDDI回線も利用可能にしたものである。
図4 SORACOMのアプリケーションサービスの構成:NTTドコモ回線とKDDI回線が利用可能に
出所 株式会社ソラコム、「メディア向け発表会」資料(2018年5月9日)より
この場合、SORACOMのユーザー側のWebコンソールの「SIM管理」画面において、「plan-D」「plan-K」の回線の開始や休止などの操作や設定を、一括管理できる仕組みとなっている。また、SORACOMが提供する、Beam注5(データ転送支援)、Funnel注6(クラウドリソースアダプタ)、Harvest注7(データ収集・蓄積)などのサービス(図4)も、「plan-D」「plan-K」の双方から同じ設定で利用できる。
〔2〕Webコンソールから統一的に管理可能
このように、plan-Dとplan-Kも使えるようになった「SORACOM Air for セルラー」は、ユーザーのWebコンソール画面上からまったく同じ使い勝手で管理できる。グローバルSIMを使用する場合注8は、Webコンソール画面で、日本国内をカバーするジャパン・カバレッジからグローバル・カバレッジへカバレッジタイプを切り替えることが可能。これによって、グローバルSIMもWebコンソール画面上で、一括して運用・監視できるようになっている。
▼ 注3
日本向け「SORACOM Air for セルラー plan-K」のSIM利用料金は、①初期費用(契約事務手数料):1,500円/枚(データ通信/SMS※付)、②基本料金:使用開始前1日5円、使用開始後1日10円、③データ通信料金:1MB/0.2円から、となっている。https://soracom.jp/services/air/cellular/price/
※SMS:Short Message Service、主に携帯電話やスマホんなどでやりとりされる短いメッセージサービスのこと。
▼ 注4
11種類のサービス:図2に示すA〜Jに至る11種類のサービス。
- SORACOM Air
- SORACOM Beam
- SORACOM Canal
- SORACOM Direct
- SORACOM Door
- SORACOM Endorse
- SORACOM Funnel
- SORACOM Gate
- SORACOM Harvest
- SORACOM Inventory
- SORACOM Junction
(注:DだけDoorとDirectの2種類)
▼ 注5
Beam:アプリケーション連携サービスの1つ。データ転送支援サービス。IoT デバイスにかかる暗号化などの高負荷処理や接続先の設定を、クラウドにオフロードできる(任せることができる)。
▼ 注6
Funnel:アプリケーション連携サービスの1つ。デバイスからのデータを、特定のクラウドサービスに直接転送するクラウドリソースアダプタ。Funnelでサポートされるクラウドサービスと、その接続先のリソースを指定するだけで、データを指定のリソースにインプットできる。
▼ 注7
Harvest:アプリケーション連携サービスの1つ。データ収集・蓄積サービス。
IoTデバイスからのデータを収集、蓄積/可視化する。
▼ 注8
2018年5月9日の発表によって、これまでの2G・3Gに加えて次の23カ国で4G(LTE)の利用が可能となった。米国、カナダ、ベルギー、チェコ、デンマーク、イタリア、フィンランド、フランス、ギリシャ、ルクセンブルク、ノルウェー、ポルトガル、スイス、シンガポール、トルコ、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、ニュージーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン。対応国は、今後も増加する予定。