ロックダウン中のアプリ利用の変化
それでは、どのようなアプリの利用がネットワークのトラフィック量に影響を与えたのだろうか。その分析を行ったのが図3である。
この図の縦軸は、各カテゴリーのスマートフォンアプリのユーザー数の増加率を、横軸は、アプリ使用量の変化(アプリ使用量の増加と減少の差)を表している。
〔1〕「新型コロナウィルスアプリ」が急成長
まず縦軸のユーザー数の増加率の変化を見てみると、青色枠(急成長ゾーン)では、新型コロナウイルスに関する情報提供や感染者追跡などを行うための「新型コロナウィルスアプリ」が大きく伸びているほか、テレワークやeラーニングといった、自宅から仕事や教育を受ける際に使われるアプリなどの増加率が大きくなっている。
「急成長ゾーン」内にあるアプリは、ユーザー数の増加率とアプリ使用量の増加が顕著なアプリだということができる。
このほか、クイズ/パズル、ウェルネス(健康)、ソーシャル経験共有アプリ、遠隔医療相談アプリが「急成長ゾーン」に位置している。
〔2〕アプリ使用量:増加したものと減少したもの
横軸のアプリ使用量に目を向けると、インスタントメッセージングやソーシャルメディアなどのコミュニケーション系のアプリのほか、テレビやビデオストリーミング、ゲームなどのエンターテインメント系のアプリが増えていることが目立ち、これらのアプリを使用することで、ロックダウン中に人とのつながりを保ったり、新たな余暇の過ごし方を模索したりしていることが見てとれる。
ここまで紹介したような使用量が増加したアプリもあれば、逆に減少したアプリもある。図3の左側に位置している旅行および予約アプリ、配車アプリ、ロケーションアプリ、そして駐車場アプリなど、外出するために使用する、あるいは外出時に使用するアプリは20〜30%以上の使用量減となっており、ロックダウンの影響を物語っている。
接触確認アプリの登場
〔1〕接触確認アプリの目的
図3の中でもっともユーザー増加率が大きかったアプリの中に、接触確認アプリが含まれている。
厚生労働省の資料「新型コロナウイルス接触確認アプリについて」注8によると、接触確認アプリとは、本人の同意を前提に、スマートフォンの近接通信機能(Bluetooth)を利用して、互いにわからないようプライバシーを確保して、COVID-19の陽性者と接触した可能性について通知を受けることができるものだとしている。
利用者は、陽性者と接触した可能性がわかることで、検査の受診などのサポートを早く受けることができ、このアプリの利用者増によって、感染拡大の防止につなげることを目的としている。
〔2〕日本版の接触確認アプリ「COCOA」をリリース
AppleとGoogleは、この接触確認アプリを利用するiOSとAndroid端末間で相互運用を実現するAPIをリリースして話題となった注9。このAPIを活用して、2020年6月19日には、日本版の接触確認アプリであるCOCOA(COVID-19 Contact Confirming Application)をリリースした。リリースから約1カ月半経った7月22日時点のダウンロード数は約797万件(iOS、Androidの合計)となっている注10。
同様のアプリは日本以外でも、各国がそれぞれアプリの仕様や設計などを決め、導入や導入検討を行っている(表1)。
表1 各国における接触確認アプリの導入状況
(参考)MIT
注:本資料は2020年6月22日に更新されたものであるため、日本は「導入検討中」に含まれている。
出所 日本総合研究所 先端技術ラボ、三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ室、「COVID-19が促すデジタル社会への転換 〜ウィズコロナ・アフターコロナにおけるIT活用展望」を一部修正、2020年6月16日(6月22日更新)
▼ 注8
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000641655.pdf
▼ 注9
AppleとGoogle、新型コロナ対策で協力。Bluetoothで濃厚接触を検出 - Impress Watch
▼ 注10
新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Application|厚生労働省