太陽光は火力発電より安価に!
図9に、日本における、再エネ(事業用太陽光)の発電コストの推移を示す。太陽光の発電コスト(FIT買取単価)は、すでに卸電力市場の平均価格レベルまで低下しており、経済的にも有利な電源となっている。
図9 日本における再エネ発電コストの低下(太陽光)
出所 UPDATER「2022年度以降のエネルギー業界動向について」、2022年4月20日
具体的には、図9に示すように、10年前(2012年)は、FIT価格は40円/kWhで買取したが、現在は、10円を切る(2023年は9.5円/kWh)注15ところまで低下している。また、図9に示す赤い点線は、2021年度のJEPXシステム平均価格が13.3円/kWhであったことを示している。
このように、現在のFIT価格は、JEPXの平均価格(発電コスト)を下回っている。つまり、太陽光発電のコストは、火力電源に比べて安価になっているということになる。
「時間帯や晴・雨などの天候の変動などもあるため、一概にいえませんが、化石燃料が値上がりしている一方で、再エネ電源はコストが下がっているという状況がはっきりしてきました。このことを企業もしっかりと認識し、利用していくことが大きなメリットになる時代がきた、と考えています」、と三宅氏は指摘する。
電力価格は2021年に逆転:コーポレートPPAが優位か!
〔1〕コーポレートPPAと東京電力の電力料金の比較
次に、コーポレートPPAと東京電力の電力料金を比較してみよう。
図10は、橙色の横線がコーポレートPPA(C-PPA)の電力供給価格を示し、青色の折れ線グラフが、東京電力の電力料金価格の推移を示している。
図10 価格変動リスク回避としてのコーポレートPPA(C-PPA)
出所 UPDATER「2022年度以降のエネルギー業界動向について」、2022年4月20日
この図から、東京電力の企業の高圧電力用の場合は、2021年1月頃の11円/kWhから、2022年5月には高圧電力料金単価の16.38円/kWhに、さらに資源(燃料)価格の高騰に伴う燃料調整費が上乗せされ、最近では19円/kWhと、電気代が急速な値上がりを示している。
〔2〕2021年12月時点で、両者の価格が逆転
一方、コーポレートPPAは、送電のコスト(託送料金:発電事業者が一般送配電事業者に支払う送電線の使用料金)や手数料を含めて、15~16円/kWh程度の電力の供給価格になる。
図10の中央右の交差点に示すように、2021年12月時点で両者の価格が逆転している。
三宅氏は、「東京電力の電気代は上がったり下がったりしていますが、コーポレートPPAの電気代は、契約期間の20年間(注:契約期間は5~20年程度と幅がある)は、一定で変わりません。20年契約は長いと感じられると思われますが、これはリスクヘッジ(リスク回避)の手段になるのです。みんな電力では、需要家の皆さんがこのような特徴をもつコーポレートPPAサービスを活用していただけるように提供しています。当社では、すでにRE100加盟企業である、花王さんや高砂熱学工業さんなどに、2021年秋から、ブロックチェーン技術を活用しP2P電力トラッキングシステムをベースにした、コーポレートPPAによる再エネ電力調達の支援を進めており、それらのノウハウを蓄積してきています注16」と、同社の強みをアピールした。
今後の展開:企業の電力調達リスクを緩和するコーポレートPPA
三宅氏は最後に、「これまでご紹介したように、すでに太陽光などの再エネ電源の発電コストは、火力発電などの化石燃料由来の発電コストよりも安く、優位になっています。企業にとって、初期投資が不要な再エネ電源を長期にわたって確保できるコーポレートPPAは、カーボンニュートラル(CO2排出量ゼロ)で、追加性注17のある再エネを調達できるだけではありません。台風や地震などの災害や、国際紛争などによる石油・ガスの高騰で受ける“企業の電力調達リスク”を緩和し、企業経営の持続可能性(SX)を高める、重要な自衛手段(エネルギーセキュリティ)ともなってきているのです」と締めくくった。
▼ 注15
経済産業省、「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2022年度以降の買取価格・賦課金単価等を決定します」、2022年度以降の買取価格、2022年3月25日
▼ 注16
みんな電力「RE100企業などとコーポレートPPAの取り組みを開始」、2021年9月22日
▼ 注17
追加性(Additionality):顧客(需要家)が太陽光発電などの再エネ電力を購入することが、新たな再エネ電源への投資を行ったと見なされ、その資金によってさらに新たな再エネ電源の普及拡大(追加)が可能となること。