優れたスケーラビリティアジャイル開発注5による短期導入
PRATEXO CEO
Blaine Mathieu(ブレイン・マシュー)氏
エッジマイクロクラウドは、電力種別や市場など条件に応じて柔軟なシステム設計が可能だ。このシステムを構成しているのは、図2に示したように、現場の設備に設置しデータ収集を行うエッジノード、それらをクラスタ化しコンピュータリソースを共有するマイクロクラウド、最上位に位置し総合的な制御や管理を行うセントラルクラウド、主にこの3つで構成されている。エッジノードは設置する数の論理的な制約はなく、優れたスケーラビリティ(拡張性)をもつ。また、マイクロクラウドは目的に応じて多階層で柔軟に配置できる。例えば発電施設の運用監視に設置したマイクロクラウドの上位に地域グリッド(配電網)の管理用マイクロクラウドを配置し、統合的な運用や監視を行うことも可能だ。
開発・運用は、コンテナ化(パッケージ化)されたコンポーネントを配置するアジャイル開発だ(図3)。「以前、グローバルシステムのアーキテクチャデザインを、我々のスタッフが15分ほどで行ったことがあります。それを見たクライアントは『我々がやろうとしたら数カ月はかかる』と驚いていました」と、Mathieu氏は開発スピードの速さ、それによるコスト削減効果もメリットに挙げる。
図3 「エッジマイクロクラウド」システムの核となる「PRATEXO Studio」
「PRATEXO Studio」ではKubernetes(クバネティス)という、コンテナオーケストレーションと呼ばれるツール(仮想マシンの一種。オープンソース)を採用している。
出所 PRATEXO社提供資料より
スマートメーターやEV充電の管理システムに採用
エッジマイクロクラウドの開発によりPRATEXOは、世界有数のテクノロジー企業であるABB注6 が主催する「2022 ABB Electrification Startup Challenge」において、電力グリッド部門で最優秀賞を獲得している。この受賞によりPRATEXOは電力グリッド用ABBスマートメーター注7で取得したデータのリアルタイム分析システムを受注したほか、別のソリューションもABBと進行中だ。ノルウェーでは電力会社Hallingdal Kraftnett AS (HKN)注8で稼働中の電力供給システムにも採用されている(図4)。さらに同国のElywhere AS 注9が提供しているEV充電の分散プラットフォーム(図5)で充電の最適制御に採用されるなど、エッジマイクロクラウドは利用の幅を広げている。
「私は、約20年にわたって、日本でビジネスに関わってきた経験がありますが、近年は日本におけるIoTやAIのテクノロジーが進化し、とてもハイレベルになっていると感じています。この有望な市場で、新しいパートナーとともにチャレンジができる。とても期待しています」とMathieu氏は抱負を語る
図4 ノルウェーの電力会社Hallingdal Kraftnett AS (HKN)で稼働中の電力供給システムに導入
出所:PRATEXO社提供資料より
図5 Elywhere ASの移動式EV充電ステーション例
出所:PRATEXO社提供資料より
▼ 注6
ABB:スイスを本拠とし電力・重電・重工業の事業を100か国以上で展開している多国籍企業。
▼ 注7
スマートメーター:電気使用量をデジタルで計測・通信する機能をもつメーター。
▼ 注8
Hallingdal Kraftnett AS (HKN):ノルウェーのHallingdal(ハリングダール)地域の電力会社。電気、ガス、蒸気、空調の供給事業。
▼ 注9
Elywhere AS:ノルウェーのEV充電機器および充電ステーション施工業者。モジュール式のモバイルソリューションによるEV充電ステーションを設置してノルウェー国内で展開している。