[クローズアップ]

中部電力の戦略とブロックチェーンを使ったEV充電システムの実証実験

2018/07/01
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

電力システム改革による2020年の発送電分離に向けて、一般電気事業者(旧電力会社10社)は、既存の電力ビジネスから新たなビジネスモデルを模索している。再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入に向けた取り組みや分散型電源による仮想発電所(VPP)の実証、デジタル化の波とともにIoTやAIを取り込んだビッグデータの活用などさまざまである。
なかでも中部電力は、電力自由化開始前後から積極的にビジネスの新規開拓に向けて、ユニークな取り組みをしている。ここでは、中部電力の経営ビジョンと、2018年3月に実証を開始したブロックチェーンを使ったEV充電システムについてレポートする。

中部電力のプロフィールと経営ビジョンと戦略

〔1〕3つの観点からの新しい成長分野の確立と新たな事業収益の構築

 エネルギー事業を取り巻く環境は、電力・ガス小売全面自由化を契機とした競争激化や、再エネの導入拡大などに伴う電力の需給構造の変化、さらには各国がパリ協定実現へ向けた取り組みを行う中で、ESG(環境・社会・企業統治)注1経営の重要性が高まるなど、大きく変化している。

 中部電力グループは、このような変化の中、同社本来の電力の安定供給を果たすとともに、新たな価値の提供を目指して、2018年3月、2018年度「経営課題への取り組み」を発表した。

 その中で、次の3つの観点から新しい成長分野を確立し、将来、連携経常利益の1〜2割を占める収益の柱へと育てていくとしている(図1)。

図1 中部電力の新たな成長分野の確立に向けた基本的な考え方

図1 中部電力の新たな成長分野の確立に向けた基本的な考え方

出所 中部電力経営ビジョン、2018年3月

  1. 社会課題の解決(ニーズの視点)
  2. 技術革新(第4次産業革命の視点)
  3. 自社の強み(コアコンピタンスの視点)

 その結果、図2に示すような、現状(2017年度)の国内エネルギー事業と海外エネルギー事業(新しい成長分野)の割合「4:1」を、2020年後半には「1:1」へと、バランスの取れた事業収益構成を構築し、2020年代後半には連結経常利益2,500億円以上を目指す。

図2 2030年に向けた新たな収益基盤の拡大

図2 2030年に向けた新たな収益基盤の拡大

出所 中部電力経営ビジョン、2018年3月

〔2〕先端技術を活用した新サービスの提供

 中部電力グループは、インフラやさまざまなデータやサービスを保有している。

 例えば、電力インフラやスマートメーターなどの通信インフラなどの設備インフラ、設備の運転・保守データ、スマートメーターデータなどのビッグデータ、電力やガスなどエネルギー事業を中心としたサービスなどである。

 これらの既存の資産に、IoTやAIなどをはじめとする先端技術や地域に点在する分散型のエネルギー資源(再エネ、蓄電池、EV/PHVなど)を活用して、新しい成長分野の確立を目指す。

 2018年度の経営ビジョンでは、次の2つのアプローチによって上記の実現を目指している。

  1. 個人の生活の質の向上を図るサービスの提供:生活にかかわるさまざまな情報をデータ基盤として確立し、中部電力以外の企業向けに、データ活用やサービス提供を可能とする(図3)。

    図3 個人の生活の質の向上を図るサービスの提供

    図3 個人の生活の質の向上を図るサービスの提供

    出所 中部電力経営ビジョン、2018年3月

  2. 複数の社会インフラをつないだ地域サービスの提供:一方向での供給のみであった既存のエネルギーインフラを、IoTやAI技術を活用して、他のさまざまなインフラや機器・設備とつないで双方向の次世代型社会インフラ(コミュニティサポートインフラ)を構築し、インフラや設備の効率化や運用、エネルギーシェアリング、エネルギー管理の仕組みなどの提供を可能とする(図4)。

    図4 複数の社会インフラを繋いだ地域サービスの提供

    図4 複数の社会インフラを繋いだ地域サービスの提供

    出所 中部電力経営ビジョン、2018年3月


▼ 注1
ESG:ESGとはEnvironment(環境:CO2排出量削減など)、Social(社会:人権問題や地域社会での貢献など)、Governance(企業統治:コンプライアンスなど)の略。このESGを評価基準にして、投資家は企業を選別し投資を行う傾向が強くなっている。

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