広域機関のスイッチング支援システムとは?
2016年4月1日からの電力小売全面自由化に伴って、一般家庭などの低圧需要者注2が、自分の契約する電力会社を全国286社(登録小売電気事業者注3)の中から自由に選択できる時代を迎えた。
しかし、電力会社が自由に選択できるようになったといっても、その契約の変更手続きが複雑では、一般家庭の需要者は容易に現在の契約を変更できない。そこで、広域機関では、膨大な数の一般需要者からの電力会社の変更手続きを容易にできるようにするため、現在の託送契約を切り替える(スイッチングする)「スイッチング支援システム」を構築し、2016年3月1日から稼働している。
〔1〕「スイッチング支援システム」の仕組み
広域機関が運用している「スイッチング支援システム」は、どのような仕組みで稼働しているのだろうか。
図1に示すように「スイッチング」(Switching、図1左の青色部分)とは、需要者による電力会社(小売電気事業者)の切り替えのことを指すが、この切り替えには、電力に関する「供給契約」と「託送契約」という2つの切り替えが必要となる。
- 電力の供給契約:需要者と電力会社(小売電気事業者)の間の電力供給契約のこと
- 電力の託送契約:電力会社(小売電気事業者)と一般送配電事業者注4との間の電力託送契約のこと
このうち、後者の「電力の託送契約」の切り替え業務を支援するのが図1に示す「スイッチング支援システム」(図1右の赤色部分)であり、システム自動連携(API連携、後述)およびWeb(画面、後述)の2つの方法で操作・利用できるようになっている。
図1 スイッチング支援システムの仕組み
〔2〕「託送制度」とは
「託送制度」とは、送配電網設備をもたない新電力(小売電気事業者)などの新規電気事業者が、一般送配電事業者注5の送配電網を使用して電力を販売できる制度である。
このとき、一般送配電事業者は、送配電網の使用を新電力に提供する代償として、一般家庭の電気料金の30〜40%程度の「託送料金」(送配電網の使用料金。<例>1kWh当たり最小:北陸電力7.81円、最大:沖縄電力9.93円)と呼ばれる接続料を徴収できる注6)。参考までに、図2に託送料金も含む電気料金の構造を示す。
図2 電気料金の構造