〔1〕JEPXの「非化石価値取引会員」に加入
短期的に実現可能となる非化石証書を用いた再エネ電力の提供について、IIJは、2023年4月に日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power eXchange)の非化石価値取引会員に加入した。これによって、図2に示すように、非化石証書の直接調達と仲介提供が可能となった。
「この非化石証書の仲介を活用して、2023年夏から、データセンター利用者に再エネ電力を供給するサービスの提供を開始する検討を進めています。その際、利用するのは図2の真ん中に示すJEPXの再エネ価値取引市場で、2021年11月に新たに創設された市場です」(堤氏)。
非化石証書は、これまで小売電気事業者のみがJEPXから購入可能であったが、図2に示すように、データセンター事業者(IIJ)でも市場に参加することが可能になったため、IIJは、この再エネ価値取引市場を利用して同社の各顧客に、非化石証書を活用した実質再エネ由来の電力を提供することが可能となった。
図2 実質再エネ由来の電力の供給サービスに向けて
出所・出典
資源エネルギー庁「非化石価値取引について-再エネ価値取引市場を中心に-」2023年2月9日)
資源エネルギー庁「非化石価値取引について」(2023年2月9日)
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)記者説明会、カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み(2023年4月24日)
〔2〕データセンター利用者が受けられるメリット(価値)
表1に、データセンター利用者が受けられるメリットを示すが、ここでの大きなポイントが①である。すなわち、データセンター利用者に権利帰属先(非化石証書を購入した者に非化石価値がすべて帰属する)を確定させた「非化石証書」を提供できることだ。具体的には、データセンター利用者の名前が非化石証書に明記されるため、入手した環境価値を自社で利用することが可能となる。また、小売電気事業者から提供された非化石証書は、二次利用つまり転売などができないが、権利帰属先を確定させた非化石証書では、それも可能となった。
2点目は、再エネ化にかかるコストの抑制(②)だ。
IIJが提供する非化石証書は再エネ価値取引市場(JEPX)から調達するが、その際、データセンター利用者の電力使用量の実績に応じて提供できる。また、四半期に一度、調達のオークションが開催されるが、堤氏は、「例えば、FIT非化石証書を利用する場合、直近の2023年2月に開催されたオークションでは、kWh当たり0.3円の価格(図3)で取引されているので、他の環境価値証書(J-クレジットは1.51円/kWh、グリーン電力証書は2~7円程度/kWh)と比較すると、現時点では低コスト化が期待できると考えてます」と述べた。
3点目は、詳細なニーズに対応しやすい点だ。
「非化石証書の調達や割当をIIJが直接管理することになると、非化石証書のもつ2つの価値「①環境表示価値(RE100報告等に利用できる価値)、②ゼロエミ価値(ゼロエミッション価値:発電時にCO2を排出しない価値)」の使い方について、利用者のニーズの違いなどがあっても、IIJが利用者の詳細な要望に直接対応できるようになると考えています」(堤氏)。
表1 データセンター利用者が受ける価値
※1 「J-クレジット制度について(データ集)」の15ページ
※2 「非化石価値取引市場について」の8ページ
出所 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)記者説明会、カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み(2023年4月24日)をもとに編集部で作成
図3 再エネ価値取引市場の推移
出所 資源エネルギー庁「再エネ価値取引市場について」(2023年4月5日)より
≪「その2」につづく≫