2019年は53万件が卒FITへ
日本の「第5次エネルギー基本計画」によれば、2030年に必要とされる総電力量(総電力需要量=エネルギーミックスで構成)は1兆650億kWhと予測されている。このうち、再エネの比率は、22〜24%と設定されており、その内訳は水力が8.8〜9.2%、太陽光が7.0%、バイオマス3.7〜4.6%、風力が1.7%、地熱が1.0%という構成だ。
〔1〕住宅用の太陽光発電
これらの再エネのうち、FIT制度を背景に急速に普及してきた住宅用の太陽光発電(10kW未満)については、2009年11月から10年間注2に設定されていたFIT制度期間が順次終了(卒FIT)する(図1、表1)。
図1 再エネ(太陽光発電)の2019年問題と2032年問題
出所 各種資料をもとに編集部で作成
表1 FIT制度における再エネ(太陽光・風力)の調達価格(1kWhの価格)の推移
※1 2015年7月1日~利潤配慮期間終了後 ※2 10kW以上2000kW未満 ※3 出力制御対応機器設置義務あり
※4 風力・地熱・水力のリプレースについては、別途、新規認定により低い価格を適用 ※5 小型風力は、真に開発中の案件に限って経過措置を設ける
※6 一般海域利用ルールの適用案件は、ルール開始に合わせて入札制に移行
出所 http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/007_01_00.pdf
卒FITの件数は、今後、2019年卒(11月、12月分)が53万件、2020年卒が20万件、2021年卒が27万件…と推移していく(図2右)。
図2 FITを卒業する住宅用太陽光発電の推移(年別)
出所 http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/010_02_00.pdf
このような太陽光発電は、投資の回収が済んだ安価な電源(卒FIT電源)として活用でき、また、図2左に示すように、住宅用太陽光発電の買取価格が家庭用小売電気料金の水準(24円/kWh)と同額になる。その価格水準を割れば、余剰分も蓄電して自家消費したほうが経済的メリットがある。
こうした背景から、今後、家庭における再エネ活用モデルとして、
- 住宅用太陽光と蓄エネ技術(蓄電池)を組み合わせた効率的な自家消費の推進
- VPPアグリゲーターによる、系統や蓄電池などを活用した家庭の余剰電力の有効活用(売買も含む)
などが考えられる。
表2 RE100への日本の加盟企業(13社:2018年12月現在)
出所 http://there100.org/companiesをもとに編集部で作成
〔2〕事業用(非住宅用)の太陽光発電
一方、前出の図1下部に示すように、事業用の太陽光発電(出力は10kW以上)はFIT制度期間が20年間であるため、2032年7月(2012年7月+20年)からFIT制度期間が順次終了(2032年問題。卒FIT)する。
今後、再エネコストが逓減していくことに加えて、パリ協定やESG投資の拡大、SDGsなどの流れの中で、現在、事業用の再エネ活用による企業の脱炭素化に向けた取り組みが、ビジネス存続の基盤注3ともなってきた。
また、このような動きと連動して、企業の事業運営を100%再生エネで実現することを宣言した企業が加盟する、国際的なイニシアチブ「RE100」注4に加盟する企業が世界で158社にも達してきた。日本企業は、表2に示す13社がRE100に加盟(2018年12月現在)するなど、今後も急速に増加する傾向にある。
〔3〕日本の再エネ全体の導入量:累積で6,074万kW
2017年12月末時点における、日本の再エネ全体の導入量(太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマス)は、累積で6,074万kWとなっている注5。
そのうち、太陽光発電の導入量は累積で4,342万kW(住宅用989万kW+事業用3,353万kW)と71%を占め、風力発電は太陽光に比べて1/10程度と大幅に少なく、累積で344万kWと5.6%となっている注6。
▼ 注1
現地時間の2018年12月15日に採択。日本時間では2018年12月16日。
▼ 注2
住宅用については先行して実施されたFIT制度実施前の「2009年11月からの住宅用太陽光発電余剰電力買取期間」を含めて10年間としていることに注意。
▼ 注3
例えば、脱炭素に取り組まない企業は、国際的なビジネス(サプライチェーン)から排除される動きが強くなってきている。
▼ 注4
RE100:Renewable Energy 100。英国のClimate GroupとCDPが実施する、企業が事業運営に使う電気を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げるイニシアチブのこと。参加企業は年に1回、再エネ電力の利用状況や、必要な場合は再エネ電力の発電量について報告が必要。
▼ 注5
太陽光発電は、夜や雨天などもあるため、他の再エネよりも設備利用率は低く、平均で14〜15%程度となっていることに注意が必要。