2030年度までにCO2排出実質ゼロを目指す!
KDDI、シスコ、富士通の3社は、2023年10月31日、電力使用量を約40%削減する新通信網「メトロネットワーク」(地域通信網)の本運用を発表した。
KDDIは、2030年度までに同社単体の事業活動におけるCO2排出量実質ゼロを目指しているが、使用電力量の抑制が大きな課題となっている。5Gサービスの普及によって動画などのデータ量が多い通信が急増し、それにより電力使用量も増大する。今回発表されたメトロネットワークは、カーボンフリーの目標達成の施策の1つとなる。
ネットワークの構成機器を減らして電力使用量を削減
メトロネットワークは地域内ネットワークともいわれ、図1に示すように、地域に散在する「局舎」間をリング状に接続し、さらにバックボーンネットワーク(地域間ネットワーク:KDDIネットワークセンター)とも接続されている。このメトロネットワークでは、コンピュータやモバイル機器などが扱う電気信号(IPレイヤ:レイヤ3)が、光ファイバ(光伝送レイヤ:レイヤ2)によってやり取りされる仕組みとなっている。
今回発表されたメトロネットワークでは、WDM注1用光信号を直接送受信できるシスコ製ルータと、富士通製の光伝送システム(OLS:Open Line System)を採用して、IPレイヤと光伝送レイヤを融合。これによって、WDM用トランスポンダ注2が不要となるため、構成機器を減らしたことによって、ネットワーク全体の電力使用量の削減が可能となった(図2)。
またOLSは、オープンインタフェースのため他社製品との接続の自由度が高く、今後予想される通信量の増大にも容易に対応できる。
図1 KDDIが発表したメトロネットワーク(地域ネットワーク)の構成イメージ
出所 KDDI株式会社 ニュースリリース 2023年10月31日「KDDI、シスコ、富士通、電力使用量を約40%削減した通信網の本運用を開始」
図2 従来の構成(上)とIPレイヤ・光伝送レイヤ融合構成(下)との違い
OLS:Open Line System、富士通製の光伝送システム
WDM:Wavelength Division Multiplexing 、波長分割多重方式
出所 KDDI株式会社 ニュースリリース 2023年10月31日「KDDI、シスコ、富士通、電力使用量を約40%削減した通信網の本運用を開始」
2028年度末までにメトロネットワークを全国展開
KDDIは、このメトロネットワークを2028年度末までに全国展開していく計画だ。さらに、信号の光・電気変換を行わず、光信号のまま伝送することで超高速通信・低コスト・低消費電力を実現する「オールフォトニックネットワーク」の実用化を目指している。今回発表したIPレイヤと光伝送レイヤの融合によるメトロネットワークは、そのための第一歩と位置付けている。
これら技術革新によって、KDDIではサステナブルなネットワーク構築とCO2排出量削減に貢献していく方針だ。
注1:WDM:Wavelength Division Multiplexing 、波長分割多重方式。1本の光ファイバに波長の異なる複数の光信号を多重して伝送する技術。
注2:WDM用トランスポンダ:中継器。電気信号(Ethernet信号)と光信号(WDM用光信号)の相互変換装置。
参考サイト
KDDI株式会社 ニュースリリース 2023年10月31日「KDDI、シスコ、富士通、電力使用量を約40%削減した通信網の本運用を開始」