≪1≫オールIP化を目指して!
■NGN時代を迎え、ネットワークのIP化の動きも活発化しています。KDDIのこれまでのネットワークの発展や、ビジネスの現状についてお話しください。
安田 豊氏
(KDDI 執行役員 コア技術統括本部長)
安田 KDDIは、通信事業として、移動通信と固定通信の両方のサービスを提供しており、ネットワークをすべてIP化していく「オールIP化」についても、以前から具体的な構想を検討してきました(図1)。数年前には、固定通信系ネットワークの基幹バックボーンのIP化を2008年頃に完成させるという発表も行いましたが、現状では当初の予定からやや遅れ気味になっています。
加入者と直接つながるアクセス系のネットワークについては、現在はNTTが保有している回線を借りる一方、東京電力の光通信事業をKDDIのFTTH事業に統合(2007年1月)したり、中部電力の光ファイバ通信事業会社である「中部テレコミュニケーション」の子会社化(2008年4月予定)など、光回線(FTTH)を中心にアクセス系のネットワークの強化を推進しているところです。
■オールIP化がスケジュールから遅れ気味になっている理由はなぜでしょうか。
安田 オールIP化がスケジュール通り進まない理由は、実際にIP化を推進していく過程で、まだ現役で使われている一部のFAXや音声モデムなどの古い特殊な機種が、IP化したネットワークでは通信エラーになる確率が高くなる場合があることがわかったからです。このため、このような機種であってもIPネットワーク上でもきちんと使えるように、できる限りの対処を施していく必要が出てきたため、当初の予定よりも遅れています。もちろん、現在NGNが当面の対象としている光サービス(FTTH)などで使用する最近の機器の場合は、何の問題もありません。
■一部の特殊な機器がIP化されたネットワークで使えなくなるのはなぜですか。
安田 技術的に言うと、IP化するということは、従来の電話ネットワークと異なりデータをパケット化して転送するということです。パケットの送信の場合には、技術的に、データが相手に届くためにある一定の遅延時間が発生してしまいます。遅延時間が大きくなると、データのエコー(反響)による影響も大きくなってしまいます。FAXや音声モデム通信の場合には、もともとエコーを取り除くエコー・キャンセラ機能を端末あるいはネットワークに備えているのですが、古い一部の機種の中には、こうした機能が従来の電話網ではきちんと機能していても、IP網ではうまく作動しないことがあるのです。もちろん、ほとんどの機種では問題ありませんが、お客様に機器を更新してもらうことは経済的にもできませんので、なんとか私どものネットワークの側で、エコーキャンセラの性能改善など、できる限り対応できるように検討しています。この対応には一定の期間が必要とみています。