カーボンニュートラル/脱炭素
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2023年度の温室効果ガスの総排出量は10億7100万トン、環境省の調査

排出量から吸収量を差し引くと約10億1700万トンで過去最少に
2025/05/16
(金)

排出量から吸収量を差し引くと約10億1700万トンに

 環境省が、2023年度の国内における温室効果ガスの排出量が10億7100万トン、吸収源対策による吸収量が5370万トンになったと、2025年4月25日に発表した。排出量から吸収量を差し引くと、2022年度比で4.2%減の約10億1700万トン(CO2換算)となり、過去最少となった。

図1 温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた数値の推移

出所 環境省 報道発表 2025年4月25日、「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」

温室効果ガスの排出量は前年度比4.0%減

 2023年度の国内における温室効果ガスの排出量は10億7100万トンであり、2022年度比で4.0%(4490万トン)減少した。2013年度比では23.3%(3億2440万トン)減少している。

図2 温室効果ガス排出量の推移

出所 環境省 報道発表 2025年4月25日、「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」

 2022年度と比べて2023年度の排出量が減少した主な要因として、再生可能エネルギーの利用拡大と原子力発電の再稼働により、電源構成に占める両者を合計した割合が3割超えた点や、製造業の国内生産活動が減少したことでエネルギー消費量の減少した点を環境省は挙げている。

 CO2排出量を部門別にみると、2023年度は産業部門が3億4000万トンと前年度比で4.0%(約1,400万トン)減少した。

図3 CO2の部門別排出量(電気・熱配分後)注1の推移

出所 環境省 報道発表 2025年4月25日、「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」

 2023年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は22.9%で、2022年度から1.0ポイント増加している。原子力は8.5%で、2022年度から2.9ポイント増加した。

図4 電源構成の推移

出所 環境省 報道発表 2025年4月25日、「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」

温室効果ガスの吸収量は約5370万トンで前年度並み

 森林やブルーカーボン注2といった吸収源対策による温室効果ガスの吸収量は、2023年度が約5370万トンで、前年度(約5380万トン)とほぼ同量だった。

図5 各種吸収源対策による温室効果ガスの吸収量

出所 環境省 報道発表 2025年4月25日、「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」

 2023年度における藻場・マングローブ林によるブルーカーボンの吸収量は、約34万トンだった。今後、吸収源として期待される沖合のブルーカーボンについて、環境省は、関係省庁連携や官民連携による推進体制を構築し、検討を進める計画だという。
 CO2吸収型コンクリート等のCCU(Carbon Capture, Utilization)技術注3によるCO2固定量(吸収量)は2023年度が約121トンとなり、2022年度の約27トンから4倍以上増加した。これは、対象技術が新たに追加された結果だという。
 2025年度は、CO2吸収型コンクリートのJ-クレジット制度注4への登録に向けた検討がさらに進められる見込みである。


注1:CO2の部門別排出量(電気・熱配分後):部門別排出量について、発電及び熱発生に伴うエネルギー起源CO2排出量を、電力及び熱の消費量に応じて、消費者側の各部門に配分した値。
注2:ブルーカーボン:沿岸・海洋の生態系が光合成で生み出したCO₂を取り込み、海に蓄積される炭素。
注3:CCU(Carbon Capture, Utilization)技術:二酸化炭素(Carbon)の回収(Capture)、利用(Utilization)の略語。
注4:J-クレジット制度:温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度。

参考サイト

環境省 報道発表 2025年4月25日、「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」

環境省、「ブルーカーボンとは」

J-クレジット、「J-クレジット制度について」

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