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三菱地所、東京・大手町に「気候テック」のイノベーション拠点を開設へ

地球温暖化対策に挑む内外の人材・テクノロジー・情報を集積
2024/01/31
(水)

「地球沸騰」を止める技術開発の拠点

 「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」注1と、国連のグテーレス事務総長が発した2023年夏の警告などを背景に、気候変動をくい止めるための技術開発が急がれている。それらは「気候テック」(Climate Tech、クライメートテック)と呼ばれ、新たな開発やそのビジネス化の動きが活発化している。
 こうした中、三菱地所株式会社(以下、三菱地所)は、気候テック領域におけるイノベーション拠点となる「Japan Climate Tech Lab(仮称)」を開設する。
 同ラボには、気候テック関連企業の活動拠点となるサービスオフィスのほか、セミナーやワークショップ等を実施するイベントスペース、交流のためのラウンジやカフェなどを備える。同ラボは「新大手町ビル」(東京都千代田区大手町2-2-1)内に開設され、オープンは2024年秋を予定している(図参照。着工は2024年4月、面積は約1,800㎡)。

図 2024年秋・開設予定の「Japan Climate Tech Lab」(仮称)完成予想図 出所 三菱地所株式会社ニュースリリース、2023年12月18日 国内初 「気候テック」に特化したイノベーション拠点 「(仮称)Japan Climate Tech Lab」2024年秋開設

プレーヤーや技術を集積しシナジーを生む

 気候テックの領域は、エネルギー、モビリティ(交通領域)、建設、重工業、食品、土地利用などと幅広い。また、それらに関する物理的な技術だけでなくデジタルテクノロジーも含まれる。現在、水素やバイオを使った代替燃料、AIによる室内照明や空調の効率化など、多方面で開発が進められている。
 開発を担うのはスタートアップが多いため、ベンチャーキャピタルや金融機関の支援が欠かせない。また、開発のスピードアップや早期実装のために、産官学連携、デジタルテクノロジーとのシナジー(相乗効果)も重要となっている。
 Japan Climate Tech Labは、気候テックのプレーヤーをはじめ、産官学、ベンチャーキャピタルなどが有機的に連携して開発を進める場を目指す。ファシリティ(気候テックの関連設備など)だけでなくソフト面のサポート策もあり、スタートアップ成長支援や気候変動とその対策に関するリカレントプログラム(先進的な専門知識の修得を目指すプログラム)、カーボンニュートラル関連事業会社の課題解決支援プログラムなどが予定されている。

既存のスタートアップ支援施設との連携も

 三菱地所では、このほかにも、国内外の成長企業のビジネス開発支援付きサービスオフィス「EGG」注2や「Global Business Hub Tokyo」をはじめ、FinTech(金融+デジタルテクノロジー)拠点の「FINOLAB」(The Fintech Center of Tokyo)など、スタートアップのエコシステム形成を目的とした各種施設を運営している。
 Japan Climate Tech Labも、それら既存施設やコミュニティとの連携を図り、協業や共創をさらに広げていく。


注12023年7月の世界の平均気温が観測史上最も熱い月となる見通しを受けて、同月27日に国連のグテーレス事務総長が記者会見で述べた言葉。
https://www.youtube.com/watch?v=dbzjwFbq098
https://blog.unic.or.jp/entry/2023/08/25/103926

注2:EGG:従前の施設名称「EGG JAPAN」(2007年開設)は、開設当時の名称「日本創生ビレッジ」の英語名「Entrepreneur Group for Growing JAPAN」の頭文字を取ったものであった。しかし、開設当初に主なテナント対象としていた「日本を牽引していくベンチャー企業」だけでなく、海外ベンチャーや起業家なども多く入居していることから、2022年12月に「EGG」と改称した。

参考サイト

三菱地所株式会社ニュースリリース 、2023年12月18日
国内初 「気候テック」に特化したイノベーション拠点 「(仮称)Japan Climate Tech Lab」2024年秋開設

環境省、2023年3月29日、Climate Techスタートアップ投資の動向について

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