[スペシャルインタビュー]

ソフトバンク先端技術研究所 所長 湧川隆次氏に聞く! 「AI-RANアライアンス」で6G革命を推進し、ビジネスを変革する!

2024/05/17
(金)

今年(2024年)2月26日、スペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2024(コラム参照)において、ソフトバンク株式会社(以降、ソフトバンク)は、「AI-RANアライアンス」の設立を発表し(図1、表1)、同アライアンスのメンバーでもあるArm(アーム)注1ブースでコンセプトの展示を行った。 これは、AIアプリケーションと無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)を、同じコンピュータ基盤上に統合する新しいアーキテクチャの実現を目指す取り組みで、AWS、Arm、DeepSig、Ericsson、Microsoft、Nokia、Northeastern University、NVIDIA、Samsung Electronics、ソフトバンク、T-Mobile、東京大学によって構成されている。
AI-RANアライアンスでは研究開発のテーマを3つ設けており、それらは通信効率や通信品質の改善だけでなく、社会へのAIの浸透、さらに通信事業の大きな変革も促すという。AI-RANアライアンスの設立を推進したソフトバンク先端技術研究所 所長の湧川 隆次(わきかわ りゅうじ)氏(写真1)に、その詳細をお聞きした(聞き手:インプレスSmartGridニューズレター編集部。文中敬称略)。

写真1 ソフトバンク先端技術研究所 所長 湧川 隆次(わきかわ りゅうじ)氏

写真1 ソフトバンク先端技術研究所 所長 湧川 隆次(わきかわ りゅうじ)氏

撮影 松本 裕之

無線機とAIに関するベンダやアカデミアによるアライアンス

編集部 まずは、AI-RANアライアンス設立の背景や目標を聞かせていただけますか。

湧川 今さまざまな企業がAI化を進めている真っ最中ですが、私達テレコム企業が取り組むべきAIとは何か。以前からGPU注2上でvRAN注3とAIに関する検証や論議を進めていたところ、無線基地局のAI化というテーマが見えてきて、それは私達にとって非常に大きなチャレンジになると感じました。
 しかし、これは大きなテーマです。それにソフトバンクはオペレータ(移動体通信事業者)です。ベンダ(通信機器メーカー)ほか、さまざまなプレーヤーとともに業界全体でまとまらないと大きなイノベーションにつながりません。そこで、ここはまず、オープンなチームを作ってこの可能性を論じるところから始めましょうということで、このAI-RANアライアンスを立ち上げました。

図1 AI-RANアライアンス設立(2024年2月26日)の趣旨

出所 ソフトバンク先端技術研究所、「AI-RANアライアンスに関するご説明」

表1 AI-RAN アライアンスのプロフィール

出所 以下をもとに編集部で作成
https://ai-ran.org/
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/news/030/?adid=press


注1:Arm:プロセッサIPのリーディングテクノロジープロバイダ。英国ケンブリッジに本社があり、ソフトバンクグループ傘下の半導体設計の大手企業。CPU(Central Processing Unit、一般的なコンピューティング用に設計されたプロセッサ)およびNPU(Neural Network Processing Unit、人間の神経系を模倣するプロセッサを通じて AI アプリケーションを加速するために設計されたプロセッサ)などを提供している。
注2:GPU:Graphics Processing Unit、ジーピーユー。3Dグラフィックス(3次元画像)や映像の処理を行うプロセッサ。データを大量かつ高速に処理する。近年はビッグデータやAIの計算にも使われている。
注3:vRAN:virtual Radio Access Network、ブイラン。仮想無線アクセスネットワーク。無線アクセスネットワークのソフトウェアを専用のハードウェア上で動作させるのではなく、仮想化の概念を用いて、汎用サーバの上で無線アクセスネットワークのソフトウェアを動作させる。

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