KDDIグループ各施設への電力供給に
KDDI株式会社(以下、KDDI)は、7月10日、系統用蓄電池事業への参入を発表した。その第一弾としてリチウムイオン蓄電池(発電出力1,999kW、蓄電池容5,608kWh)による大型蓄電施設(図1)を建設する予定だ。
KDDIは、2030年度末までにグループ内のカーボンニュートラル化を目指しているが、その達成に向けて今回の事業で得た知見を活用したい考えだ。具体的には、太陽光発電によって昼間に創出した電力価値を、KDDIにおける各設備の夜間電力需要に活用するなどの取り組みを検討している。
図1 栃木県のKDDI小山ネットワークセンター内に設置される大型蓄電池のイメージ
発電所概要
所在地 :栃木県小山市神鳥谷1919-1(KDDI小山ネットワークセンター敷地内)
運転開始月:2025年10月(予定)
設備仕様 :発電出力 1,999kW、蓄電池容量 5,608kWh(リチウムイオン蓄電池)
敷地面積 :324㎡
出所 KDDI株式会社Webサイト ニュースルーム、2024年7月10日、「2025年度の蓄電池事業参入に向け、大型蓄電池設備の建設着手」
系統用蓄電池施設として東京都から助成
今回の蓄電池は、電力系統に接続される系統用蓄電池で、再エネ発電施設に併設されるような蓄電池とは目的や規模が異なる。系統接続において電力需給がひっ迫した際に調整力注1を供出し、出力変動が避けられない再エネ電力供給の安定化に寄与する。
すでに政府や自治体では、このような役割を果たす系統用蓄電池を再エネ拡大に必要な事業の1つと位置付け、普及拡大のための環境整備を進めている。2021年度から補助金によって導入支援を行ってきたほか、2022年には電気事業法を改正し系統用蓄電池を発電事業の1つとして明文化(図2)、2023年度には系統用蓄電池への新規投資を促進する施策もスタートしている注2。
今回のKDDIの事業は、公益財団法人東京都環境公社による系統用大規模蓄電池導入促進事業注3として令和5(2023)年度に採択されたものだ。
図2 大型系統用蓄電池の発電事業への位置づけ
出所 経済産業省 資源エネルギー庁、資料5「系統用蓄電池の現状と課題」、2024年5月29日
auリニューアブルエナジーほか2社による共同事業
この事業は、KDDIグループ内で再エネ発電事業を展開している「auリニューアブルエナジー株式会社」が主体。これに、蓄電池システムの設計や保守管理をはじめ系統運用のノウハウをもつ東京電力ホールディングス株式会社、電力市場取引に必要な運用業務および蓄電池の充放電制御などのサービスを展開している株式会社エナリスとの共同によって運用される。
蓄電池施設は、栃木県のKDDI小山ネットワークセンター内に2024年12月に建設を開始し、2025年10月の運転開始を目指す。
注1:調整力:電力系統の安定化に使用される電力のこと。「調整力」としては、例えば火力発電設備(揚水発電設備を含む)や電力貯蔵装置(系統蓄電池)、デマンドレスポンス(DR:消費者側の電力使用量を制御することで、電力需給バランスを調整するための仕組み)などがある。
注2:資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」、2024年5月29日
注3:「再エネ導入拡大を見据えた系統用大規模蓄電池導入支援事業」。東京電力管内の電力系統に直接接続する大規模蓄電池の導入に必要な経費の一部を助成する。
参考サイト
KDDI株式会社Webサイト ニュースルーム、2024年7月10日、
「2025年度の蓄電池事業参入に向け、大型蓄電池設備の建設着手」
東京電力ホールディングス株式会社 リリース、2024年7月10日、
「2025年度の蓄電池事業参入に向け、大型蓄電池設備の建設着手」
株式会社エナリス Webサイト ニュース、2024年7月10日、
「2025年度の蓄電池事業参入に向け、大型蓄電池設備の建設着手」