[標準化動向]

NGNの標準化動向(1):ITU-TがNGNリリース1を勧告へ

=NGNとは?その標準化の原点=
2006/07/16
(日)
SmartGridニューズレター編集部

NGNに関する国際標準化活動の原点

このNGNに対する最初の国際的な標準化の取り組みは、この勧告Y.2001が出される2カ月前の2004年10月5日(火)から10月14日(木)まで開催された、ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)の総会「2004年世界電気通信標準化総会(WTSA-04)」(ブラジル:フロリアノポリス市)で、NGNの標準化が最重要課題として位置づけられ、本格的に推進することについて、国際的に合意されたことが起点になっている。このWTSA(World Telecommunication Standardization Assembly)は、4年に1度開催されるが、ITU-Tにおける標準化活動の今後の4年間の方向性を決める重要な会議である。

事実、この総会では、次期4年の研究会期(2005~2008年)の間に、次世代ネットワーク(NGN)の標準化を本格的に推進することをはじめ、会期間の標準化の課題や標準化体制の承認、具体的な標準化活動を行う研究委員会(SG:Study Group)の議長・副議長の任命などが行われた。

このWTSA-04には、75カ国および6地域機関などから約480名が出席、日本からは41名が出席(総務省6名、民間35名)した。具体的な新会期(2005~2008年)におけるSG(Study Group)と各SGのテーマ、および日本の代表として選出されたSGの役職(SGの議長・副議長)のメンバーは、表2の通りであり、日本への期待の大きさが現れている。

表2
表2 新会期(2005~2008年)におけるSG(Study Group)とテーマ/日本の役職 (クリックで拡大)

(注:欠番のSGはすでに終了しているSG)
(詳しくはhttp://www.itu.int/ITU-T/studygroups/index.html 参照)

NGN標準の中核的なSGは、「SG13、SG11」

表2からわかるように、NGNを中心的なテーマとして取り組んでいる(細かくは各SGとも関連があるが)のは、NGNアーキテクチャを中心テーマとするSG13と、物(製品)作りに近い、信号要件やプロトコルをテーマとするSG11である。

ITU-Tの重要な役割を果たすSGの活動は、年に2回しか開催されないため、検討の時間を補う必要がある。このため、基本的に活動期間1年を目安に、FG(Focus Group、テーマを限定して集中的に審議するグループ)をつくることができる仕組みをもっている。NGNについては、SG13を親SGとし、FGNGN(Focus Group on NGN)をつくり(2004年6月)、NGNについて2ヵ月に1回以上のスピード(各国で開催)で集中的に審議してきた。このFGNGNの検討は2005年11月(ロンドン会合)に終了し、その検討結果は親のSGであるSG13へ提出された。

さらにFGNGNの解散後、残った課題(「Question」という)を整理し検討するために、事前の2005年9月(SG13第3回全体会合)で、FGNGNの後継グループと位置づけられるNGN-GSI(NGN Global Standards Initiatives)をつくることが合意された(NGN-GSIの期間は特に定められていない)。2006年1月にジュネーブでSG13の第4回全体会合が開催されたが、この全体会合ではNGN-GSI(課題をもった複数のSGが集まって検討するグループ)の事実上の第1回NGN-GSI会合ともなった。

NGNの標準化と3つのリリース

NGNの標準化にはリリース番号が振られており、リリース1、2、3と呼ばれている(表3)。

表3
表3 NGNの3つのリリースとその内容 (クリックで拡大)

NGNの標準化は基本的にITU-Tで行われている(図1)が、実際には欧州の標準化組織であるETSI(European Telecommunications Standards Institute,欧州電気通信標準化機構)は、ITU-Tよりも先行した形でNGNの標準化を取り組み、積極的にITU-Tに提案を行っている。

すでに2006年1月には、ETSIのNGN標準化推進プロジェクトであるTISPAN(タイスパン、2003年9月に発足。Telecommunications and Internet converged Services and Protocols for Advanced Networking)は、2006年1月にリリース1を完成している。ITU-Tでは、このTISPANリリース1の仕様をベースに検討を行い、半年遅れて2006年7月頃に「ITU-T標準リリース1」を発表する予定となっている。

このほか、図1に示すように、アジア地域ではTTC (日本)、CCSA (中国)、TTA (韓国)(CJK NGN- WG:China, Japan, Korea NGN Working Group、中国・日本・韓国NGNワーキンググループなどを通して情報交流。「注.参照」)が、米国ではATIS(Alliance for Telecommunications Industry Solutions、米国の情報通信技術の標準化組織)がNGNの標準化を積極的に行っている。

図1
図1 NGNの標準化組織 (クリックで拡大)

リリース2、3の具体的なサービス内容、完成目標は未定である。


 

TTC:Telecommunication Technology Committee、情報通信技術委員会(日本)
CCSA:China Communications Standards Association、中国通信標準化協会(中国)
TTA:Telecommunication Technology Associations、電気通信技術協会(韓国)

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FMCフォーラム開催「NGN成功の鍵はオープン化」で意見が一致!
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