IMSとは?
ジェフはビデオ・ショップに、最近DVD化された映画で面白しろそうなものがないかと探しに行きます。目に留まったDVDがあったので、これを買おうかどうかマリーに相談しようと思い、自分のケータイからマリーのケータイにVoIP(Voice over IP)で電話をかけます。
ひと通り話をした後で、プロモーション・ビデオを見ようということになり、ジェフはDVDのパッケージについたICタグ(RFID)をケータイで読み取ります。この中に、プロモーション・ビデオを保存しているストリーミング・サーバのURL(Uniform Resource Locator)が含まれています。このURLをマリーに送り、2人ともこのサイトに同時にアクセスします。そして同じプロモーション・ビデオを見ながら、このDVDを買って帰るかどうかを相談します(図1)。
IMSというのは、この例のような、音声とビデオなどのマルチメディア・アプリケーションを、IP(Internet Protocol)をベースとしたパケット通信ネットワーク上で、柔軟に提供するために標準化された仕組みです。このIMSが標準化された背景には、通信ネットワークのオールIP化の流れがあります。
すなわち、これまでは、ユーザー間で一定の速度のコネクション(通信相手との接続)を確保して通信する回線交換という方式で電話サービスが提供されていましたが、現在ではこの電話サービスも含めて、IPベースのパケット交換方式によって提供されるようになってきています。
とくに、固定通信におけるIP電話の普及が活発化していますが、最近では、移動通信もその方向に進みつつあります。
通信ネットワークのオールIP化
図2は、固定通信の電話サービスに着目して、通信ネットワークのオールIP化の流れを示したものです。従来の電話網では、電話交換機が発信者がダイヤルした電話番号に基づいて、着信者(相手)に対する通話を設定します。
ここでの電話交換機の機能は、単に回線を接続するだけではありません。例えば、着信転送やキャッチホンなどのような付加サービスの処理も行っています。また、通話料金着払いサービスのフリーフォンなどでは、必要に応じて電話交換機がサービス制御装置にアクセスして0120番号と通常の電話番号の変換などを行う、インテリジェント・ネットワークという技術も使われています。図2のSCP(Service Control Point、サービス制御点)は、この番号の変換などを行うためのサーバです。
[1] オールIP化の第1ステップ
オールIP化を実現する第1ステップは、番号分析や付加サービスなどの電話交換機のもつ制御処理機能と音声メディアのルーティングの機能を、それぞれソフト・スイッチ(※1)とメディア・ゲートウェイ(※2)という装置に階層分けして、ネットワーク内のメディア・ゲートウェイ間のメディア転送にIPを利用します。この段階では、従来の端末をそのまま利用することができます〔図2(2)〕。
[2]オールIP化の第2ステップ
オールIP化の第2ステップでは、ネットワーク内から端末まで、すべてIPを利用し、VoIPにより電話サービスを実現します。この場合、ネットワーク中のパケット交換機は基本的にIPアドレスに基づいて音声メディアのルーティングを行うだけです。したがって、電話サービスとしての通信設定の制御などには、別の仕組みが必要となります〔図2(3)〕。
用語解説
※1 ソフト・スイッチ:従来のハードウェア構成のスイッチを使わず、ソフトウェア処理でスイッチングを行うためにこのように呼ばれる。
※2 メディア・ゲートウェイ:Media GateWay(MGW)、一般にIP転送と時分割転送などの転送方式の変換を行うが、中継ルーティングを行う機能も提供する。