[特集]

NGNの核となるIMS(6):IMSと課金およびQoS制御(その1)

2007/03/23
(金)
SmartGridニューズレター編集部

この連載では、NGN(Next Generation Network、次世代ネットワーク)を実現する中核的な技術であるIMS(IP Multimedia Subsystem、IPマルチメディア・サブシステム)について、そのアーキテクチャからセキュリティ、QoS、IPTV応用などに至るまで、やさしく解説していきます。第6回目の今回は、IMSにおける課金に関する仕組みについて、第7回目では、QoSポリシー制御に関する仕組みについて解説します。

IMSにおける課金とQoSポリシー制御の必要性

IMS(IP Multimedia Subsystem、IPマルチメディア・サブシステム)は、オールIPネットワークにおける通信サービス・プラットフォームの中核としての役割が期待されています。通信事業者が、IMSを利用して現状の電話サービスと同等もしくはそれ以上のサービスを顧客に提供していくためには、通信サービスに対する課金の仕組みと、課金する通信サービス品質(QoS)を保つ仕組みが必要不可欠です。

インターネットでは、エンド・ツー・エンドでベストエフォートのサービスを提供していますが、課金およびQoSポリシー制御機能をもったIMSを、通信サービス・プラットフォームとして追加することにより、インターネットのプロトコルを利用してインターネットとの親和性を保ちつつも、信頼性も高く柔軟な、通信事業者として付加価値のあるネットワーク・サービスを顧客に提供できるようになります。

次に、IMSにおける課金の仕組みについて見ていきます。

IMSにおける課金の仕組み

【1】IMSにおける課金アーキテクチャ

課金の方法は、大きくオフライン課金とオンライン課金に分けることができます。

オフライン課金とは、月々請求される料金請求のように、呼(電話)の開始や終了時刻などの詳細な記録(CDR:Call Data Record)を通じて、料金請求がされる課金の仕組みです。オフライン課金では、通信中のサービスに(例えば通信が切断されるなどの)影響を即時に通信中に与えることはなく、料金請求後にサービスへの、例えば料金未払いにより、サービスが使えなくなるなどの影響が発生します。

一方、オンライン課金とは、リアルタイムに、課金の状況に応じてサービスの利用が可能かどうかを判断し、通信に影響を与えるような課金の仕組みです。例えば、限度額を超えた時点で利用ができなくなるようなプリペイド(前払い)・サービスなどが、これに相当します。オンライン課金を実現するには、課金システムが通信サービス(つまりIMSシステム)に、使用状況(残高)に応じてサービスの可否の承認を指示できるような仕組みが必要になります。図1に、IMSのオフライン課金とオンライン課金のアーキテクチャを示します。

図1 IMSのオフライン課金とオンライン課金のアーキテクチャ
図1 IMSのオフライン課金とオンライン課金のアーキテクチャ(クリックで拡大)

【2】オフライン課金の仕組み

オフライン課金は、P/I/S-CSCF(SIPに基づいてユーザー登録やセッションの設定制御機能)、BGCF(ブレークアウト・ゲートウェイ制御機能)、MGCF(メディア・ゲートウェイ制御機能)、MRFC(MRF Controller、MRF制御装置)、SIPアプリケーション・サーバ(SIP AS)などのノードから、Rfインタフェースを通じてCDF(課金データ機能)へと課金情報が伝えられます。

Rfインタフェースでは、DiameterというAAA(認証、承認および課金)のプロトコルが利用されます(Diameterは、Radiusの次世代プロトコル)。この課金要求(ACR:Accounting Request)メッセージによって、例えば「セッション開始」「セッション中イベント(例:メディアの変更)」「セッション終了」などのSIPセッションに関する情報や、SIPイベントの発生(例:IMSへの登録)が通知されます。

CDF(課金データ機能)では、例えばセッションの開始、終了など、通信に必要なネットワーク・リソースの使用状況を通知する「課金イベント」をもとにCDRが生成され、CGF(課金ゲートウェイ機能)を経由して、次の処理をするために料金請求システムへと送られます。

【3】オンライン課金の仕組み

一方、オンライン課金では、SIP AS、MRFC、IMS-GWF(IMSゲートウェイ機能)からRoインタフェースを通じて課金情報が伝えられ、OCS(Online Charging System、オンライン課金システム)でクレジットの管理が行われます。RoインタフェースにもDiameterプロトコルが利用され、クレジット制御要求(CCR:Credit Control Request)メッセージにより課金情報が伝達されます。オンライン課金には大きく分けて、次の3つの課金形式があります

(1) IEC(Immediate Event Charging、即時イベント課金)
セッションとは関連しないSIPイベント(例:IMSへの登録)発生時に、即時にイベントに応じた課金を行う。

(2) ECUR(Event Charging with Unit Reservation、ユニット予約によるイベント課金)
セッションとは関連しないSIPイベント発生時に、イベントに応じた課金ユニットを予約し、イベントの終了時に成功および失敗の状況により課金するか、もしくは予約内の未使用分を返却する。

(3) SCUR(Session Charging with Unit Reservation、ユニット予約によるセッション課金
セッションとは関連するSIPイベント発生時、例えばセッション開始、メディアの変更、セッション終了などに、イベントに応じた課金ユニットを予約し、その後のセッション終了時に課金し、予約内の未使用分を返却する。

オンライン課金ではオフライン課金と異なり、クレジット制御要求に対する応答として残高が十分でない場合にサービスの終了を指示し、リアルタイムに通信サービスに影響を与えることが可能です。

図2に、オンライン課金でSCURを利用した場合の信号シーケンス例を示します。この例は、プリペード・ユーザーが音声でセッションを開始し、途中でビデオを追加してテレビ電話にするような場合に使用されます。

図2 オンライン課金でSCUR(ユニット予約によるセッション課金)を利用した場合のシーケンス例
図2 オンライン課金でSCUR(ユニット予約によるセッション課金)を利用した場合のシーケンス例

セッション開始時〔SIP INVITE受信時:(1)〕にOCSとのDiameterのセッションが開始され、必要なユニットが予約されます(2)。その後、200 OKの受信(3)やメディアの変更のためのRE-INVITE受信時(4)に、使用分のユニット(料金)が報告されるとともに(5)、ユニットの再要求が必要に応じて行われます。最後に、セッション終了時〔SIP BYE受信時:(6)〕に使用分のユニット(料金)が報告され(7)、未使用分を予約分から返却することによって、クレジット残高の調整が行われています。

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