IMSはどこで標準化されているか?
IMSの検討は、W-CDMAやGSM対応の移動通信関連の標準化を担当している3GPPで、2000年に始まりました。3GPPとは、3rd Generation Partnership Project(第3世代パートナーシップ・プロジェクト)の略語です。
IMSのアーキテクチャと基本機能を含む仕様は、2002年に3GPPリリース5(※5)の一部として規定されました。その後、2005年初めにリリース6の一部として、IMSと外部SIPサーバとのインタワーク(協調動作)やメッセージング、プレゼンス(※6)やPoC(※7)などのIMSアプリケーションのサポートと、アプリケーションに関わるユーザー・グループの管理の方法やIMSの課金方式などが規定されています。
また、2007年3月を目途に完成するリリース7では、IMS制御下での、例えば110番などの緊急呼の実現、IMS制御下のVoIPと回線交換を使った通話とのハンドオーバー(通話中切り替え)、IMSにおけるサービスの識別などが規定される予定です。
IMS標準は、3GPPにおいて基礎が築かれましたが、CDMA2000関連の標準化を推進する3GPP2においても、同じ仕様をMMD(Multimedia Domain)という名称で利用することになりました。また、固定通信を中心とした次世代ネットワーク「NGN」においても、IMSを利用することで合意されています。
用語解説
※5 3GPPの標準技術仕様は、リリース番号が付与されている。
※6 プレゼンス:離席中や電話中など状態を相手に示す機能。
※7 PoC:Push-To-Talk over Cellular、携帯電話上で行うIPトランシーバ・サービス
NGNにおけるIMS
現在、既存の電話網を発展させ、IPをベースにしながらQoS(サービス品質)を制御して、多様なマルチメディア・サービスを提供するNGNを構築するための検討が進められています。
NGNの標準化については、ETSI(欧州電気通信標準化機構 ※8)の下に設置されたTISPAN(※9)が中心となって進められています。ITU(国際電気通信連合 ※10)や北米のATIS(※11)でも、TISPANと連携して標準化が進められています。
元来NGNは、既存の固定通信ネットワークの発展をベースに検討が進められていますが、構造的には固定系と移動系のさまざまなアクセスに対して、共通の基幹網(バックボーン・ネットワーク)の構築を目指しています。その中心的な役割を果たすのが、IMSです。
言い換えると、IMSは固定系でも移動系でも共通に適用できる通信制御の枠組みということです。一方、固定系と移動系を統合する「FMC」(Fixed Mobile Convergence)という面から捉えると、NGN自体がそのためのベースとなり、その中でIMSが各種通信サービスに対する共通の制御を行うという役割となります。
図4は、NGNにおいて、異なるアクセスに対してサービス制御の共通機能としてIMSを適用している様子を示します。NGN標準化の中では、IMSの固定網への適用に関わる新たな機能も検討され、規定されています。例えば、NAT(※12)が存在する場合の認証やセキュリティの仕組み、固定アクセスに特有の品質管理の仕組みを規定しています。
ただし、あくまでもIMSは移動系と固定系で共通化を図るというのが基本的な前提であり、長期的には同一のIMSの枠組みが、固定系と移動系を含む1つのネットワークで共通に利用されることになると期待されています。
用語解説
※8 ETSI:European Telecommunications Standards Institute
欧州の通信関係の地域標準化期間
※9 TISPAN:Telecommunication and Internet converged Services and Protocols for Advanced Networking
ETSIのプロジェクトのひとつ。通信・インターネット関連技術の標準化期間。
※10 ITU:International Telecommunication Union、国際電気通信連合
※11 ATIS:Alliance for Telecommunications Industry Solutions
米国の通信関係の地域標準化期間
※12 NAT:Network Address Translator、ネットワーク・アドレス変換器
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