オールIP化への具体的な道すじ
図3に示すように、オールIP化の最初の段階では、コア・ネットワークの回線交換機能部において固定通信と同様に、まずソフト・スイッチによるIP転送が導入されます(1)。また、無線アクセス・ネットワークの中でもイーサネットなどの上でIP転送が導入されます(2)。
次の段階として、電話(音声)を含めて無線インタフェースまでがIP化されるます(3)。この段階で、VoIPによってIP電話サービスが実現されることになりますが、ここでも電話サービスにおける通信設定制御などには、別の仕組みが必要となります。最後に、オールIP化が完了した段階で、コア・ネットワークの回線交換機能部が不要となります(4)。
固定系と移動系の両方で、電話サービスをパケット網上で提供するためには、通信制御設定用に新たな仕組みが必要になります。既存のVoIPなどでは、別の仕組みを利用していますが、今後はIMSをこの仕組みとして使っていくことが、通信事業者やベンダ間での共通認識になっています。
ただし、実際にはIMSは電話サービスだけに利用されるのではなく、IP上で画像やデータ、音声などを駆使して展開されるトリプル・プレイ・サービスのような、多種多様なマルチメディア通信に適用することができます。
なぜIMSが必要なのか?
IP上でのVoIPをはじめとするマルチメディア・サービスは、必ずしもIMSを利用しなくても実現できます。それでは、なぜ今後IMSを利用することが共通認識になっているのでしょうか? その理由としては、
- 共通プラットフォームとしてIMSを準備しておくことによって、各種のアプリケーションを短期間で、しかも低コストで開発できること
- 国際標準として規定されていることから、異なるネットワーク間で相互接続が可能となり、さらに複数ベンダからの製品を組み合せることが可能となること
- 移動や固定の各種アクセスに、共通で利用できるようになること
などが挙げられます。
IMSは、特に通信事業者がネットワーク側に通信制御機能を保持したまま、ユーザー間のマルチメディア通信を提供するための仕組みを規定します。このことは、インターネットが、ベストエフォートの品質の通信回線を提供し、サービスについては端末が制御権をもっていることとは対照的です。
このようなことも含めて整理すると、IMSは次のような特長をもっています。
- パケット網上でのQoSの保証
- 確実に課金を行うための仕組みの提供
- 高度なセキュリティ機能の提供
- 網における各種メディアへの対応
一方、IMSは多くのインターネット技術を取り入れています。通信の開始や切断を行うセッションの制御には、IETF標準のSIP(Session Initiation Protocol、セッション開始プロトコル)を使ったり、また、安全なパス(通信路)を確保するためにIETF標準のIPsecトンネルを利用したりしています。
このように、インターネット用のプロトコルを多用し、インターネットで実現されているような、豊富なマルチメディア通信サービスのサポートを行うことを目指しています。