IMSにおけるセッション制御
IMSにおける通信の開始や切断を行うセッション制御には、IETFによって標準化された、SIPといわれるプロトコルを利用します。これは、インターネットの標準化をリードしているIETFのプロトコルを使用することによって、インターネット・アプリケーションとの相互接続性が期待できるからです。
SIPは、音声だけではなく、ビデオ(映像)やテキスト・メッセージも含めたマルチメディア・サービスのセッション制御にも利用することができます。またHTTPと同様に、テキスト・ベースでURIを使って、メッセージをルーティングさせることができます。
IMSでは、SIPメッセージが経由していくSIPサーバのことを、CSCF(Call Session Control Function、呼セッション制御機能)と呼んでいますが、これは、機能に応じて3つのタイプが存在しています。
【1】Proxy-CSCF(P-CSCF)
IMSのSIPサーバの中で、端末と接するSIPサーバです。IMS端末からSIPメッセージを受信したり、IMS端末へSIPメッセージを送信したりします。
【2】Interrogating-CSCF(I-CSCF)
このサーバは、IMS登録時にP-CSCFからSIPメッセージを受信して、S-CSCFへSIPメッセージをルーティングします。またIMS着信時には、発信側からSIPメッセージを受信してS-CSCFへとSIPメッセージをルーティングします。
【3】Serving-CSCF(S-CSCF)
これは、セッション制御の中心ともいえるSIPサーバのことです。セッションや加入者の情報を保持するとともに、サービスを制御するためにAS(つまり、アプリケーション・サーバ)と接続します。
これらの3つのタイプのSIPサーバを経由して、IMS端末との間でSIPメッセージがやり取りされることによって、マルチメディア・セッションが確立されていきます。図1に、セッションが確立されるまでの大きな流れを示します。特に、IMSのセッション制御では、次のような特徴があります。
(1) SIPメッセージは、必ず「発信」「着信」ともにホーム網(加入者が契約しているネットワーク)のS-CSCFを経由していきます。これは、例えば日本のIMS加入者が、海外に行って海外でIMSサービスを利用する場合も、日本のIMSを経由してセッションが制御されることを意味します。これによって、海外でローミングしている場合も、日本と同等のIMSサービスを受けることができます。
(2) 「発信」「着信」手順の前には、必ず登録手順が行われます。これは、IMS加入者は動き回るため、着信のために自分の位置(IPアドレス)を登録する必要があるからです。これに加えて、登録時に加入者の認証やIPsec(IPセキュリティ・プロトコル)の確立を行うことにより、セキュリティを確保し、不正なユーザーのIMSの使用を防ぐことができるからです。
それでは、次に個々の手順について詳細を見ていくことにしましょう。