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対談:デジタル放送を語る(4):スーパーハイビジョンの開発と2011年の課題

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2006年10月23日 0:00

本格的なデジタル放送時代を迎えた今日、その現状と課題について、中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科 羽鳥光俊教授と、NHK放送技術研究所 谷岡健吉 所長に対談を行っていただきました。これまでの、
『<テーマ1>デジタル化の実現:放送の歴史を変えたMPEG-2』
『<テーマ2>デジタル化で、放送の何が変わったのか?』
『<テーマ3>ワンセグからIPマルチキャスト放送まで』
に続いて、今回(最終回)は、
『<テーマ4>スーパーハイビジョンの開発と2011年の課題』
についてお話いただきました。(文中、敬称略)
司会 (株)インプレスR&D 標準技術編集部

羽鳥光俊 vs  谷岡健吉

中央大学 羽鳥光俊教授 VS NHK放送技術研究所 谷岡健吉所長

 

世界の先頭を走るスーパーハイビジョンの開発

—テレビのデジタル化が完了する2011年は、放送と通信の融合がもっと活発化していき、一方では、映像の品質もどんどん上がっていくことが期待されています。そこで、ハイビジョンの次にくる、スーパーハイビジョンはどのように位置づけられているのでしょうか。

谷岡 日本の放送は、1925年(大正14年)に、社団法人東京放送局〔NHKは1926年に設立〕によって開始されました。スーパーハイビジョンについては、放送100周年にあたる2025年を実用化の目標にしています。ですから、オール・デジタル化する2011年頃では、スーパーハイビジョンは、放送として実用になっている状況ではありません。

スーパーハイビジョンは、2002年に技研ではじめて展示し、皆様に見ていただきました。そして、2005年に名古屋で開催された愛知万博では、シアターを設け、半年間の会期中に156万人の方々にその魅力を堪能していただきました。

それから2006年4月のNAB(全米放送協会展、ラスベガス)で海外デビューを果たし、スーパーハイビジョンのIP伝送を世界で初公開し、大きな反響をいただきました。また、オランダのアムステルダムで2006年9月に開催された、IBC 2006 国際放送展にも出展し、5日間の会期中で30カ国以上の6千人を超える方々にスーパーハイビジョンシアターに来場していただきました。ご覧いただいた方々からは、もっと早く実用化できないかというご意見をたくさんいただきました。

2025年の本放送を実現するためには、今から10年後の2016年頃には、試験放送ができるように開発を進める必要があると感じています。これまでハイビジョンを実用化してきた経緯から考えても、この程度の準備期間が必要になると考えています。

—どんな技術が研究・開発される必要があるのでしょうか?

谷岡健吉氏
谷岡健吉氏

谷岡 具体的には、カメラの撮像技術、映像の記録技術、さらに符号化技術や伝送の技術、ディスプレイの技術などがあります。スーパーハイビジョンのシステムを構成するこれら技術のすべてについて、技術的にブレイク・スルーをしないと、放送での実用化には至らないと考えています。

2011年はあと5年後ですが、その次の5年が経つともう2016年です。私としては、2016年までには、スーパーハイビジョンの本放送が可能なレベルを100%とすると、その50%を越した位まで技術の進展を図りたいと思っております。

 

 

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