[特集]

対談:デジタル放送を語る(4):スーパーハイビジョンの開発と2011年の課題

2006/10/23
(月)
SmartGridニューズレター編集部

スーパーハイビジョンの解像度は8K

—スーパーハイビジョンの画面の解像度というのは、具体的にどのようなものでしょうか?

谷岡 現在、デジタル放送で提供されているハイビジョン(HDTV)の場合は、縦1080ライン(走査線数)×横1920画素(1本の走査線上の画素数)です。これに対して、スーパーハイビジョンはその4倍ですので、縦4320ライン×横7680画素の映像システムとなります。縦横ともに4倍ですから、全画素数はハイビジョンの16倍になります。

ーすごい解像度ですね。よく、デジタル・シネマの方から2Kとか4Kとか聞きますが、これらの数値と、どのような関係にあるのでしょうか?

羽鳥 そうですね。混乱を避けるために整理してみましょう。2Kというのは、先に説明したハイビジョンの「横1920画素」を指しています。デジタル・シネマには、DCI(Digital Cinema Initiatives)規格に「縦2160ライン×横4096画素」という仕様があり、4Kというのは、このうちの「横4096画素」の部分をさしています。したがって、この表現に合わせると、NHKのスーパーハイビジョンは、「縦4320ライン×横7680画素」ですから、8Kということになります。

谷岡 そういうことになります。デジタル・シネマのお話が出ましたので、スーパーハイビジョンについてのエピソードをお話させてください。先ほどお話したラスベガスのNAB展示会(2006年)でのことです。

NHKは協力メーカーと一緒にスーパーハイビジョンを展示しましたが、そこに4Kのデジタル・シネマをやられている方が来られ、「やっぱりこのスーパーハイビジョンというのはすごい。感激・感動がある」とおっしゃっていただいたということを聞き、大変うれしく思いました。

画質だけを比較すると、4Kとスーパーハイビジョンの画質は、かなり違う印象を与えるのです。私もデジタル・シネマを見ましたが、4Kの映像とスーパーハイビジョンの映像とを比べてみると、スーパーハイビジョンの映像は、本物が前にあるような感じがします。

デジタル・シネマは、すでに現実的な映画のビジネスがスタートしており、現状では最も画質のよい技術です。デジタル・シネマは、放送とは異なる映画の用途向けに良さがあるのですが、感激・感動を与えるという点からみると、スーパーハイビジョンこそが、究極の映像というように思います。

—ということは、その4Kのデジタル・シネマも、8Kのスーパーハイビジョンに移る可能性があるのでしょうか?

谷岡 その可能性についてはまだ、未知数なところがあります。国際的には、ITU-Rでもいろいろな規格が提案されています。私たちは、あくまでも放送の規格として2Kというハイビジョンがあって、その上位概念として、究極の臨場感を実現する8Kのスーパーハイビジョンシステムがあるという位置づけです。

対談風景

羽鳥 映画と放送は似ている面もありますが、デジタル・シネマは光ファイバで送信するのに対し、スーパーハイビジョンは電波でリアルタイムに送るということなども含めて、いろいろ違っている面もあります。

谷岡 カメラの撮像技術の話に戻りますが、スーパーハイビジョンを実用化しようとすると、感度の問題があります。現在、ハイビジョン用のカメラでは、多少暗い状況でも映像を撮影できるのですが、スーパーハイビジョン用のカメラは感度が低いため、夕方に少し暗くなってくると映像が撮れなくなってしまうという問題があるのです。

ですからスーパーハイビジョンでは、カメラも桁違いに感度を上げないといけないのです。そこで、私自身が取り組んできた技術の一つとして、夜間の暗い場面などでも撮影に威力を発揮するHARPカメラ(電子のなだれ現象を利用して、少ない照明でもきれいに撮れる超高感度カメラ)の撮像管技術をスーパーハイビジョンに適用して、カメラの高感度化を実現していきたいと考えています。

HARP技術は、簡単にいえば高感度の光電変換技術(光を電気に変える技術)であり、スーパーハイビジョン・カメラの高感度化に対しても貢献できるものと考えています。

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